完璧なマニュアルよりも人の価値
「読者の感動と行動がお客さまの満足に、
 そして社員のしあわせへとつながる」

これは〈しずおかオンライン〉の社員ハンドブックの中に掲げている言葉です。

社内では朝礼で繰り返し読み合わせをしたり、企画やサービス内容を決める際に、この言葉に立ち戻って
「どちらの案が読者に喜んでいただけるか」
などと判断基準としています。

「繰り返し読み合わせをする」というのは、うっかりしていると読者やお客さまではなく「自分たちに都合のいい判断」をしてしまうから。ということで、常に忘れないようにするために読み合わせを続けているのですが……▼さらに各社員が担当する役割や仕事の仕組みづくりもしているのですが、自分たちで決めた約束事(ルール)でありながら、自分たち自身が実践するというのは思いのほか難しい。正直に言えば「予定通りいかない」「上手くいかない」ことのほうが多い。さて、あとは何をすればいいのか…。

リッツ・カールトン日本支社長の高野登氏の著書『サービスを超える瞬間』(高野登:著、かんき出版)を読みながら、上手く行かないのはさらにルールが必要だとか、ルールに問題があるのではなくて(もちろんそういう場合もありますが)、ルールを運用する私たち社員ひとり一人の心の在り方なのでは、と思いました。

「最高のサービスとは、豪華な設備でも完璧なマニュアル」でもなく“人の価値”であり、お客さまに対するのと同じように「社員同士がお互いを理解し合い、心から尊敬し合う」ことがリッツ・カールトンのサービス哲学なのだそうです。

そして、「紳士淑女をおもてなしする従業員も紳士淑女である」という考え方が社員教育の基本。

「コミュニケーション不足なんじゃない」という会話が社内でよく耳にすることの多い〈しずおかオンライン〉こそ、社員ひとりひとりが「お互いを理解し合い、心から尊敬し合う」姿勢が必要なのかもしれません。

「予定通りには行かないサービスの現場では、オーケストラのシンフォニーよりもジャズのジャムセッション(即興演奏)のようなアドリブが必要」そして、「誰かのアドリブに誰かが応じることで、お客さまの想像を超えたサービスが生まれ、それが感動を引き起こす可能性は高い」

「読者の感動と行動がお客さまの満足に、そして社員のしあわせへ」を実践する上で、参考になる気づきの多い一冊でした。

ただし「アドリブは、基本となるマニュアルをしっかりマスターしたうえで行えるもの」ということも、しっかりとおさえてありました。

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