2011-07-27 LA 「松崎で会いましょう」

 6時起床。ロス滞在も、今日が最終日。USARailPassを使って、7時35分ロス発のパシフィック・スーパーライナーに乗り、日帰りでサンタバーバラへと向かう。片道約3時間。サンタバーバラはロサンゼルスの北に位置する街で、白壁とオレンジ屋根の南スペイン風の美しい街づくりで知られている。サンフランシスコからロサンゼルスに向かう途中の車窓から眺めた時に、「この街は、ぜひ自分の足で歩いてみたい」そう思った街である。

 10時30分、サンタバーバラ着。まずは、帰りのチケットを購入。なにせ、ロスに戻る午後の列車は2本しかないのだ。ここで帰りの列車のチケットが「SOLD OUT」となってロスに帰ることができなくなったら、明日のニューオーリンズ行きまで危なくなってしまう。「詰めの甘さ」を思い知るのは、しばらくご遠慮願いたい。

 サンタバーバラの主な見どころは、メインストリートであるState St.沿いに集まっている。距離にして約2Kmほどなので、歩くにはちょうどいい。サンタバーバラ・カウンティ・コートハウスなどを見学したり、書店を覗いてみたり…2時間ほど散策。昼過ぎに「ス」でひと休み。列車が到着するまで少し時間があったので、スターンズワーフ(埠頭)まで足を延ばし、パームツリー並木の美しい海岸線や、そのむこうに広がるオレンジ色の屋根と白壁が続く町並みを眺めながら過ごす。

 2時発のサンディエゴ行きパシフィック・スーパーライナーに間に合うように、アムトラックの駅へ戻るが、列車がやってくる気配はない。今日もいつも通り遅れている様子。ホームではのんびりと観光客が、列車の到着を待っている。その中に一人、日本人と思われる男性がいた。年はわたしより少し上か。英語で声をかけようか、日本語にしようか少し迷ったが、今回はストレートに聞いてみた。「こんにちは。もしかして、日本の方ですか…」

 それから少しして列車がホームに到着。 ロスまでの帰りは、その方(Kさん)と一緒に話をしながら、あっという間の3時間となった。

 Kさんは、ロサンゼルスに暮らして30数年になる日本人。大学を卒業して1年後に渡米し、それからずっとロサンゼルス暮らしという。

「今日は、友人と一緒にヨットに乗ってロサンゼルスからサンタバーバラまでクルーズしながら(ヨットを)運んできたんです。ヨットレースに出る友人とヨットはサンタバーバラに残して、わたしだけロスに戻るところです。朝4時にロスの港を出港して、9時間もかかってしまいましたよ。ずっと向かい風だったのと、沖はさらに風が強かったのでね…。こちら(米国)にきて30年以上になりますが、アムトラックに乗るのは今日が2回目。どうやって乗るのでしょうね…」

 Kさんは、東京神保町の出身。学生時代からサーフィンに夢中だったことと、当時創刊されたばかりの雑誌『POPEYE』などの影響で米国西海岸に興味をもち、20代前半にこちらに移住。貿易業を営みながら、ロサンゼルスでの生活を楽しんできたのだという。

 「サーフィンから始まって、テニス、ゴルフetc…、いろいろ好きなことを存分に楽しんできました。料理に凝った時期もありましたよ。うどんを打って、お客さんに食べていただいたりね。そして、今はヨット…、8年前からヨットに夢中になっちゃって」

 それからひとしきりヨットの魅力や、半年ほど前に日本に行った際、九州や瀬戸内海を旅行して、各地のヨットハーバーをチェックして回った時の話などを楽しく聞かせていただいた。

 そのほかにも、実家が印刷業だったそうで、小さな頃に身近に見ていた活版印刷の話、米国人の仕事の流儀、某人気雑誌の有名編集者が取材チームを率いてロス取材に来た時にコーディネート役を引き受けたこともあるそうで、その時の取材裏話など、Kさんのロスでの生活や仕事のことなど話は尽きず、あっという間の3時間となった。話があまりに楽しく、二人ともロスで乗り過ごしてしいそうになったほどである。

 Kさんがいま計画していることが、ヨットで日本の海岸線を旅すること。伊豆の松崎港にも帰港するかもしれないという。「その際には、ぜひ松崎でお会いしたいですね」と言葉を交わして、ロスのユニオン駅でお別れした。

 明日は、いよいよグレイハウンドバスでロスを出発である。スーパーマーケットで車中での食料を買い出しして、早めに就寝。

・洗濯
・腰痛無

2011-07-27 LA 「松崎で会いましょう」

サンタバーバラで唯一見かけた書店「THE BOOK DEN」の店内。エミー・タンとブローティガンが平台に並んでいる。ブローティガンは人気があるのか、それとも店主の趣味か。


2011-07-27 LA 「松崎で会いましょう」

サンタバーバラのアムトラック駅。スペイン風の駅舎。


2011-07-27 LA 「松崎で会いましょう」

列車を待つ人々。時刻に遅れても誰も騒がず、何ごともないかのように待っている。
写真の枠外にKさんがいた。


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