
「創造を続けるには、変わることだ」。これはIT起業家ではなく、“ジャズの帝王”マイルス・デイヴィスの言葉。
静岡シネ・ギャラリーで上映中のドキュメンタリー映画『
マイルス・デイヴィス クールの誕生』の中で、「自宅に昔のレコードは1枚もなかった」と語るマイルスの息子のエピソードからも、過去を振り返ることなく、生涯にわたり新しい音楽への挑戦を続けた姿勢が伝わってきます。演奏していたクラブ「バードランド」の前で言いがかりをつけられ、白人警官に殴られて連行されたのが1959年8月、今から約60年も前のこと。

自分の中にある自覚していない偏見や差別意識。どこにでもいるような普通の女性が、職場や家庭で当たり前のように背負わされる理不尽を描いた韓国のベストセラー小説『
82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)。
物わかりのいいリベラルな人間にみえる主人公の夫や、主人公が通う精神科の専門医の言葉に垣間みえる偏見は、自分も彼らと同じくらい無神経なことをしていることに気づかせてくれます。日本の女性との共通点も感じられる主人公キム・ジヨンはさることながら、主人公の母親の韓国的なパワフルさ、バイタリティも印象に残りました。映画『82年生まれ、キム・ジヨン』は、10月9日(金)から
静岡シネ・ギャラリーで上映されますね。
・静岡シネ・ギャラリー公式HP
http://www.cine-gallery.jp/nextmovie_1.html#109
≪静岡シネ・ギャラリーから支援のお願い≫
https://camp-fire.jp/projects/view/276669
写真は、静岡県立美術館で5月31日まで開催されていた『
きたれ、バウハウス展』。手前は、マルセル・ブロイヤーのスチールパイプ椅子。コロナ禍による臨時休館から再開した静岡シネ・ギャラリーでは、『
きたれ、バウハウス展』に続いて、『
バウハウス100年映画祭』を開催しています。モダニズムのパイオニアとして、建築、インダストリアル・デザイン、グラフィック・アート、写真など幅広い分野に影響を与えたバウハウス。
『
バウハウス100年映画祭』で上映されている4本の作品からは、当時の教育現場の様子や「年齢、性別に関係なく、誰もが学ぶ権利をもつ学校」と謳いながら、影の存在として扱われた女性たちの実像など、当時の学校の様子がリアルに伝わってきます。モダニズムの源流に興味のある人にはおすすめです。
久しぶりの映画館。大きなスクリーンでリラックスしながら映画に集中できる贅沢さをあらためて実感しました。忙しい日常の中で、手軽に気分をリフレッシュできる場所は貴重ですね。
≪静岡シネ・ギャラリーから支援のお願い≫
https://camp-fire.jp/projects/view/276669

米国中間選挙に合わせて
静岡シネ・ギャラリーでも上映されたマイケル・ムーア監督の『
華氏119』。2004年の作品『華氏911』では、アメリカ同時多発テロ事件へのブッシュ政権の対応を批判する内容でしたが、『華氏119』ではトランプ政権だけでなく民主党も槍玉に挙げられています。
ケンブリッジ・アナリティカを内部告発した元リサーチ・ディレクターのクリストファー・ワイリー氏のインタビュー記事と重ね合わせながらみると、なんともやるせない気持ちになります。不都合な真実が尽きない米国ですが、このような映画が作られて、上映されるにところに一抹の救いを感じました。(「119」はドナルド・トランプ氏が大統領の勝利宣言をした「2016年11月9日」を意味しているのだそうです)
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静岡県の IT業界研究イベント【SOL-TECH for Students】第2回を開催します!
【SOL-TECH for Students】は、IT業界やシステムエンジニアに興味のある大学生、高校生、専門学校生に向けて、静岡県内で活躍するIT業界のシステムエンジニアや担当者が、実際の仕事の現場や面白さ・やりがい、などを直接伝えるためのイベントです。
・日時:2018年11月30日(金) 18:30~20:30
・会場:静岡市産学交流センター 演習室1
(静岡県静岡市葵区御幸町3番地の21 )
・参加費:無料/私服参加
・参加企業:順不同 / 敬称略
〇株式会社オープンスマイル
〇株式会社ハンズ
〇株式会社しずおかオンライン ほか
・主催:株式会社しずおかオンライン
【詳細および申し込みはコチラから】
https://www.esz.co.jp/blog/2735.html

予告編で気になっていた(ソン・ガンホの笑顔にやられた)ことに加えて、韓国では1200万人も動員したという触れ込みの映画『タクシー運転手~約束は海を越えて』(@静岡シネ・ギャラリー)を観てきました。
『タクシー運転手~約束は海を越えて』は、1980年5月に起きた「光州事件」時の実話をもとに描いた映画。「光州事件」が起きたのは大学生だった頃。当時の韓国はほんとうに「近くて遠い国」で、「光州事件」が報道された記憶はおぼろげにありますが、隣の国でこんなことが起きていたとは…。
状況によって軍は自国民にも発砲する、人はそういうこともやってのけてしまう。一方で、ソン・ガンホを自宅にかくまい、もてなし、一緒に行動をともにする光州のタクシー運転手たちのような人もいる。そのどちらも同じ人間である。フェイクニュースは別の形で昔から存在していたこと、言論統制や弾圧の方法は技術の進化とともにより巧妙になるなど、いまに置き換えて考えさせられる映画でした。
今年も「
シズオカ×カンヌウィーク2018!」が始まりました。昨日と今日の二日間は静岡市葵区の七間町会場で、
シズカン「七間町シネマテーク」スタンプラリー開催しています。映画やマルシェを楽しみながら、ついでにスマホでスタンプを集めてみてください。スタンプを2個を集めると抽選でプレゼントが当たります。
今年、ここまでに観た映画で印象に残っているのは、「デトロイト」「ザ・シークレットマン」「ワンダーストラック」そして「シェイプ・オブ・ウォーター」(@静岡シネ・ギャラリー)。「ザ・シークレットマン」は、ウォーターゲート事件を描いた映画「大統領の陰謀」で“ディープスロート”と呼ばれた、事件当事FBIのナンバー2だったマーク・フェルト氏を描いた作品。ふたつの作品で表裏が揃った感もありますが、ここまできたらニクソン視点の作品もぜひ観てみたいところ。
ギレルモ・デル・トロ監督の映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、謳い文句はファンタジーラブロマンスですが、聴唖者・黒人・ゲイなど、世間から抑圧された人々(マイノリティ)のヒューマンドラマとしても見ごたえがありました。印象に残ったのは、色彩と美術の美しさ。映画館の上の部屋で暮らすという設定も、ファンタジーらしくていい。映画の設定は、1962年の米国東部の街ボルチモア。主人公イライザと友人ジャイルズの暗い部屋には、ミッドセンチュリーのありふれた家具や小物が。同じ年、カリフォルニアには、イギリス人の大学教授ジョージ(トム・フォードの映画『シングルマン』)が暮らしていて、こちらは、完璧なミッドセンチュリースタイルの光の溢れる家。どちらもゲイのジャイルズとジョージについてもあれこれ想像してしまいました。
・シズオカ×カンヌウィーク2018
http://www.cannes-shizuoka.jp/
・シズカン「七間町シネマテーク」スタンプラリー開催!
(主催:静岡×カンヌ×映画プロジェクト実行委員会&しずおかオンライン)
https://stamp.machipo.jp/cards/66c14016cce5f3a3

SPAC
宮城聡演出のミヤギ能「オセロー」を観てきました。シェイクスピア劇を日本の伝統芸能「能」の手法で演じる「シェイクスピア能」を見るのは久しぶり。前回の記憶はほとんどないので比較できませんが、宮城“能”「オセロー」はいい意味でわかりやすく、「オセロー」を知らない方にも楽しめたのではないかと思います。シンプルな舞台は美しく、 SPAC作品の大きな魅力である打楽器主体の舞台音楽も、舞台を引き立てていました。
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しずおかオンラインの「採用サイト」が新しくなりました!
スーパーローカルなプロ集団の一員として、一緒に、地域の魅力創造・元気創出にチャレンジしてみたい方の応募を待っています。
https://www.esz.co.jp/recruit/index.html

正月に録画しておいた「年越し映画マラソン」黒澤明監督特集(『七人の侍』や『生きる』)を、まとめて見ました。久しぶりの『七人の侍』では、最後の戦闘シーンの迫力ある雨やロケ地など、ストーリー以外につい気が向いてしまいました。そのあたりについては、黒澤明監督と宮崎駿監督の対談集『
何が映画か ー「七人の侍」と「まあだだよ」をめぐって』(徳間書店)を読んで、撮影方法やらロケ地(村の東は伊豆長岡、西は御殿場、北の斜面は下丹那、集落はセット)についての疑問を解消。黒澤明監督のこだわりと気配り、実写とアニメの現場の違い、役者の育て方、三船のスピード、そしてチームの作り方など、黒澤監督の映画づくりは“神は細部に宿る”の実践だなぁ、などと思いました。
先の対談が行われたのは1993年。黒澤明監督83歳、宮崎駿監督52歳。「黒澤監督の前だと僕は小僧です」といいながら、宮崎監督からライバル心がひしひしと感じられるところがいい。「世間がいろいろいっても、周りに迷惑をかけても、俺はこれで生きて行く。それが大事なんだ」というメッセージを黒澤監督から受け取ったとは、対談を終えた宮崎駿監督の談。
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・【イエタテ相談カウンター浜松店】
FPによるライフプラン勉強会開催~1月27日(土)~
http://ietatehama.hamazo.tv/e7743258.html
アメリカ初の有人宇宙飛行に貢献した3人の女性の物語、映画『
ドリーム』(@
静岡シネ・ギャラリー)を観てきました。満席。数学者、エンジニア、マネージャー。それぞれ得意とする力を発揮して、成果を出しながら周囲の信頼を得、既存のルールを(前向きに、したたかに)乗り越えていく姿勢がすばらしい。
そんな彼女たちの可能性を公正に見極め、機会を与える(責任を引き受ける)上司や裁判官の存在も強く印象に残りました。“ダイバーシティ(多様性)”の必要性が叫ばれる昨今ですが、現場(当事者)と制度が両輪となってこそ推進できるのですね。
正式なNASAエンジニアを目指すメアリー。自分の運命の決定権を持つ裁判官の心を動かす説得力のあるプレゼンテーションが見事。自分が欲しいものを手にしたければ、誰かが与えくれるのをただ待つのではなく、自ら意思表示すること。

先日、磐田市で落語会情報誌『東海落語往来』を発行している
金澤実幸さんにお話を聞く機会をいただきました(この時のお話は「次回の
インタビューノート」で紹介します)。その時に「落語会はみなさんの身近な場所で頻繁に開かれているんですよ」と、静岡県内の落語会事情について教えていただいたのですが、その数日後、平成の長屋実行委員会のHさんとKさんから、六代目春風亭柳朝師匠(静岡市出身)を招いて「納涼 施餓鬼寄席」を開くので聞きにきませんか、と声をかけていただきました。すばらしいタイミング!?
「納涼 施餓鬼寄席」が開かれたのは7月15日の旧盆。会場は、日本の民家を現代に甦らせたような趣のある住居「あくび庵」。10畳ほどの板の間と縁側に並べられた座布団がこの日の客席でした。演目は幽霊の登場する長屋噺「不動坊」と人情噺の「井戸の茶碗」。縁側に座り、風鈴の音をBGMに聞く落語は、風情があって贅沢なひとときでした。
こちらは、ウェブサイト「womoネット」でアクセスの高かったコラムTOP5(↓)。

2017年の前半が終わりました。今年上半期に観た映画を振り返ってみると、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「光」「たかが世界の終わり」「家族の肖像」「ホームレス ニューヨークと寝た男」「ナイスガイズ!」「皆さま、ごきげんよう」…。
中年(老年)男を主人公にした映画が多いのは、自分自身がそういう年齢だからというシンプルな理由から、だと思っています。ネット上の評判やレコメンドを積極的に参考にすることは少ないのでそう思うのですが、自分の意図しないところで、すでにそのような情報に取り囲まれているんだよ、と言われれば、そうかもしれません。自分の決定のどこまでが自分の意思によるものなのか…。見えない技術の進歩とともに、自分の輪郭が曖昧になっていくようです。
家族を失った男、視力を失いつつあるカメラマン、間近に死を迎えている劇作家、モデル兼カメラマンでありながらビルの屋上に暮らすホームレス、隠遁生活を送る大学教授…。中年男性の多くが似たような体験を持っていると考えられているためか、それとも物語として映画になりやすいためかはわかりませんが、主人公たちに共通しているのは、人生で大切な何かを欠落している、または、世間では当たり前のこと、大切なことといわれているものに目を背けて生きてきたこと。
人は自分の見たいものだけを見ようと努力しますが、ある時期を迎えると、そんな自分にコミットできなくなっている自分に気づきます。当たり前の大切なことを素直に受け入れられるようになるには、思いのほか時間がかかるもの。でも、そんな時に “歳をとるのも悪くない” と思う。そこから一歩踏み出すためには、自分に対する自分の態度を変えることが必要ですが、それはまた別の話。
「家族ができたと思えばよかった」と、いままでの自分の態度を悔やむ「家族の肖像」の老教授のつぶやく場面、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のエンディング、主人公のリーと甥のパトリックが、拾ったボールでキャッチボールしながら、これからのことを話す後ろ姿、それらの映像を思い出しながら、そんなことを考えました。
そのほか上半期に観た映画。「マイルス・デイヴィス 空白の5年間」「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」「メットガラ ドレスをまとった美術館」「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」。
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お知らせです。
しずおかオンラインでは、「2019卒向け夏インターンシップ」を開催します。「womo」や「イエタテ」などの自社メディア、アプリ・WEBサイト・イベントなどの運営を通して、地域の生活者と一緒に地域の魅力づくりに取り組んでいる現場を体験していただけます。
詳しくは、こちらをご覧下さい ↓↓
【詳細】
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https://job.rikunabi.com/2019/company/r673130090/preentry/U001/
上映最終日の金曜の夜、静岡シネ・ギャラリーで映画『
メットガラ ドレスをまとった美術館』を観てきました。「メットガラ」とは、 NYメトロポリタン美術館(MET)服飾部門の活動資金を集めるために、毎年5月初旬に開催されるファッション界最大のイベント。『
メットガラ ドレスをまとった美術館』は、2005年に開催された「鏡の中の中国」展の制作過程に密着したドキュメンタリー映画です。
このイベントの仕掛け人が、ファッション誌『ヴォーグ』編集長のアナ・ウィンター。アナ・ウィンターといえば、雑誌『ヴォーグ』を作り上げていくプロセスに密着した映画『
ファッションが教えてくれること』で、厳しく妥協のない、そして真摯な仕事ぶりが印象的でした。本作でも、そんなアナ・ウィンターは健在。
雑誌作りにしてもイベントにしても、多くの人を巻き込んで一緒に一つのものを創りあげる仕事では、編集長や監督、ディレクターなど、中心となる人物の強い信念と熱意、そして即断即決する圧倒的な決断力が不可欠。それらが周囲に伝播して、目の前の物事を大きく動かしていきます。 アナ・ウィンターの仕事ぶりに、そんなことを改めて実感させられました。
映画が密着した2005年のメットガラ「鏡の中の中国」展では、一人2万5千ドル(約285万円)の600席が瞬時に満席に。アナ・ウィンターのもうひとつの、そして最大の力は、アートとしてのファッションの可能性とマーケットの両者が最大化するポイントに着地させる手腕ではないか、とも思わせられた映画でした。
ジョン・ガリアーノやアレキサンダー・マックィーンの豪華絢爛な衣装も素晴らしいものでしたが、イヴ・サン・ローランのデザインの洗練された美しさは別格ですね。
5月13日(土)から5月28日(日)の16日間にわたるイベント、「シズオカ×カンヌウィーク2017」が開幕しました。今年で8年目の「シズオカ×カンヌウィーク」は、静岡市の姉妹都市フランス・カンヌ市の「カンヌ映画祭」と同時期に開催されるイベント。市内の7つの会場では、映画上映のほか食や雑貨のマルシェ、アーティストによるパフォーマンスが催されます。年々充実しているシズカンのマルシェはオススメです。
さらに今年は、
カンヌ国際映画祭70周年の記念ボトルが赤ワインが当たるスタンプラリーを開催。下記7会場のうち2会場を回ってご応募ください。ワインは、ムートン・カデ・ルージュ カンヌ・リミテッド・エディション2014です!
・「womoコラム」【シズカン2017】スタンプラリーで本場の限定ワインを当てよう!
https://womo.jp/column/detail/24829/
対象会場(下記の中から2カ所でスタンプを集めて応募)
1、登呂遺跡(静岡市駿河区登呂) ※5月13日(土)
2、七間町名店街(静岡市葵区七間町) ※5月20日(土)、21日(日)
3、清水マリンパーク(静岡市清水区港町) ※5月27日(土)、28日(日)
4、静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区御幸町)
5、夢町座(静岡市清水区真砂町)
6、とろろ汁 丁子屋(静岡市駿河区丸子)
詳しくは下記を参照ください。
・「シズオカ×カンヌウィーク2017」公式サイト
http://www.cannes-shizuoka.jp/
・「シズカンスタンプラリー」参加アプリ
http://bit.ly/2pEy2dT

編集者マックス・パーキンズのことを最初に知ったのは、常盤新平氏の『アメリカの編集者』(新潮文庫)でした。『エスクァイア』の創刊編集長アーノルド・ギングリッジや、ランダムハウスのベネット・サーフ、『ニューヨーカー』のハロルド・ロスなど、アメリカの出版界を代表する編集者を紹介した同書の最初に登場していたのがマックス・パーキンズ。
そのマックス・パーキンズの編集者としての仕事ぶりや作家との関係を描いる映画「
ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」(原題は「GENIUS」)を静岡シネギャラリーで観てきました。『グレート・ギャツビー』を書いたフィッツジェラルドやヘミングウェイの編集者でもあったマックス・パーキンズと作家トーマス・ウルフの二人を軸に、作家の生み出す言葉を物語として完成させていくプロセスや、互いの葛藤、作家と編集者の関係など、とても見ごたえのある映画でした。
とはいえ、編集者を主人公にしたとても地味な映画なので客の入りが気になってシネ・ギャラリーのスタッフの方に評判を聞いてみたところ、「ジュード・ロウ(トーマス・ウルフ役)とコリン・ファース(マックス・パーキンズ役)をお目当てに観に来られる方もいますよ」とのこと。「コンピューターが小説を書く日」に関心が高まる時代ですが、目的はどうあれ、編集者の仕事や、小説の生まれるどこまでも人間的な現場を垣間見ることのできるいい映画だと思いました。
週末、静岡舞台芸術劇場で上演された『
高き彼物』を観てきました。舞台は、1978年(昭和53年)夏、SLの汽笛が聞こえる川根町の雑貨屋を舞台にした作品。それだけでも十分に興味を引かれますが、浜松市出身のマキノノゾミによる脚本を、コンコルゲンの古館寛治が演出し、掛川市出身の宮沢章夫が舞台美術を手がけるとあって見逃せません。
舞台真ん中の卓袱台を取り囲むように扇風機、仏壇、文机、黒電話、そしてラジカセ。特別な仕掛けのないシンプルな舞台でしたが、そこで演じられる物語は、人間の多面性を自然な展開で描いていて、素晴らしい舞台でした。川根弁のセリフや、「島田」「掛川」「静岡」などの耳慣れた地名が出てくるのが新鮮でもあり、少し照れくさくもあり。
終盤、元高校教師が学校を辞めた理由を告白します。それは、昭和の時代では、なかなか周囲に受け止められなかったと思われる理由でしたが、今の時代に聞くとリアルに感じられるのは、個人の尊厳や多様性を認め合うことの大切さが世の中に広がりつつあるということかもしれません(そうあってほしいものです)。最後にラジカセから流れたのは、渡辺真知子の「迷い道」。1978年に彼女が「紅白」出場を果たした歌ですね。「現在・過去・未来…」という歌詞が、物語のエンディングにぴったりはまっていました。
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しずおかオンラインでは、私たちと一緒に地域の生活情報を発信する仲間(正社員)を募集しています。中途採用の会社説明会も開催します。
▼採用情報詳細
http://esz.co.jp/recruit/guideline/sol/mid-career.html
(しずおかオンライン採用サイト内中途採用ページ)
▼会社説明会【静岡会場】
・12月5日(月) 19:00スタート
・場所:イエタテ相談カウンター(静岡市葵区鷹匠1丁目、新静岡セノバから徒歩三分)
〒420-0839 静岡市葵区鷹匠1-3-2 銀座エアポートビル1F
静岡芸術劇場で上演された「Noism(ノイズム)」の劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』を観てきました。「Noism」は、新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」の専属ダンスカンパニーで、日本で唯一の劇場専属舞踊団。新潟を拠点に、世界的な活動を展開しているそうです。
今回の『ラ・バヤデール―幻の国』は、わたしの「Noism」初体験。予備知識なしにでかけてきたのですが、舞踊家の身体、音楽、衣装、舞台美術の一つひとつの美しさに加え、それらが一体となって舞台空間に創りだす「劇的舞踊」は、オペラやバレエ、演劇とも違った、新鮮な芸術表現でした。そこに、SPACの俳優、奥野晃士、貴島豪が加わったことも、この作品に、存在感と迫力、奥行きを加えていたのではないかと思います。
上演後は、SPACの宮城聡氏と「りゅーとぴあ」舞踊部門芸術監督で演出を担当した金森穣氏との対談がありました。宮城聡氏が、演劇が“大きな物語”を扱いにくくなっているなかで、舞踊ではそれらを表現できる可能性があることにふれ、一方、金森穣氏は、抽象表現の(難しいという先入観をもたれがちな)舞踊の入口として物語の可能性を感じている…など、違う世界の第一線で活躍している創作者の頭の中の一端に触れられたような興味深い内容でした。
『ラ・バヤデール』は、舞姫と戦士の悲恋を描いた古典バレエの作品。演出は金森譲氏、脚本は平田オリザ氏。
・SPAC- 静岡県舞台芸術センター芸術総監督:宮城聡氏のインタビューノート
http://interview.eshizuoka.jp/e1055583.html
「なぜ、この客は(俺の料理を)食べ残しているんだ!?」
「世界ベストレストラン50」というレストラン・ランキングの第1位に4度も輝いたデンマークの人気レストラン「noma」を描いたドキュメンタリー映画『
ノーマ、世界を変える料理』(@静岡シネ・ギャラリー)。映画の中で、noma のシェフのレネ・レゼピ氏がスタッフを問いつめるシーンが印象的でした。
「
womoグルメ」という地域(静岡市、浜松市)の飲食店を紹介するサイトを運営していることもあり、話題のレストランは、県内にかぎらず、国内だけでなく、遠い国のお店でも、やはり気になります。
最近は、レストランや料理を扱うドキュメンター映画の上映も増えています。「
エル・ブリの秘密 世界一予約の取れないレストラン」や「
ステーキ・レボリューション」、今年は「
99分,世界美味めぐり」(原題「フーディーズ」)などなど、静岡にいながら、世界で話題のレストランの、料理や食材、インテリア、サーブするスタッフの接客、そして戦闘状態のような調理場の風景など…を垣間みることができるのは、映画ならではの楽しみ。
斬新で独創的な料理が誕生するプロセスは、とてもクリエイティブで刺激的。そして、一流といわれる料理はセクシーなものが多いことに気づきます。食欲を刺激するにも、ビジュアルとプロポーションが効果的…ということでしょうか。
冒頭のシーンは、ある一人の客の食べ残しですが、日本全国の食品ロスは642万トン(国民一人ひとりが毎日おむすび1~2個捨てている量)もあるのだとか。静岡県では「もったいない」を実践するために、「食べきり(完食)」をテーマにした「
ふじのくに 食べきり やったね ! キャンペーン」サイトをプレOPENしました。
生き延びるために、自分の持てる知識を総増員して、もっとも成果が期待できる方法を選択し、実行する。状況が変われば、状況に合わせて、それを何度も繰り返す。映画『オデッセイ』には、派手なアクションも、口当たりのいいドラマやファンタジーも描かれていませんでしたが、生き延びることの強い意志と行動力、そしてユーモアを支えにしながら、目の前にあらわれる理不尽な課題をひとつひとつこなしていくその姿に惹き付けられた2時間20分でした。
火星にひとり取り残された主人公は、当然ですが、過去に火星でサバイバルした経験もなければ、ロールモデルもいません。それらを嘆くこともありません。目的に向かって、冷静に、淡々と、ときにユーモアに助けられながら日々をこなしていく(もちろん、失敗しても誰のせいでもない)わけですが、それは火星だけでなく、わたしたちの日々の暮らしと同じだなぁ、と思うのです。
秋から冬にかけて、いくつか楽しみな映画があります。それだけで幸せな気分になり、日常をちょっと頑張れます。
先の週末は、
静岡シネ・ギャラリーで上映が始まったビーチボーイズのブライアン・ウィルソンを描いた映画『ラブ&マーシー』を観てきました。『…ラジオから流れてくるそのポップソングを初めて耳にしたとき、僕は文字通り言葉を失ってしまった。ずっと聴きたいと思っていたけれど、それがどんなかたちをしたものなのか、どんな感触をもったものなのか、具体的に思い描くことができなかった特別なサウンドを、その曲はこともなげにそこに出現させていたからだ。(中略)どうしてこの連中には、僕の求めているものがこんなにはっきりとわかるのだろう?』。村上春樹は、『意味がなければスイングじゃない』(文春文庫)の中で、初めてビーチボーイズの楽曲を聞いた14歳の時の気持ちをこう描いている。このような体験は、人によっては、漫画だったり、小説だったり、映画だったり、詩だったりするのでしょうね。それらがいかに貴重な体験だったかは、ずいぶんと時間がたってから気づくわけですが。
映画『ラブ&マーシー』の中で、アルバム『ペットサウンド』を制作するシーンが描かれています。音づくりに苦悩し、孤独とも闘わなければならないブライアン・ウィルソンの痛ましい姿と、そんな彼から生まれる、緻密で美しいハーモニーの落差に驚かされます。『ペットサウンド』は、いかにして孤高のアルバムとなったかが理解できた気がします。映画の冒頭で、ブライアン・ウィルソンの頭の中を漂うサウンドが流れるのですが、その音をサラウンドで体験するためだけでも、映画館で観ることをおすすめしたい。それから、先の文章を初めて読んだ時「どうして村上春樹は、僕のいいたかったことをこんなにはっきりと言葉にできるのだろう」と驚いたことを思い出しました。
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期間限定!womoコラボの“トレンド鍋”5選

世界文化遺産を背景にした三保羽衣薪能の特設舞台。「羽衣まつり」が開催されたこの日は、あいにくの曇天。穏やかな海、白砂青松、美しい天女の舞、駿河湾沖には雪化粧の富士山が…という漁師・白龍が感嘆した清見潟から見渡した三保の松原の風景というわけにはいきませんでしたが、三保松原のお膝元・清水五中の生徒さんたちによる「羽衣」の謡と仕舞、しずおか三保・羽衣謡隊による謡「羽衣」を見学されたお客さまや演じ手の思いは、三保松原から浮き島が原を過ぎ、愛鷹山や富士の高嶺を超えて高く舞い上がり、天空の中、霞にまぎれて消えていった…のではないかと思います。
宝生流能楽師の佐野登先生の指導のもと、今回、わたしも羽衣謡隊の末席に加えていただき「羽衣 東遊び」を詠わせていただきました。日本各地に伝わる羽衣伝説の男たちが天女にほれるのにたいして、三保の漁師・白龍は、天女ではなく美しい羽衣を求めます。なかなかの粋人だったようです。