日本政府観光局の発表によると2015年の訪日外国人客数は前年より47%増えて1973万人となり、過去最高を記録したそうです。東京や大阪、京都などの都市や観光地では明らかに目にする機会が増えていると思いますが、観光地とはいえないふつうの地方都市で訪日外国人と出会う機会が多い場所があるとすれば、そのひとつがゲストハウスではないでしょうか。
先週の土曜日、昨年オープンした富士宮のゲストハウス「ときわ」に宿泊してきました。ゲストハウスには東京・蔵前の「
Nui」のように、古ビルをリノベーションして、宿泊施設のほかにカフェやバーなども併設し、スタッフを抱えて経営しているタイプと、萩の「
暁屋」のように民家を改修してオーナーが個人で切り盛りしているタイプのふたつにわかれます。で、「ときわ」は後者のタイプのゲストハウス。
この日同宿していたのは、イギリスとスペインからきた女性観光客。オーナーの影山大介さんによれば、ゲストハウス「ときわ」の宿泊客の8割以上が海外からの観光客。欧米からのお客さまが多く、次に台湾、東南アジア、中国の順だそうです。ちなみに、韓国からのお客さまはほとんどいないとか。このイギリス人とスペイン人の女性2人組は、富士宮周辺以外には、北は河口湖、西は静岡市の久能山東照宮まで、富士宮を起点に観光していたようです。
「ゲストハウスで情報収集、情報交換して、旅行プランを立てながら移動している方が多いのも、海外の個人観光客の特徴です。これからは、そのようなお客さまの視点にたった観光情報の発信に力を入れなくては!」と影山さん。フリーWi-Fiと観光情報を発信するサイト「
シズパス」も、今まで以上に外国人観光客の声を反映して、外国人が使えるサイトにしていく必要がありそうです。
萩市浜崎、寺の塀越しに見上げる中秋の名月。
「50過ぎのオッサンも、ゲストハウスなんかに泊まるんだ」。茨城県から萩市までバイクでやってきたという大学3年K君のその言葉に、隣で聞いていた宿の主人のTさんが、「もうすこし言い方があるんじゃないの。それに、うちはリタイアした人もよく利用してるよ」とあわててフォローしてくれた。
ぼく自身は、久しぶりに、大人に対する若者特有のあっけらかんとしたもの言いに接して、かえって気持ちいい。それよりも「オーナーの前で“ゲストハウス
なんか…”はないだろう」と、Tさんの反応が気にしながら、「そうなんだよ。50過ぎのオッサンも、ときどきゲストハウスを利用したりするんだよ」とこたえる。
ここは、この春Tさんが萩市に開業したばかりのゲストハウス(写真上)。萩市の宿を決めないまま山陰旅行に出かけたので、山陰本線で移動中、ネットであわててここを探し当てたのだ。萩には2軒のゲストハウスがある。一軒は、古ビルをリノベーションし、カフェ・バーを併設したおしゃれな宿(
同じデザイナーが手がけた東京・蔵前のゲストハウスを利用した時の話はこちら)。もう一軒が、Kさんが一人で切り盛りしている古民家をリフォームしたこの日の宿である。

大学3年のK君は、道路フェチ。バイクに乗っている時は、「ここの道路はよくできている、走りやすい、とか、ここはちょっと仕事が荒いな」などと気になるのだそうだ。現在の悩みは、就職活動。自分の手で道路を造りたくて、大学は土木課を選択。ところが入学後、実際に道路を造っているのはゼネコンの協力会社であること知り、先輩たちのようにゼネコンに就職すると直接道路づくりができないと、迷っている。
一方、この宿の主人Tさんは、香川県出身の38歳。この春、萩市にゲストハウスを開業するまでの道のりや、開業後の経営状況、集客の課題、外国人バックパッカーの国籍別特徴など、いろいろな話題で盛り上がる。ふすまを隔てた隣の部屋では、アメリカ育ちだけどアメリカ人嫌いの28歳の投資会社経営者が、チェックイン早々眠っている。この日の客は3人。全員男性、全員一人旅。話を聞いてみれば、主人のTさんもいまだ一人旅の途中らしい。
ここ数年、部屋をシェアして宿泊するゲストハウスが増えている。ホテルでも旅館でも民宿でもなく、こんな小さなところから、2020年の訪日外国人観光客2,000万人に向けての動きが始まっているのかもしれない。
写真下は、前日に宿泊した石見銀山、他郷阿部家。文豪に似合いそうな落ち着いた部屋。
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本を見せるだけでランチメニューが500円!
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先日見たイタリア映画「
はじまりは5つ星ホテルから」(
@静岡シネギャラリー)は、実在する“ラグジュアリー”な5つ星ホテル(フランス、イタリア、スイス、モロッコ等)が舞台。主人公の女性の仕事は、高級ホテルのサービスをチェックする"覆面調査員”。普段は見ることのできない、というか、職業として存在することも知らなかった高級ホテル専門の覆面調査員が、ホテルのどんなところを、どんな方法で、どれだけ厳しく審査しているのか、その裏側を垣間みることができて、なかなか興味深い内容でした。
5つ星ホテルの対極といえば、アメニティもサービスも極力省いた素泊まり宿のホステルやゲストハウス。そして、私が利用する機会があるのは後者。最近は、古い和風建築やオフィスビルなどをリフォームした、イマドキのカフェ風デザインのゲストハウスも増えていて、(清潔でさえあれば、設備は気にしないので)時々利用することがあります。設備やサービスを競うわけではないゲストハウスの善し悪しを左右するのは、オーナーやスタッフの人柄だと思いますが、最近登場している新しいゲストハウスは総じてスタッフも若く、接客もこなれていて、居心地も悪くない。
上の写真は、この冬に利用した東京・蔵前の
ゲストハウスNui.(正確にはホステル)。江戸時代から続く玩具店の倉庫をリノベーションした施設で、客の過半数が海外からの旅行者でした。スタッフは20代後半から30歳ほどの若いメンバーが中心で、接客も気持ちよいものでした。残念だったことは、宿泊した部屋のコンセントが1個しかなかったことと、朝食サービスが朝9時からと遅く、楽しみにしていた焼きたてパンを食べられなかったこと。この2点を減点して、ゲストハウスとしては3つ星…かな。
そんなこともあり、富士山世界遺産登録効果で観光客の誘客を見込む静岡市にも、ホテルや旅館だけでなく、海外からの旅行者や若者向けのゲストハウスがあってもいいのでは、と関心をもっていたところ、先週
インタビューノートの取材でお話をお聞きしたwebマガジン「
シズオカオーケストラ」を運営する井上泉さんが、「
ふじのくに⇄せかい演劇祭」開催にあわせて、期間限定の
ゲストハウス”nedoco”をオープンすると教えてくれました。ゲストハウス”nedoco”は、日帰りではなく、宿泊して演劇祭も静岡も満喫していただこうという企画。まだ若干名は予約できるようです。
参加宿泊施設には、”おとうけいさん”と親しまれているお寺「洞慶院」も。座禅体験もあり!
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ゲストハウス”nedoco”プロジェクトは、こちらへ↓↓
http://shizuoka-orchestra.com/himitsu/spac2014/
