
「雑誌が売れない一番の理由は、おもしろい雑誌がなくなったから」という至極まっとうな…といいますか、どちらかといえば、身も蓋もない意見がありますね。当事者である編集者などにとっては、素直に受け入れにくい話かもしれませんが、太田出版から少し前に創刊された『
LIBERTINES(リバティーンズ)』あたりを手にすると「本気になれば、まだまだおもしろい雑誌は作れるじゃないですか」と思える点で、そんな意見にも耳を傾けてみたくなります。
一見特集誌の体裁はとっていますが、この雑誌を一言でいえば「コラム雑誌」ではないかな。毎号、30〜40代を中心に、いま旬の書き手が1P〜2Pの読み切りのコラム「 LIBERTINES REVIEW」を書いている。この雑誌の編集者が、このコラム「 LIBERTINES REVIEW」にどれほど頭を悩ませて(楽しみながら)人選し、テーマを与え、原稿を書かせたか(笑)、その熱意と苦労のほどは、書き手の名前をみれば、伝わってきます。
ざっと名前を挙げてみると、フリー編集者の仲俣暁生、批評家でHEADZ主宰の佐々木敦、アートディレクターの寄藤文平、アーティストの森本千絵、クリエイティブディレクター谷山雅計や箭内道彦、ブックディレクターの幅允孝、音楽家の渋谷慶一郎、美術批評家の椹木野衣と松井みどり、コミュニケーションディレクターのさとなお(佐藤尚之)、評論家荻上チキ、東京R不動産の馬場正尊、ノギャルの藤田志穂、編集者後藤繁雄、社会学者の大澤真幸 etc…。
これらの方々のコラムがこの一冊で読める媒体は、雑誌ではもちろんのこと、ネット上でも探すのは難しい。さらに、各々書き手のコラムの内容はもちろんのこと、雑誌全体から編集者の意図する「企て」もひしひしと伝わってくるというもの。その「企て」こそが雑誌の魅力であり、個性であり、おもしろさ…だと思う。
参考までに、創刊以来の特集は以下のようなもの。
・創刊号特集:Twitter 最終案内 〜これは終わりか始まりか?〜
・2号特集:特集: Shop Culture 2010 カルチャーは店頭から生まれる
・3号特集: Asian Fashion Now アジアがファッションの中心です
・4号特集:「電子書籍によって読書生活はどう変わりますか?」
なかでも、創刊2号の 「カルチャーは店頭から生まれる」の切り口は新鮮でした。
そんなこんなで「LIBERTINES」を周囲にもPRしよう思っていた矢先に、『LIBERTINES(リバティーンズ)』のウェブサイトに
こんなお知らせが…。
「 リバティーンズ」は一旦休刊し、
誌名を変えてリニューアル、編集体制も見直します」
いやはや … 興味は、「 リバティーンズ」の行く末に移っていくのでありました。
(「 リバティーンズ」ウェブサイトより転載)・・・・・・・・・・・・・
『リバティーンズ』は『コンポジット』『インビテーション』等の編集長を務めてきた菅付雅信と、本屋大賞を立ち上げるなどの活動をしてきた嶋浩一郎が共同編集長、米津智之がADとして雑誌づくりににかかわってきました。毎号楽しみにしていただく読者も増えてきましたが、さらに多くの人に読んでもらえる雑誌を目指すべく、嶋浩一郎が単独の編集長に就任し、新しい編集体制で、カルチャー誌の発行を続けることになりました。菅付、米津は離れることになりますが、検索エンジンやネットの情報とは一線を画すオピニオンを前面に打ち出す読み応えのある内容とコンセプトは、新雑誌にも継承していきたいと考えています。