会社の窓から見える駿府公園お堀端の桜も、日に日に色づいてきました。これから1週間はちょっと目が離せないですね。桜の季節は、街中で真新しいリクルートスーツ姿の若者たちを見かける季節でもあります。就職活動のピークと重なっていて、そろそろ「内定」と言う言葉が耳に入ってくるころ。

しずおかオンライングループでも新卒採用に向けて、多くの学生さんとお会いしています。今日は一日、グループ面談。一つのテーマについて学生のみなさんの意見や考え方を聞くことができて新鮮。個人の意見はもちろんですが、学生さんに共通するモノの受けとめ方や、全体の雰囲気から伝わってくるものもあって、そちらも興味深く聞かせてもらっています。

明日も一日、グループ面談の予定です。参加する学生さんは、やっぱり緊張気味。会場のBnest静岡市産学交流センターのすぐ北側は、駿府公園のお堀。明日お会いするみなさんへ。明日はちょっと早めに家を出て、桜を眺めてから会場に来るのも悪くないですよ。



一緒に損してる

宗文洲さんが ハワイでレンタカーを借りたときのエピソードを読んでいて思うことがあった。わたしたちが日々一生懸命ガンバっている仕事のいくつかは、最初に目指していた「その仕事やサービスの利用者(受益者)のため」から、いつのまにか誰のためにもなっていない(過剰)仕事になってしまっているかもしれないなあ、と。

その仕事に一所懸命に取り組んでいる私たちは「よりよいサービスを徹底しよう」「細かな気配りを忘れない」「品質重視」「ルールは守らなきゃ」と、本当にまじめに取り組んでいると思う。ところが、ガンバっているうちに、ある地点を境にして「サービス」「気配り」「品質」「ルール」だけが王様のような顔をしていることがある。後ろを振り返ってみると、誰の笑顔も見られないような仕事…。そんな仕事では、みんな「一緒に損している」。

難しいのは「ある地点」は、そこを超えてみないとわからないこと。それに当事者の感覚でしかわからないところ。気づいた時が最良の時と信じて、初心に立ち返る勇気を持ちたいもの。宗文洲さんのコラムを読みながら、そう自分に言い聞かせた次第です。



先日、家に帰るとボイジャーから封筒が届いていた。ボイジャーと言っても太陽系の彼方を旅する無人惑星探査機からではなく、東京で電子書籍出版を手がけているボイジャーから。宇宙の彼方ではなく、東京のボイジャーからであっても、電子書籍の会社からリアルなモノ、しかもどこにでもある普通の、今しがたまで近所の商店街の文具屋の棚でうっすらほこりを被ってたような茶封筒が届いたことが意外だった。

封筒の中を覗いてみると、CDサイズ、本文92Pの小冊子『本はひろがる』が1冊と、スタッフからの直筆の手紙が1通同封されていた。どうやらわたしが先々月あたりにボイジャーの運営するウェブマガジン『Books航』のアンケートかなにかに答えていて、この度出版された『Books航』のウェブコンテンツをまとめたオンデマンド本が送られてきたというわけらしい。仲俣暁生氏が編集長の『Books航』は、いつも更新を楽しみにしているウェブマガジンで、そのコンテンツが紙の本になって手元にあるということ自体がちょっと不思議な感じでもある。

紙の本は、ちょっと凝ったデザインの表紙があって、本文はあたりまえのように1ページ目から最後のページまで整然と並んでいるのだけど、実はそれがシンプルでわかりやすい編集方法であることに最近気づいた。そんなあたりまえのことなのだけど、どんなものであっても「始まりがあって終わりがある」ことに、人は安心できるのだと思う。



ゆうべの残り


近所の寺の庭先にある1本の白木蓮。ちょっと寂しげな白い花が、青空に眩しい。

このところ、時間旅行の話を探しているのだけどなかなか見つからない。久世光彦の『向田邦子との二十年』(ちくま文庫)を読んでいたら、ある雑誌から依頼された〈無人島に持っていく一冊の本〉というアンケートに、久世光彦も向田邦子も夏目漱石の『我が輩は猫である』と答えていたというエピソードがでてくる。

久世は、向田邦子が同じ回答をしていたのを見て「もう一つ向田さんを信用した」のだという。昭和十年代生まれ(ふたりとも)に夏目漱石がどんな影響を与えたのかはわからないけど、本にしろ音楽にしろ「自分と似た思考や嗜好や志向や(?)をもっている人なら信用できる」、そう思いたくなる気持ちはよくわかる。

次に草枕。「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」まで空で言えた久世に対して、向田邦子はさらにその先の「住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画(え)ができる。人の世を作ったものは神でもなければ、鬼でもない…」あたりまで覚えていてびっくりしたという。そして「私たちぐらいの世代までは、漱石を暗記していても珍しいことでもなかった」と続く。さて、わたしたちの世代で、だれもが諳んじることのできる文章などあったかなあ。あったような気もするけど、思い出せない。誰にも知られているといえば、今では小説よりも自己啓発書や相田みつをあたりの文章か。

テレビドラマ「寺内貫太郎一家」の脚本を書いていた向田邦子は、台本のト書きに〈寺内貫太郎一家・今朝の献立〉を記していて、ある時「ゆうべのカレーの残り」と書いてあり、撮影現場のスタッフ一同が感心したという。そんなどこにでもころがっていそうな日常を拾い、おかしく、ときには物悲しい話に仕上げる手腕は、いかにも向田邦子らしい。久世同様にわが家で思い出す〈ゆうべの残り〉といえば、冬の朝の魚の煮物。鰈や鱈の煮汁が固まってゼラチン状になった煮凝り(べっこ)を、熱いご飯にのせ浸みたところを口に入れると醤油の味が広がっていく。ゆうべの残りもので、ちょっと得した気分になった。〈ゆうべの残り〉にまつわる話は、まだ続く。

家族そろっての朝の食卓には、ほかにもいろんな〈ゆうべの残り〉があったものだ。ゆうべ、夕食のときに些細なことで父親に叱られて、しなければ良かった口答えをしてまた叱られて、謝るきっかけが見つからないまま、父は足音荒く自分の部屋に入ってしまった。うろうろしていると、母が口の形だけで『明日でいいから』と言っている。
翌朝、家族が席に着きおわるころ、父が朝刊を片手に茶の間に入ってくる。ゆうべのことがあるから、みんな静かである。母が味噌汁をよそいながら、軽く促すように私の名を呼ぶ。私はちょっと座りなおして父に頭を下げる。下手な台詞を言うとまたしくじるから、黙って頭を下げるだけである。兄も姉も、いつだって子供たちはこうして危機を脱してきた。そのためのセレモニーである。
父がいっしょ盛りのお新香にわざと乱暴に醤油をかける。家族たちが小さな非難の声をあげ、それからみんなで笑い、セレモニーはいつものように終わる。〈ゆうべの残り〉の〈べっこ〉が口の中で解けていくように、ゆっくりと我が家の団らんが戻ってくる
」。

それぞれの家にささやかな日常を維持するためのセレモニーがあって、「あ・うん」で自分の役回りを演じられるのが家族というものなのだろう。

そういえば以前〈無人島に持っていく一冊の本〉というお題で、わたしも本を選んだことがある。その時は、自分がまだ読んでいない本を取り上げ、驚かれたというか、ひんしゅくをかってしまった。時間がたっぷりあるからこそ読めそうな本を選んだのですが、いま思えば「そんな場面で読んでもいない本を取り上げる人間をどうして信用できようか」「その発想がすでに信用ならん…」そんな同席者の気持ちもよくわかります。はい。



【お知らせ】
eしずおかブログは、現在約8,500個のブログが開設、利用されています。
おかげさまで店舗や法人様など、ビジネスでブログを利用されているユーザー様も
大変増えています。「ブログがHP替わり」という店舗様も珍しくなくなりました。

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「womo静岡版」では昨年に続いて静岡女子の生活アンケート調査
womo女子リアル消費者白書」の結果を公開しています。
アンケートにご協力いただいきました読者のみなさま、ありがとうございます。

「womo浜松版」では、「 春だから、ちょっとお隣タウンへ…」
ということで巻頭特集では「磐田エリア」を紹介しています。
「womo」掲載店に出かける際は、巻末「womoチケット」をご利用ください。

『womo4月号』について詳しくは「womo」副編集長:望月麻希のブログで! 
      ↓  ↓
http://fukuwomo.eshizuoka.jp/e876317.html



月世界旅行

昨日から突然、頭の中で原田真二が「時間旅行のツアーはいかが いかがなもの?」と繰り返し歌っている。
今日は新静岡セノバのシネシティ ザートで、映画「ヒューゴの不思議な発明」を観る。もちろん3D版。舞台は、1930年代のパリ。モンパルナス駅(?)の時計台に隠れ住む孤児のヒューゴと、 「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの物語。ヒューゴが幼い頃父と一緒に観た映画「月世界旅行」をモチーフにお話が展開していく。
駅、図書館、本屋、街並みのディテイル、個性的な登場人物たちが、3D映像によって、これまで見たこともないほどキラキラした夢の世界、大人も楽しめるファンタジーに仕上がっていた。いままで3Dに心が惹かれることはなかったけど、見直しました。
病みまくりの主人公や暴力満載の映画のイメージが強いスコセッシ(もうひとつは、ザ・バンドやディラン、ストーンズ、最近ではジョージ・ハリスンの記録映画かな)が、ファンタジーを撮ること、しかも3Dに挑戦したことにもちょっと驚いた。



コンパス

スペインの新世代フラメンコギタリストと呼ばれて久しいヴィセンテ・アミーゴのライブ。
新聞記事で来日公演を知り問い合わせてみたところ、幸運にもチケットが手に入ったのだ。

「…もっとコンパスを意識しなくちゃダメですよ。
 フラメンコは、コンパスが命なんですから…」

コンパスとは、フラメンコ特有のリズム(感)のこと。
ジャズやソウルでいうところのグルーブ感のようなものか。
そのノリを表現することが難しい。

ヴィセンテの演奏を聴きながら、通っているギター教室のI先生に
常日頃から口酸っぱく言われているそんな言葉を思い出す。

演奏会終了後、後ろの席の2人組の女性の話す
「今日の演奏は、ビンビンきちゃったね。」
という会話が耳に入り、ようやくコンパスがいかに重要か(笑)、
先生のいわんとすることが腑に落ちた?ビセンテのライブでありました。

ライブで演奏された「Ciudad de las Ideas」という曲はYouTubeでも聴けます。
カッコいいねえ。コンパスの雰囲気が少しは伝わるかな。ビンビンきましたか。





古典

新静岡セノバにジュンク堂ができて、書店めぐりの選択肢が広がった。
静岡の街中にある戸田書店、谷島屋書店、ジュンク堂、
それぞれ棚の作り方に違いがあって、
それが思いがけない本との出会いにつながることが楽しい。
そんな期待を胸に棚を渡り歩く時間は、ささやかだけど幸せである。

ところが、家に帰っておもむろに本を取り出し数ページ読み始めて
「…え、こんな内容だったんだ…?」とか「これはすぐにでも“ブ”行きか」
という出会いもあるもので、
モノが何であれ「買い物モード」が降臨している時は危険。
不思議なことに中身を全部読むことができる本であっても…である。

さらに不思議なことは「買い物モード」にスィッチが入っていることを
本人は自覚しているのに、同じ間違いを繰り返してしまうことか。
まぁ、そんな懲りない人はわたしぐらいなのだろうが。

…で、今日は『古典落語 志ん生集』(ちくま文庫)、
向田邦子との二十年』(久世光彦著、ちくま文庫)、
ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ』(瀬川裕司著、平凡社)
の3冊を購入。

志ん生に、向田邦子に、ビリー・ワイルダー。
3人とも、それぞれの世界で古典に入る作品を残した人たち。
今日はいい買い物だった。なかなか充実したラインナップじゃないかな。

この週末は、志ん生の「品川心中」から読み始めて、
次にビリー・ワイルダーの「アパートの鍵化します」、
最後は向田邦子の「待ち合わせ」の順で、古典をつまみ読みしよう。

戸田書店、谷島屋書店、ジュンク堂と書店は増えたけど
ぼくの棚めぐりの黄金ルートはいまだに変わっていない。






【しずおかオンラインからのお知らせ】

静岡、浜松に完成した住宅を紹介する住まいのフリーマガジン
『womo@home 住まいラボ』(中部版・西部版)が発行となりました。


静岡、清水、志太・榛原地域の工務店さんを紹介する中部版は48P、
浜松、磐田、袋井、掛川の工務店さんを紹介する西部版は60P。
住まい事業部の新人池戸君、先輩北川君の頑張りもあって、
中部版、西部版ともに情報量が大幅増、読み応えがあります。

今号の見どころは、特集「こどもがのびのび育つ家」
最近では、家族が増えたり、お子様が小学校に入学するタイミングで
家を建てる施主さんが増えていますので、
そんな読者の方にはぴったりの特集です。

マイホームを検討されているパパとママに、
是非読んでいただきたい一冊です。

そのほか、こんな情報も掲載されています

・必見!新商品やイベント情報「住まいのHOT NEWS」
・家づくりの先輩宅を訪問!「住まいの実例集」
・Before Afterをチェック!「リフォーム実例」(中部版のみ)
・週末に出かけたい常設展示「オープンハウスを見に行こう」
・好みの住宅会社を探そう「住まいのパートナー」
・家具、カーテンほか「インテリア&雑貨」

※全掲載店の資料が無料で請求できます。


▼▼eブックでも見ることができます!▼▼

中部版
http://mixpaper.jp/scr/viewer.php?id=4f5e94c11275c

西部版
http://mixpaper.jp/scr/viewer.php?id=4f5e9dfb6bde5



【今日は、スタッフ募集のお知らせです。】

新卒採用活動も中盤に差し掛かってきましたが、
しずおかオンライングループでは、経験者の募集にも力を入れています。

出版社として創業した〈しずおかオンライン〉ですが、現在は「情報流通企業」として
「地域に根ざした情報を、求める人に、求められるカタチで届ける」
という企業理念の実現を目指しています。理念の実現の先には、
地域活性化の一翼を担うことのできる企業に成長したいという目標があります。

『womo』(グルメヘアサロンビューティスクール)や
住まいラボ』、出版事業、『eしずおかブログ』など、
しずおかオンライングループが運営するすべての媒体は、
街と人を結ぶことで、日々の暮らしにささやかな幸せを生み出すことができる
そのように信じて運営しています。

媒体のデジタル化が進むにつれ、
多くの媒体が東京起点で全国をカバーするようになりました。
それら全国区の媒体に期待される役割があるように、
地域の生活者目線で情報を発信する地域媒体にも大切な役割があります。
そして、わたしたちは生活者目線に立った地域媒体の役割は、
今後ますます大きくなると考え、その可能性を感じています。

しずおかオンライングループでは、そのような地域媒体を
グループ社員の力を合わせて、自分たちで考え、作り、運営しています。
新しい媒体を自ら発案して、創って、育てる仕事は、
正直なところ、苦しさのほうが大きいかもしれません。
その一方で、やりがいや大きな達成感を感じられるのも確かです。

多くの場合、言い出しっぺは誰か一人、そして自分の身近な人ほど反対するもの(笑)。
そこから周囲を説得して、巻き込んで、布教活動するように、
熱意を持って、時間をかけて賛同者を増やしていくような仕事です。
大切なことは「自分たちの街にきっと喜んでくれる人がいる」という
自分の仕事を信じる力、でしょうか。

わたしたちの仕事は、地域の情報を発信し、街と人をつなぐ仕事。

即戦力として自分の力を発揮してみたい方、
新しい環境で自分の可能性を伸ばしてみたい方、
地域に求められる新しい媒体作りと運営に参加してみたい方、
そのような仕事、環境に興味のある方を求めています。

採用のホームページはコチラです。
企画営業スタッフのほか、ウェブディレクター、ウェブデザイナー、
近日中に、「編集者」募集も行います。

    ↓   ↓   ↓
http://www.esz.co.jp/recruit/index.html

追伸:
目の前に危ない橋がある時に、なぜか渡りたくなってしまう人が
むいているかもしれません(笑)





東日本大震災が起きてその約1ヶ月後、
「地震と放射能:いま知っておくべきこと」と題した緊急セミナーが
静岡市で開催されました。地震について様々な情報が錯綜する中で
静岡市民にむけて本セミナーを企画した「サイエンスカフェ in 静岡」。

会場で聞かれた「地震のことがよく理解できた」「安心しました」
という市民の声は、インターネット社会になり多くの情報があるにもかかわらず、
私たちの暮らしの中には自分では取り除くことのできない不安があることの
現れだったように思えます。

放射能、地球温暖化、遺伝子組み換え食品、環境ホルモンに狂牛病etc…、
科学が発達して便利な世の中になるにつれて、
わたしたちの暮らしを取り囲むさまざまな科学的問題。

生活を豊かにしてくれた多くの工業製品や自然に対する素朴な疑問と、
「わたしたちの周りで、今何が起きているのだろう」という漠然とした不安は、
科学に触れることで軽減できるのもしれません。

東日本大震災後の緊急セミナーから約1年が経った今、
同セミナーを企画した静岡大学理学部の先生であり
「サイエンスカフェ in 静岡」の4代目店長坂本健吉先生と
5代目店長の阪東一毅先生にお話を伺いました。



・「サイエンスカフェ in 静岡」とは
静岡大学理学部で最先端の研究をしている先生を講師に迎え、 科学の話を地域の人が気軽に聞けるカフェスタイルの場。 過去6年間で、延べ5000人以上の市民が参加。地球温暖化、クローン生物、環境ホルモン、新機能性物質の合成など、社会的に大きな関心を集めている分野から、「ブラックホール活動天体への招待」「アルキメデスの失われた写本を読む」「富士山で見られる南極と北極の世界」「遅い光と速い光」など、科学のロマンを感じさせるお話まで、幅広いテーマをとりあげている。開催場所は、B-nest静岡市産学交流センター。



▶ 坂本健吉さん:静岡大学 理学部科学課 教授 (写真左)
  阪東一毅さん:静岡大学 理学部物理学科 講師(同右)
▶「サイエンスカフェin 静岡(ブログ支店)」:http://sciencecafe.eshizuoka.jp/
▶「サイエンスカフェin 静岡」公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/sciencecafe/
▶ 静岡大学理学部公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/

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◀【1】から読む


【4】地震と放射能の話は、静岡での生活と切り離せない

海野 便利な世の中になってきましたが、
   市民ではなかなか判断のつかない問題も増えています。
   生活の中での科学の知識は重要です。

   市民も専門的な知識があればいいのでしょうが、なかなかそうもいかない。
   判断がつかない時に市民はどうすればいいのでしょうか?

坂本 自然科学だけでなくどんな分野であれ、
   論理性がなかったら研究はできません。

   どんな論理で研究しているのか聞いていただければ…と思います。

海野 論理ですか…。

坂本 今の科学でもわからないことは山ほどあります。
   でも、科学でわかっていることもたくさんある。
   「そんなことはありえない」ということもあるんです。

海野 たしかにそうかもしれない。

坂本 科学の論理に触れていただければ
   「そんなことはありえないだろう」「それは正しいんじゃないか」
   ということが、ある程度は感覚的にわかるようになるんじゃないでしょうか。


海野 東日本大震災の1ヶ月後に開催した地震と放射能の話は、
   静岡市民の不安を軽減する大きな役割を果たせたように思います。

坂本 浜岡原発がありますし、東海地震が取りざたされている静岡では、
   地震と放射能の話は、生活と切り離せない重要なテーマです。


   東日本大震災が起きて1ヶ月ほど経った頃、とにかく大騒ぎしていた時期に、
   放射科学研究施設の奥野先生と大谷先生の二人に話していただきました。
   おふたりは、放射能の基本的な、教科書的な話をしてくれました。

海野 教科書的なお話?

坂本 「放射線とは何か」「放射能とは何か…」というようなお話ですね。
   福島の話にはほとんど触れず、原子炉の話もしなかったことが、
   かえって評判がよかった。

海野 といいますと?

坂本 いま福島がどうなっているか、などはもちろん誰もが気になりますが、
   それ以前に、放射能や放射線の基礎知識を共有しておくことが大切だろうと。


   放射線にはα線、β線、γ線があって…というところから確認したことで、
   参加者からは「とてもよく理解できた」「安心した」という声をいただきました。

海野 たしかにニュースは、そこまで掘り下げて説明してくれない。

坂本 テレビでは「何十万ベクレル」とか「シーベルト」などの
   数字ばかりがクローズアップされがち。
   それらは原子の話なので数字が大きくなるのはあたりまえ。

   むしろ驚くべきは、数十ベクレルという小さな数値が計測できていることです。
   原子1個レベルの測定が出来ていること事体がすごい。


海野 なるほど、驚く視点が違いますね。

坂本 地震については、実際に地震発生のメカニズムを研究していた
   生田先生に話していただいた。生田さんは

   「自分は今回の地震をまったく想定していなくて、
    地震学者として恥ずかしい。
    だから、とても怖いけど、その思いも込めて話したい」


   とおっしゃって引き受けてくれたんです。

海野 勇気がありますね。

坂本 あのとき、生田さんは「全容はまだわからない」というところから始めて、
   とても誠実なお話をした。

   質疑応答では、静岡で予想される駿河湾における津波についての質問もありました。
   かなり早い段階で、そのような話ができたことはよかったと思います。


海野 静岡県民にとって切実な話を、地元静岡大学の先生から
   直接聞けたことも本当によかった。

坂本 あれから1年経ちます。
   それから最近では富士山の噴火の話もありますので、
   近いうちに、もう1回開催してみたいですね。

海野 ぜひお願いします。これから静岡の市民に伝えたいことはありますか。

阪東 繰り返しになりすが、若い方に来ていただきたい。
   理学部では中高生向けに大学で研究を体験できる
   「未来の科学者講座」プロジェクトも開催しています。

   「未来の科学者講座」に参加してくれた中高生も
   サイエンスカフェに参加してくれていて、
   すこしずつ広がりを実感しています。

坂本 わたしは、お母さんたちにも来ていただきたいですね。
   会場の確保などが難しいのですが、できれば託児所を用意したいほど。

   放射能の話でも、マスコミの情報で一番怖がっているのはお母さんたちです。
   お母さんたちの不安を取り除いてあげたり、
   ご自分で判断できるようになるためのお役に立ちたい。

海野 中高生やお母さんたちで賑わう会場を早く見てみたいですね。
   今日は、ありがとうございました。

坂本 ありがとうございました。

阪東 ありがとうございました。

海野 これからも「サイエンスカフェin 静岡」を楽しみにしています。


               ・  ・  ・




        【1】そもそも何の目的でスタートした?
        【2】 自然科学的なものの見方が助けになる
        【3】「宇宙」「富士山」「化石」が人気
        【4】地震と放射能の話は、静岡での生活と切り離せない





東日本大震災が起きてその約1ヶ月後、
「地震と放射能:いま知っておくべきこと」と題した緊急セミナーが
静岡市で開催されました。地震について様々な情報が錯綜する中で
静岡市民にむけて本セミナーを企画した「サイエンスカフェ in 静岡」。

会場で聞かれた「地震のことがよく理解できた」「安心しました」
という市民の声は、インターネット社会になり多くの情報があるにもかかわらず、
私たちの暮らしの中には自分では取り除くことのできない不安があることの
現れだったように思えます。

放射能、地球温暖化、遺伝子組み換え食品、環境ホルモンに狂牛病etc…、
科学が発達して便利な世の中になるにつれて、
わたしたちの暮らしを取り囲むさまざまな科学的問題。

生活を豊かにしてくれた多くの工業製品や自然に対する素朴な疑問と、
「わたしたちの周りで、今何が起きているのだろう」という漠然とした不安は、
科学に触れることで軽減できるのもしれません。

東日本大震災後の緊急セミナーから約1年が経った今、
同セミナーを企画した静岡大学理学部の先生であり
「サイエンスカフェ in 静岡」の4代目店長坂本健吉先生と
5代目店長の阪東一毅先生にお話を伺いました。



・「サイエンスカフェ in 静岡」とは
静岡大学理学部で最先端の研究をしている先生を講師に迎え、 科学の話を地域の人が気軽に聞けるカフェスタイルの場。 過去6年間で、延べ5000人以上の市民が参加。地球温暖化、クローン生物、環境ホルモン、新機能性物質の合成など、社会的に大きな関心を集めている分野から、「ブラックホール活動天体への招待」「アルキメデスの失われた写本を読む」「富士山で見られる南極と北極の世界」「遅い光と速い光」など、科学のロマンを感じさせるお話まで、幅広いテーマをとりあげている。開催場所は、B-nest静岡市産学交流センター。



▶ 坂本健吉さん:静岡大学 理学部科学課 教授 (写真左)
  阪東一毅さん:静岡大学 理学部物理学科 講師(同右)
▶「サイエンスカフェin 静岡(ブログ支店)」:http://sciencecafe.eshizuoka.jp/
▶「サイエンスカフェin 静岡」公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/sciencecafe/
▶ 静岡大学理学部公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/

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【3】「宇宙」「富士山」「化石」が人気

阪東 静岡大学は国立大学といっても、一地方大学でもあるわけです。
   地方の国立大学として、地域に向けた情報発信は重要。

   静岡大学の存在感を、なかでも理学部の研究活動を
   静岡県民のみなさんに伝えたいという気持ちが強くあります。


   ぼくとしては、サイエンスカフェにたくさんの若い方に
   参加していただけるように取り組んでいきたい。
   そして中高生には、ぜひ静岡大学理学部を目指していただきたい。

海野 理学部志望の学生は、増えているんですか?

阪東 サイエンスカフェの影響がどこまであるかわかりませんが、
   ここ数年は志望者が減っているということもないと思います。

海野 実際の参加者は、どんな方が多い? 

阪東 6年間で参加した方は、述べ人数で約5500名強。
   初期は参加者が30数名のころもありましたが、
   平均すると100名前後でしょうか。
   うれしいことに、その半分の方が2回以上参加しているリピーターです。

海野 一度参加すると、また来たくなる。

阪東 一番多いのは60代、50代の方でしょうか。
   若かった頃、大学で専門教育を受ける機会のなかった方が、
   サイエンスカフェを通じて大学の雰囲気に触れる機会として
   楽しんでいるように思います。

坂本 次に10代の若者が多いですね。
   思いのほか静大の学生がすくないかな(笑)。
   せめて自分の先生が登場する時には、来てほしいなぁ(笑)。

阪東 最近は、さらにリピーターが増えています。
   それだけサイエンスカフェが支持されていると受けとめています。

坂本 リピーターの方を大切にしながら、新しい人にも来ていただきたい。
   実は一般の参加者に混じって、ある専門分野では国内第一人者
   という先生が参加されている回もあるんです。
   そんな時は、運営者であるわたしたちがドキドキしてしまいます(笑)。

海野 幅広いテーマを扱っていますが、どんなテーマが人気?

阪東 一番人気は、宇宙ものです。
   過去で一番参加者が多かったテーマは「ブラックホール」です。
   それから今年の1月に開催した「はやぶさ」も人気でした。

海野 「はやぶさ」は、わたしも聞きにでかけました。
   会場は満員でしたね。

阪東 次に多かったのは、富士山。地元密着のお話。
   それから化石の話。三葉虫の動画は、小学生に人気でした。

   具体性のあるテーマの回は、評判がいいです。
   数学もリクエストは多い。 その点、化学のようなものは難しいですね。


阪東 ぼくの専門は、物理です。
   最近よくいわれている「理科離れ」の多くは、
   おそらく「物理離れ」なんじゃないかと思うんです。

   どの分野も重要ですが、ぼく自身は物理離れの状況に危機感を感じています。
   せっかくサイエンスカフェの店長になったので、
   ぼくのエゴですが、物理のおもしろさもこれからは伝えていきたい。

海野 毎回のテーマは、店長さんが中心に企画されているのですか?

坂本 一応、そういうことになっていますが、店長だけではフォローしきれない
   分野もあるので、過去に店長経験のある先生にも相談しながら
   候補者をあげていただき、最終的に店長が決定しています。

海野 「はやぶさ」の時も先生が声をかけられたんですか?

阪東 たまたまJAXAにいる知り合いに相談したところ、
   JAXAに広報窓口があることを教えてくれて、
   それで広報を通じて正面から依頼しました。

坂本 JAXAも予算が削られているので、JAXAの取り組みを
   一般の方に知っていただくための広報に力を入れているようです。
   吉川先生も「はやぶさ」が帰還してからすでに、
   120回程の講演をこなしているとおっしゃっていました。

海野 JAXAもPRに力を入れて、市民を味方につける必要性を感じているんですね。


           ・  ・  ・

   【1】そもそも何の目的でスタートした?
   【2】 自然科学的なものの見方が助けになる
   【3】「宇宙」「富士山」「化石」が人気
   【4】地震と放射能の話は、静岡での生活と切り離せない





東日本大震災が起きてその約1ヶ月後、
「地震と放射能:いま知っておくべきこと」と題した緊急セミナーが
静岡市で開催されました。地震について様々な情報が錯綜する中で
静岡市民にむけて本セミナーを企画した「サイエンスカフェ in 静岡」。

会場で聞かれた「地震のことがよく理解できた」「安心しました」
という市民の声は、インターネット社会になり多くの情報があるにもかかわらず、
私たちの暮らしの中には自分では取り除くことのできない不安があることの
現れだったように思えます。

放射能、地球温暖化、遺伝子組み換え食品、環境ホルモンに狂牛病etc…、
科学が発達して便利な世の中になるにつれて、
わたしたちの暮らしを取り囲むさまざまな科学的問題。

生活を豊かにしてくれた多くの工業製品や自然に対する素朴な疑問と、
「わたしたちの周りで、今何が起きているのだろう」という漠然とした不安は、
科学に触れることで軽減できるのもしれません。

東日本大震災後の緊急セミナーから約1年が経った今、
同セミナーを企画した静岡大学理学部の先生であり
「サイエンスカフェ in 静岡」の4代目店長坂本健吉先生と
5代目店長の阪東一毅先生にお話を伺いました。



・「サイエンスカフェ in 静岡」とは
静岡大学理学部で最先端の研究をしている先生を講師に迎え、 科学の話を地域の人が気軽に聞けるカフェスタイルの場。 過去6年間で、延べ5000人以上の市民が参加。地球温暖化、クローン生物、環境ホルモン、新機能性物質の合成など、社会的に大きな関心を集めている分野から、「ブラックホール活動天体への招待」「アルキメデスの失われた写本を読む」「富士山で見られる南極と北極の世界」「遅い光と速い光」など、科学のロマンを感じさせるお話まで、幅広いテーマをとりあげている。開催場所は、B-nest静岡市産学交流センター。



▶ 坂本健吉さん:静岡大学 理学部科学課 教授 (写真左)
  阪東一毅さん:静岡大学 理学部物理学科 講師(同右)
▶「サイエンスカフェin 静岡(ブログ支店)」:http://sciencecafe.eshizuoka.jp/
▶「サイエンスカフェin 静岡」公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/sciencecafe/
▶ 静岡大学理学部公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/

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【2】 自然科学的なものの見方が助けになる

坂本 それに日本の社会全体が、感覚だけで動いている感じがしませんか。
   今の世の中は、ニュース性やおもしろさだけがクローズアップされがち。

   話題性があればすぐに飛びつくけれど、
   そこでの理解はとても表面的で、内容まで理解されないまま
   大騒ぎになることがあります。

海野 少し前ですが、ダイオキシンや環境ホルモンが問題になりましたね。

坂本 マスコミが繰り返し取り上げて大騒ぎになりましたが、
   実際には内容を理解して大騒ぎになったわけではないと思います。
   誰かが「これは大変問題だ!」といい始めて、騒ぎが騒ぎを大きくする。


海野 でも、のど元過ぎれば…

坂本  新しい問題を誰かが取り上げて騒ぎ始めると、
   昨日までの問題は忘れて、そちらに飛びついてしまう。

   今では、ダイオキシンも環境ホルモンのことも、
   誰も言わなくなってしまいました。
   震災の後には、 地球温暖化のことも。

海野 狂牛病もほんの数年前のことですね。

坂本 そんな状況を自然科学者の目で見ると
   「本当にそうなんだろうか」
   「それでいいんだろうか」と思うことが山ほどある。

   ダイオキシンの危険性ひとつとっても、
   専門家の中で共有されている内容と、
   一般の方の理解に開きはがある。

   簡単にいえば、専門家の持っている情報が社会に伝わっていない、
   ということです。
   上から目線で「啓蒙」したいというのではなく、
   専門家として一般の方に知ってほしいことがいっぱいある。

海野 専門家の情報が、ふつうの人の役に立つ。

坂本 それに「自然科学的なものの見方」が
   これからの社会を生きる上で助けになるはずです。

   サイエンスカフェが「自然科学的なものの見方」を身につける
   きっかけになれば、という思いもあります。

海野 なるほど。

坂本 福島の放射能の騒ぎひとつとっても、いろいろな意見があります。
   今はTwitterやフェイスブックなど、いろいろな情報発信の
   ツールがありますから、声の大きな人の意見が影響力を持ちやすい。

   リスクはどこにでもあるんです。
   何かを判断する時に、感覚だけにたよるのではなく
   「数値化」して判断できることは数字で客観的に判断することが大事です。


海野 話題に踊らされてしまったり、新しい事件が起こると
   そのことはすっかり忘れてしまったりすることはたしかにありますね。

   しかも、話題の賞味期限は年々短くなって、
   情報の消費スピードだけが早くなっている。


海野 判断に迷ったときはどうすればいいのでしょう?

坂本 難しいですね。
   できることといえば、ひたすら調べることでしょうか。
   ただし、結果として真逆の意見にぶちあたることがある。
   そしたら、今度はそれぞれの意見の背景を調べる。

   インターネットは便利ですが、断片的な情報が多い。
   一般的には書籍の方が信頼性が高いと思います。
   もっとも、変な本も多いので1冊だけを信じすぎないこと。

海野 インターネットでは、自分の信念を補強してくれる情報に
   集中的にアクセスしがち。
   自分の信念を強化するだけの場合もありますからね。



         ・  ・  ・

  【1】そもそも何の目的で始まった?
  【2】 自然科学的なものの見方が助けになる
  【3】「宇宙」「富士山」「化石」が人気
  【4】地震と放射能の話は、静岡での生活と切り離せない





東日本大震災が起きてその約1ヶ月後、
「地震と放射能:いま知っておくべきこと」と題した緊急セミナーが
静岡市で開催されました。地震について様々な情報が錯綜する中で
静岡市民にむけて本セミナーを企画した「サイエンスカフェ in 静岡」。

会場で聞かれた「地震のことがよく理解できた」「安心しました」
という市民の声は、インターネット社会になり多くの情報があるにもかかわらず、
私たちの暮らしの中には自分では取り除くことのできない不安があることの
現れだったように思えます。

放射能、地球温暖化、遺伝子組み換え食品、環境ホルモンに狂牛病etc…、
科学が発達して便利な世の中になるにつれて、
わたしたちの暮らしを取り囲むさまざまな科学的問題。

生活を豊かにしてくれた多くの工業製品や自然に対する素朴な疑問と、
「わたしたちの周りで、今何が起きているのだろう」という漠然とした不安は、
科学に触れることで軽減できるのもしれません。

東日本大震災後の緊急セミナーから約1年が経った今、
同セミナーを企画した静岡大学理学部の先生であり
「サイエンスカフェ in 静岡」の4代目店長坂本健吉先生と
5代目店長の阪東一毅先生にお話を伺いました。



・「サイエンスカフェ in 静岡」とは
静岡大学理学部で最先端の研究をしている先生を講師に迎え、 科学の話を地域の人が気軽に聞けるカフェスタイルの場。 過去6年間で、延べ5000人以上の市民が参加。地球温暖化、クローン生物、環境ホルモン、新機能性物質の合成など、社会的に大きな関心を集めている分野から、「ブラックホール活動天体への招待」「アルキメデスの失われた写本を読む」「富士山で見られる南極と北極の世界」「遅い光と速い光」など、科学のロマンを感じさせるお話まで、幅広いテーマをとりあげている。開催場所は、B-nest静岡市産学交流センター。



▶ 坂本健吉さん:静岡大学 理学部科学課 教授 (写真左)
  阪東一毅さん:静岡大学 理学部物理学科 講師(同右)
▶「サイエンスカフェin 静岡(ブログ支店)」:http://sciencecafe.eshizuoka.jp/
▶「サイエンスカフェin 静岡」公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/sciencecafe/
▶ 静岡大学理学部公式サイト:http://www.sci.shizuoka.ac.jp/

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【第1回】そもそも何の目的で始まった?


海野 はじめまして

坂本 こんにちは

阪東 こんにちは

海野 東日本大震災が起きてその約1ヶ月後に開催した
   「地震と放射能:いま知っておくべきこと」と題した
   緊急セミナーはタイムリーでしたね。

坂本 ありがとうございます。 

海野 あれから1年経が経って、「サイエンスカフェin 静岡」も6年目に入りました。
   最初は、予算もないところから始めたとお聞きしました。

坂本 「サイエンスカフェin 静岡」は平成18(2006)年12月に、
   静岡大学の理学部と創造科学技術大学院の有志によって
   オープンしました。中心になっていたのは、
   初代店長の小山先生(現早稲田大学教授)です。

海野 そうなんですか。

坂本 予算もなかったので、といいますか、
   いまでも予算はないのですが(笑)。
   先生方には、いまでもボランティアで参加していただいています。
   まるっきりボランティアなので、いつ止めてもいいんです(笑)

海野 ははは…、それは困ります(笑)。 
   ところで、坂本先生は、いつ頃から関わられたのですか?

坂本 私が静岡大学に着任したのは19年で、
   参加したのは平成20年の四月頃でしょうか。
   「サイエンスカフェin 静岡」は、実は学内の宣伝には
   力を入れていなかったので、
   わたしも最初の頃はよく知りませんでした。

海野 …そうなんですか。

坂本 で、しばらくして「なんかやっているな」と気になって…。
   何回か参加してみたところ
   「教員が聞いても、意外と面白いじゃないか」と思ったわけです。
   それからですね、関わるようになったのは。

海野 先生が聞いても面白かった?

坂本 というのは、私たち教員は、同じ学部であっても
   ほかの先生の授業を聞く機会はほとんどありません。
   それが、サイエンスカフェでは、いろいろな先生方の研究内容を、
   ご自分の言葉でわかりやすく聞くことができる。
   とても貴重な場であったわけです。

海野 はい。

坂本 着任した頃は先生の知り合いも少なかったので、
   サイエンスカフェを通じていろいろな先生方と
   知り合えるきっかけにもなりました。

海野 阪東先生は?

阪東 ぼくは、平成21年から関わるようになりました。
   サイエンスカフェは、店長といっても理学部の役職でもなく、
   誰が選ぶわけでもありません。

   学部内にしっかりとした組織があるわけではなく、
   なんとなく出入りして、おもしろがっている先生たちが
   ゆるく集まって運営しているのが実態。

海野 店長はどのように決まるのですか?

阪東 「阪東先生、やってみない?」
   「…あ、はい、わかりました」
   そんなノリで、わたしも店長になったわけです。

海野 そもそも「サイエンスカフェ」の目的は?

坂本 静岡大学理学部が取り組んでいる研究内容を
   地域社会に発信することが当初の目的でした。


   工学部はカタチとしてみえる「モノ」を作っていますし、
   農学部は「作物」というように、研究内容が一般の方にも伝えやすい。
   でも、基礎研究などに取り組む理学部の研究内容は、
   ふつうの方にはわかりにくいんですね。

阪東 各店長によっても、多少スタンスが違うかもしれないです。
   坂本先生の目指すサイエンスカフェと、
   ぼくの目指すサイエンスカフェでも、違うかもしれない。

海野 初代店長の小山先生は、どんなことを目指していたんですか?

坂本 小山先生が始めた当時は、基礎科学に与えられる国の予算は
   どんどん削られる傾向にあって、危機感が強かった。
   あの「はやぶさプロジェクト」ですら予算獲得のために、
   どんな経済効果があるのかを示すように求められる時代ですから。

海野 事業仕分けの対象になってしまう?

坂本 基礎研究の重要性を示すためには、市民を味方につけることが
   必要だった
のだと思います。
   それは、いまではますます重要になっています。

海野 坂本先生ご自身は、どんな思いを込めている?

坂本 私自身は、小中学生の頃、近くの大学で催された
   イベントに参加したことが科学との出会い。

   「科学っておもしろいな」と子どもごころに感じ、
   そこでの基礎科学との出会いがきっかけになって
   この道に進みました。

   自分が経験させてもらったことを、
   今度は自分が社会に還元する順番かなと

海野 ご自身が店長の時はどんな思いで?

坂本 わたしが店長の時は、中高生の若い世代に向けて、
   学校で習っている理科の授業を発展させたら
   その先にどんな分野につながっているのかを
   わかりやすく伝えよう
、と心がけました。

   「後継者を育てたい」という思いをサイエンスカフェで
   実現できるかもしれない、と。

   結果的に、理科の授業の先が見えることで
   「理学部は、就職先がないんじゃないの?」
   という不安の答えにもなるかな。

海野 後継者を育てるためには、その先が広い世界に
   つながっていることを見せてあげることも大切ですね。

               ・  ・  ・




       【2】 自然科学的なものの見方が助けになる
       【3】「宇宙」「富士山」「化石」が人気
       【4】地震と放射能の話は、静岡での生活と切り離せない



先週でかけてきました白黒サイレント映画『アーティスト』試写会のご報告。
今回は、静岡シネ・ギャラリーさんのご好意で、eしずおかブログのブロガーさんも
試写会にご招待していただきました。ありがとうございます。


映画『アーティスト』は今年度のアカデミー賞で、
作品賞、監督賞、主演男優賞を含む5冠を達成した作品、
「タイトルは聞いたことがある」という方も多いのでは。
作品賞の受賞はフランス映画としては史上初で、
サイレント映画は第1回以来83年ぶりの受賞だそうです。



映画の舞台は、1927年のハリウッド。
サイレント映画界の大スター、ジョージは、新人女優ペピーと出会い、
お互いに強く惹かれあう。
ちょうどこの頃の映画産業は、サイレントからトーキーへの移行期。
あくまでサイレントに固執して没落していくジョージと、
スター階段を駆け上がり人気女優と成功していくペピーの恋の行方は……。

文字にして説明すると地味な印象さえ与えるほどオーソドックスなラブストーリー。
恋愛ものの王道なわけですが、そこが、なんでもありのこの時代に、
かえって新鮮でロマンティックな印象を与えるのかもしれない。

映画の中で出色の演技をしているもう一人(一匹)の主役が、名犬アギー。
彼(?)の魅力は、サイレントでもトーキーでも変わらない。
これからご覧になるみなさんは、アギーの演技も注目ですよ。


一般メディアと違って、ブログでは本人が感じたままを率直に書けることが魅力。
今回映画『アーティスト』の試写会にご参加いただいたブロガーさんが、
映画を見てどんな記事をアップするのか、私自身もとても楽しみでした。

すでにブログにアップされたみなさんの記事にリンクを貼らせていただきましたので、
これから本作品をご覧になる方は、ブロガーさんの感想もぜひご参考に!


 ・eしずおかブロガーさんによる映画『アーティスト』の感想を一部ご紹介。

  ▼「kittsan流」さん
   http://kittsan.eshizuoka.jp/e853289.html
  ▼「オバタケイコのスローな日々」さん
   http://oakpinkfloyd.eshizuoka.jp/e853530.html
  ▼「”ざつは”の大雑把な日常」さん
   http://puttin3.eshizuoka.jp/e853738.html
  ▼「シダユミ英語教室」さん
   http://english15.eshizuoka.jp/e853373.html
  ▼「濱のマスターのチャレンジ日記」さん
   http://o9070457054.eshizuoka.jp/e870183.html
  ▼「シシシシシネマ」さん
   http://cccccinema.eshizuoka.jp/e872612.html

映画『アーティスト』公式サイト
  http://artist.gaga.ne.jp/

映画『アーティスト』上映情報
・静岡シネ・ギャラリー http://sarnathhall.eshizuoka.jp/
・期間:4/7(土)〜5/11(金)




今日は、静岡市産学交流センターで、 地元工務店、住宅メーカー様向けの「フェイスブック活用セミナー」を開催しました。主催SOLアイアーキテクト、協賛「住まいラボ」(しずおかオンライン)。

様々なSNSサービスがある中で最も注目されているフェイスブックだけあって、会場は満員御礼、充実したセミナーとなりました。お忙しい中、参加していただきましたみなさま、ありがとうございました。

今回は、漠然とした企業PRではなく、工務店様や住宅メーカー様の日々の営業活動の中で、フェイスブックがどのように活用できるのかを、具体的に20の方法をあげながら学べた点が好評だったようです。

月間1万人を超える施主見込みのユーザーさんが集まる住宅情報サイト「住まいラボ」(しずおかオンライン)とフェイスブック連携なども今後強化していきますので、詳しくは弊社営業または「住まいラボ」からお気軽にお問い合わせください。

SOLアイアーキテクトでは、今後もIT活用セミナーを開催します。次回も多くのみなさまのご参加をお待ちしています。



明け方の雷雨が嘘のように、雨上がりの東京は初夏の陽気。
午前中に、全国28地域の地域情報誌が加盟しているタウン情報ネットワークさん
に立ち寄ってから六本木ミッドタウンへ。
21_21 DESIGN SIGHTに併設されている「カノビアーノ カフェ」で、
米澤よう子さんとお会いする。
一緒にでかけた『womo』副編集長の望月さんと 、
米澤さんがパリに暮らしていた時のことや、
この2月に文芸春秋社から出版された『パリジェンヌ流おしゃれライフ』で
読者に伝えたかったこと、などのお話を伺う。

米澤さんがパリに暮らしていたのは『womo』の表紙を描き始めた頃と
(つまりwomo初期の表紙イラストはパリ生まれ、毎月パリから届けられていたのです)
重なっていて、この間にご自身の描くイラストがどのように変わってきたか、
具体的な事例をあげてのお話は、とても新鮮でした。

イラストに描かれる女性は、その時代の女性が漂わせている空気感を
米澤さんの目を通して描かれているわけで、
当然、時代の変化にあわせて、描かれる女性も変化しているわけですね。

毎月『womo』を身近に見ていると、近視眼的になって
大きな変化を見落としているなぁ、と思いました。

今年は『womo』にリニューアル創刊して7周年。
米澤さんにもご協力いただきながら、読者のみなさんにも参加していただける
7周年イベントを企画したいと考えています。

アイデアは、すでに副編集長の望月さんの頭の中にあるようです。
どんなイベントが実現できるのか、わたしもとても楽しみ。
望月さん、よろしくお願いしますね。

カノビアーノ カフェ」の料理の美しさに驚きました。



春が来たら京都近郊の山里を歩いてみたいと思っている。
その前に、白州正子の『かくれ里』を読んでおこうと幾度か手にしたのだけど、
ちっとも先に進まない。それは自分が、近畿方面の地理はもとより歴史文化も、
白州正子についても、あまりにも知らなすぎだからか。
結局、彼女の暮らしぶりを写真で追う『白州正子“ほんもの”の生活』をペラペラと
眺めただけで、『かくれ里』は1ページも先に進まなかった。やれやれ…である。

先日、知り合いの編集者に久しぶりに会った時、白州正子と須賀敦子に、
もうひとり兼高かおるを加えて、彼女たちに共通する品の良さや強さについての
話題になった。女性は強くならなければ自分の生き方ができない時代だった、
といってしまえばそれまでなのだけど。

ひと世代上の白州正子は別にして、ぼくとしては兼高かおる(1928年生)と
須賀敦子(1929年)に、もうひとり岸恵子(1932年)を加えたい。
須賀敦子本人の話を聞いたことはありませんが、
兼高かおるや岸恵子の話す日本語は美しくて、背筋がピンと伸びる感じがいい。

少し前に朝日新聞で紹介されていた岸恵子の言葉から、
この世代の女性の歩んできた道が推測される。

「フランスには『卵を割らないとオムレツは作れない』という諺があります。
 卵は割りたくないけどオムレツは食べたいというのはダメ。
 何か新しいことをしたかったら、持っているものを壊さなければならないのです」


京都近郊の山里を歩くとなると、思いのほか時間がかかるらしい。
もっと近くが現実的か。



今日から3月、夜は今年2回目の読書会。今回からOさんとNさんと開いている読書会と、しずおかオンラインの新卒読書会を合同で開催することになっていた。…が、直前になって新卒池戸君から「原稿の締め切りが間に合いません」と申し出があり、池戸君初回欠席。

社内に参加希望者を募った際に手を挙げたMさんが、今回初参加。新メンバーで、しかも紅一点ということもあってか、OさんとNさんのちょっとうれしそうな表情を見て、ぼくもうれしくなる。テキストは『スペンドシフト〜〈希望〉をもたらす消費』(ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ、プレジデント社)。

スペンドシフトとは、文字通り消費のパラダイムが大きな枠組みで変化しているという意味。「理念に根ざした消費」「量より質、見た目より実質」「収入の大きさよりも、時間をどう使うか」「自分を飾るよりも、自分を賢くするための消費」「地元で消費、地元に納税」などのキーワードで、90年代以降から米国でおこりつつある消費の現場の変化を紹介している。

「行動する消費者」が「購買力」を「投票権」のように行使することで、社会に希望をもたらしつつある…という。『womo』をはじめ、しずおかオンライングループのメデイアも、読者やユーザーさんの毎日の暮らしに、ささやかな希望、ちいさな幸せをもたらすものでありたい。

興味深かったのは今回初参加のMさんの発言。 彼女が担当している「ふじのくに魅力ある個店」でおつきあいのある静岡県内の地元店舗の店主さんからも、似たような変化について話を聞いているという。 本書で紹介されているものはすべて米国の事例なのですが、Mさんの発言によって、みんなの思考がデトロイトやダラスから一瞬にしてに富士宮に飛んだ。

いろいろな仕事、環境のメンバーが同じ本を読み、語ることで、毎回、一人の読書では想像もしなかった点と点がつながったり、思いもよらない発見がある。これが、読書会のおもしろさかな。


・『ふじのくに魅力ある個店に行こう』静岡県内で頑張る魅力的なお店が集まるコミュニティです。地元に希望をもたらすお店を紹介しています。
 → http://www.f-koten.jp/

読書会の新年会が、わたしの都合でのびのびになっていた。ということで、今日は随分と遅めの新年会。読書会が終わってOさんとNさんに「では、これから行きましょうか」と声をかけたところ「えっ、新年会は先月やりましたよ。海野さん、随分と飲んでたじゃないですか」と、ふたりはあきれた様子。そういえば3人でO村バーに行ったような、カウンターで飲んだような…。



海野 尚史 HISASHI UNNO

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