多和田葉子「溶ける街 透ける路」そして「母語の外へ出る旅」多和田葉子「溶ける街 透ける路」そして「母語の外へ出る旅」

1982年からドイツに暮らしている作家多和田葉子氏の本
溶ける街 透ける路」(日本経済新聞出版社)と
エクソフォニー-母語の外へ出る旅-」(岩波書店)を並行して読み終える。

溶ける街 透ける路」は、
多和田葉子氏が日経新聞で連載していた文章をまとめたもの。
2005年の春から2006年にかけて多和田葉子氏が
でかけた街と旅のエッセイである。

ノンフィクションの姿をしているが、どこか空想の話に
思えてしまう不思議な感覚が魅力のエッセイなのだ。
どこにも錨をおろしていない宙ぶらりんな視線、
身体は空っぽで意識だけで旅しているような感覚が
多和田葉子氏の文章の魅力。

エクソフォニー-母語の外へ出る旅-」の
タイトルでもある「エクソフォニー」とは、
自分を包んでいる母語の外側にでている状態をさすドイツ語。
先の不思議な感覚がエクソフォンな状態からくるものだとすれば、
米国から日本にやって来て日本語で作品を発表している
リービ秀雄やアーサー・ビナードを読んで確かめてみるのもおもしろい。
片岡義男にも「日本語の外へ」という作品がありますね。

・声が響いているということ自体の不思議さ
http://pct_web.tripod.com/topics_25.html


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