「デザイン小冊子では、売れませんでした。」
ナガオカケンメイ氏が編集発行人を務めている小冊子「ディ・ロングライフデザイン」の最新号(20号)の編集後記で、上記の見出しに続いて、同誌がおかれている状況、課題、そして今後は休刊も検討していること、などがナガオカ氏の言葉で書かれています……▼ディ・ロングライフデザイン実際に売れているのは制作部数の約半分であること、「ロングライフデザインを考えた生活をしよう」という編集方針での(拡販の)限界…、文章からはナガオカ氏の思いが現実として売りにつながらないことのもどかしさやいらだちが伝わってきます。

「ディ・ロングライフデザイン」の発行を毎号楽しみにしている一読者としては突然の展開で、こちらも戸惑い気味。
わたしがもうひとつ楽しみにしている小冊子に、イラストレーターの大橋歩さんが発行している「アルネ」があります。


この二つの冊子は私の中では同じ仲間。
「ディ・ロングライフデザイン」はデザイナー・ナガオカ氏の、「アルネ」はイラストレーター・大橋さんの、それぞれの個人誌という括りでこれまで接してきました。

スタートも同じ頃で(アルネは現在23号)、どちらも小資本。書店流通も大手取次ぎではなく、スタッフ自らが直接書店さんにお願いして委託販売のかたちをとっていました。

内容も、アプローチは違いますが、どちらも“よいデザインのある暮らしの提案”が主題ですし、ストイックなデザインのテイストも似ていますよね。まったく関連はないと思いますが、紙質も製本も似ています。

で、一方の「アルネ」は販売も順調(一時期ほどの伸びはないと思いますが)だったのではないかな。

「ディ・ロングライフデザイン」と「アルネ」を読んだときに感じるのは、前者が作り手の思いをストレートに誌面に反映させているのに対して、後者は間接的に伝えている。

「アルネ」は読み終わった時になんとなく「そんな暮らしもいいな」という余韻が残る印象でしょうか。誌面に登場する方のお宅を大橋さんが訪問してご自身の言葉で紹介することが多く、とても親近感が湧きます。

「ディ・ロングライフデザイン」と「アルネ」の違いは何なのか。
そこに雑誌を育てていくためのヒントがありそうです。

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海野 尚史 HISASHI UNNO

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