『エスクァイア日本版』〜雑誌の寿命は広告集稿力で決まるふと気がつくと、会話の中で雑誌の話題がでるのは、自分と同世代か、少し上の世代の人との間だけになってきたような…。今日は、プロデューサー業を生業としているK氏(K氏も一回り上の世代)の口から『エスクァイア日本版』も休刊しちゃうみたいだね、どうして?」という話題になりました。

エスクァイア日本版』は、僕自身も20代後半から30代にかけて、よく買っていた雑誌。 創刊号を読んで編集部に送ったハガキ(当時メールなどはなかった)の中のコメントが『エスクァイア日本版』の新聞広告で使われ、記念品をいただいたこともあります(笑)。そんな、個人的にも思い出のある雑誌が休刊するようです……▼「どうして?」と聞かれても、弊社は「エスクァイア日本版』の発行元ではありませんので正確なところはわかりませんが、ひと言でいえば「売れていないから」という、いたってシンプルな答えではないでしょうか。

ブログ「デザインの扉」さんが「ライフスタイル・マガジンの先駆け、「エスクァイア日本版」が休刊」の中で書かれていますが、『エスクァイア日本版』の媒体資料によると、現在の発行部数は6万部、読者の平均年齢40歳、世帯年収1006.7万円、なのだそうです。

ざっと試算してみると、発行部数6万部に実売率(2007年の平均返本率35.2%から逆算して)64.8%を掛けて、さらに、販売価格700円に取次などのマージンを引いて残る売上が60%として計算すると、ちょっと強引ですが、販売売上額は16,329,600円となります。

発行部数の6万部が多いか少ないかは、基準によって判断がわかれますが、少なくとも販売収益1633万円で、これだけのクオリティの誌面を作る編集制作費、印刷費、人件費、その他の固定費をまかなうのは大変に厳しい。

この雑誌が黒字になるには販売売上以外の収益が必要になり、その多くは広告収益と考えられます。

「読者の平均年齢40歳、世帯年収1006.7万円」という「エスクァイア日本版」は、数多くの雑誌の中でもかなり優良な読者(スポンサーが自社商品をリーチさせたい生活者)に読まれている雑誌だといえます。

デザインの扉」さんによれば、「男性ライフスタイル誌で毎度平均世帯年収が1000万円を超えているのはこの『エスクァイア日本版』と『 GQ JAPAN』だけ。『 OCEANS』が1000万円弱、『LEON」は900万円前後」なのだそうです。

そんな優良な読者に読まれているのにもかかわらず休刊を決めざるを得なかったということは、この雑誌社の広告営業力でなんとかなるという問題ではなく、雑誌広告全体がおかれている状況判断によるものではないでしょうか。

創刊号の投稿が採用された時にもらった記念品は、本家「エスクァイア」で作品を発表していた作家ヘミングウェイが、ハバナ(だったと記憶しています)のカフェのカウンターで、くつろいだ様子でコーヒーを飲んでいるモノクロ写真。なかなか粋なプレゼントでありました。

※「『エスクァイア日本版』を復活させよう!」というサイトも立ち上がっています。
http://foreveresquire.seesaa.net/article/115060013.html

※「エスクァイア復刊応援 twitter」こちらは今話題のtwitter版ですね。
http://twitter.com/eskyjp

同じカテゴリー(本・雑誌)の記事

海野 尚史 HISASHI UNNO

アーカイブ