5月の「インタビューノート」で紹介した「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が始まった。SPAC芸術総監督・宮城聰さんの作品『黄金の馬車』が上演されるということで、初日にさっそくでかけてきました。宮城聰さんの作品を見るのは、2009年の唐十郎原作の『ふたりの女~唐版・葵上』以来4年ぶり。

 ・ふじのくに⇄せかい演劇祭 http://www.spac.or.jp/fuji2013_index.html
 「インタビューノート」SPAC芸術総監督・宮城聰さん http://interview.eshizuoka.jp/e1055583.html

会場は、日本平にある舞台芸術公園の野外劇場「有度」。夜7時30分の開演少しに前に野外劇場「有度」に着いたのですが、その頃には劇場の周囲は夜の闇に包まれて真っ暗。劇場の施設内だけに明かりが灯され、そこに若者、年配の方、カジュアルな服装の男性、オシャレに着飾った女性など、様々な種類の人が集まっていた。人混みの中からは日本語に混じって、英語やフランス語などの会話も聞かれ、すっかり非日常の雰囲気である。すでに会場全体が演劇の一部とでもいうような熱気に包まれていた。この非日常性こそが、演劇の魅力なんだろう。

黄金の馬車』は、ジャン・ルノワールの名作映画に着想を得た作品。室町時代、土佐に旅役者の一座が流れて来て、劇団は土佐の国司の前で古事記を上演することになる。その国司と女優が親しくなり、政治が混乱していく。演劇を語る言葉を持ちあわせていないので、上手く言葉にできないが、役者たちの躍動感溢れるカラダの動きや、力強くそして抑揚の効いた声から波動のようなエネルギーが伝わってくる。舞台の袖で奏でられる打楽器を中心とした演奏が素晴らしい。

「ストーリーは演劇の世界に入る滑走路でしかないから、内容が理解できたかどうかよりも、自分の中に上手く整理できないこころの動きが生まれればそれでいいんですよ」という宮城さんの言葉を思い出す。過去の引き出しには整理できない感情を収める新しい引き出しを創る、という宿題を宮城さんからいただいた気分になって会場を後にした。

   ▶SPAC - 静岡県舞台芸術センターブログ http://spac.eshizuoka.jp
ふじのくに⇄せかい演劇祭



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