

スペインの
ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ロスのディズニーシンフォニーホール、ベルリンのDG銀行をはじめ、フランク・ゲーリーの建築は、こちらの予想を寄せ付けない大胆な発想で見るものの感情をゆさぶる。
静岡市のサールナートホールで上映中(〜8月3日)の映画
『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』は、
建築家フランク・ゲーリーの創作現場を映像におさめたドキュメンタリーで、天才?奇才?と呼ばれる建築家の作品が生まれるプロセスをかいま見せてくれます。
インタビューを受けるフランク・ゲーリーを終始リラックスさせて素顔を引き出し、ユーモアを交えながらも質問に対して彼自身の言葉で語らせることができたことがこの映画の一番の魅力だと思いますが、それを成功させたのが、この映画の監督シドニー・ポラックとフランク・ゲーリーの間に長年の友情と信頼関係があったからこそというのは、映画の中での二人の関係を見ると納得です。
私たちは、完成した独創的な建築物の姿やカタチについてあれこれ意味付けしたり、何かを語りたくなりますが、この映画の中で私が一番驚いたのはそのこと以上に、そんな建物が生まれるアプローチ。
手にしたボール紙を思いつくまま(のように見えます)にハサミで切って、ペタペタとテープで貼り付けながら模型のフォルムを決めていく。気になるところは何度も剥がして、また紙を切ったり曲げたりしながら貼り付けていく。
その様子は、「これが正解」という答えを求めているというよりは、その瞬間のフランク・ゲーリーの感情を上手く表現したカタチを探している、ような感じか。
ですから、感情が変わればフォルムも変わる。
ビルバオのグッゲンハイム美術館について、
地元の新聞記者が映画の中でこんなようなことを語っています。
「わたしたちがフランク・ゲーリーを選んだ。そのことがみんなの自信になった」
一方、良い建築が生まれる条件としてフランクゲーリーはこう応えています。
「よい施主と出会うこと」
どちらも
“何ができたか”よりも“誰と作ったか”が大事なんだ
と言っているように聞こえました。
この映画、建築に興味がない方でもモノづくりに携わる人であればきっと楽しめると思います。