同じ状況を目の前にしたからといって、誰もが同じことを考えるわけではないところが、ものごとをややこしくしたり、おもしろくしたりします。

先週行われた、第42期名人戦第2局、高尾紳路名人対井山裕太六冠の一戦。初日の大盤解説会に出かけてきました。縦横19本の線上に黒と白の石が置かれていくわけですが、(解説者によれば、途中の)「こんなところで?」という場面で、高尾名人、井山六冠、それぞれが長考。

次の一手を予測する金秀俊八段と巻幡多栄子四段の解説一つ一つで、盤上に並ぶ碁石が違う形勢に変化して見える。さらに、立会の武宮正樹九段がやってきて、金秀俊八段や巻幡多栄子四段とは、また別の読みを解説するなど、小さな盤上ですが奥は深い。打ち手の大局観が対局を進める初日はおもしろい。

「この手はダメですか」と聞いた巻幡多栄子四段に対して、「(局所で)ダメかどうか気にするよりも、進む方向が大事です」と、金秀俊八段は即答。ユーモアも交えて解説する金秀俊八段と、初心者目線で質問してくれる巻幡多栄子四段の掛け合いも楽しい大盤解説会でした。この勝負、146手で白番井山裕太六冠の中押し勝ちとなりました。

(局所で)ダメかどうかよりも、進む方向が大事です。




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海野 尚史 HISASHI UNNO

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