多和田葉子さん
以前このブログでもエントリーした、ドイツ在住の日本人作家・多和田葉子氏が一時帰国。長泉町のIZU PHOTO MUSIUMで開催中の木村友紀「無題」のトークイベントにゲスト参加すると聞いて、でかけてきた。念願だった多和田葉子氏の詩の朗読も行なうという。

イベント開催時間より少し前に会場に到着。今日のイベントの主役である現代美術作家・木村友紀作品展を見る。木村さんの作品を見るのは、今回が初めて。海外旅行先の蚤の市等で手に入れた写真などを素材に、写真を平面のまま、額に入れたまま見せるのではなく、写真をテーブルに置いて、写真の上にモノ(石なんかですね)を置いて3次元空間を想像させたり、壁にかけた写真の前に花を配置して展示空間に奥行きを創るなどの手法が新鮮。繊細な写真に、石などのゴツゴツしたモノを置いたり、水分を発する植物を写真に接して配置するなどは、写真家にはできない(きっと、やってほしくないだろうなぁ)表現でしょうね。木村さんの作品は、時間やイメージが広がる、というか、歪むような錯覚感がおもしろかった。

今回は、木村さんからトークイベントの相手として多和田さんをリクエストしたのだそう。トークイベントの後に、すこしだけ多和田さんとお話しすることができました。うれしい!大学卒業とほぼ同時にドイツに渡り、以来ずっとドイツ(主にハンブルクと2005年からはベルリン)を拠点に執筆活動をしている多和田さんに、作品を書く時にどんな読み手を想像しながら(場合によっては想像しないで)書いているのか、聞いてみました。ドイツ語での作品も発表していますが、日本語で書く時に、多和田さんの記憶の中の日本人と現代の日本人は同じではないかも…と、素朴に尋ねてみたかった。

多和田さんの回答は、「自分の中にいる、もう一人の自分が読者」という返事。そして「暮らしている場所や国、言語が違うことで表層的な反応は違うかもしれないけど、この同じ時代に生きる人として、心の奥底で感じていることは同じだと思う…」。

ご本人は「わたしの読者は、二千人ぐらいかな」と言っていましたが、最近、読者層が急に広がっているように感じるのですが…、と聞いてみたところ、確かに読者層の広がりはご本人も意識しているようでした。

イベントの中で、「ジンシンジコ」(字はわからないので、とりあえずカタカナで)という詩と、もう一遍は、日本語とドイツ語で朗読。

会場で、初期の作品で翻訳本だけが海外で出版されていて、日本では出版されていない『Das Bad』(日本語タイトルは「うろこもち」。ドイツ語と日本語で書かれている)を購入。じっくりと味わいながら読もう。
多和田葉子さん


同じカテゴリー(映画・演劇)の記事
映画『華氏 119』。
映画『華氏 119』。(2018-11-18 15:35)


海野 尚史 HISASHI UNNO

アーカイブ