「都市から地方へ」国を挙げて移住促進を推し進めていることは、多くの方が認識していることと思います。とはいえ、転勤や結婚などを除いて、生活の場を変えることはとってもハードルが高い。

現実の移住はさておき「どんな街なら住んでみたいと思うか」について想像してみることは誰にでもできるし、「これからも住み続ける(であろう)街にどうなってほしいか」を具体的にイメージしてみることは悪くない。自分が魅かれる街と、他者が暮らしてみたい街の比較も興味深いしね。人口減を課題として抱えている地方都市の行政担当者にとっても気になるところではないか。

本当に住んで幸せな街:全国「官能都市」ランキング』(島原万丈+HOME’S総研、光文社新書)は、HOMO’S総研が2015年9月に発表した『 Sensuous City 官能都市:センシュアス・シティ・ランキング』と題されたレポートを一般向けに書き直した一冊。

この調査の興味深いところは、都市の魅力度を測る指標として官能(センシュアス)度を掲げているところ。「共同体に帰属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」「機会がある」「食文化が豊か」「街を感じる」「自然を感じる」「歩ける」などを指標として、都市の中で体験できる「他者との関係性」や「五感で感じる身体性」を可視化している。

アンケートでは、自分の暮らしている地域で、過去1年間に体験した行為の頻度を調査。例えば「地域のボランティアやチャリティに参加した」「買い物の途中で店の人や他の人と会話を楽しんだ」「カフェやバーで一人だけの時間を楽しんだ」「路上でキスした」「刺激的で面白い人が集まるイベントに参加した」「地元でとれる食材を使った料理を食べた」などなど。

従来の都市ランキングでは、起業のしやすさや商店街の充実、育児支援施設や介護施設の数や制度の充実、公共料金の価格など、施設や制度に重きを置きがち。「官能都市」ランキングでは、その街で暮らしている人の生活体験に着目している点で、リアルな暮らしがイメージしやすい。ところで、あなたは次に住むとしたら、どんな街を選びますか?

静岡市の官能都市度では、ロマンス度をもっと高めたいところ。本文中では「静岡市が総合12位と上位なのは意外かもしれない」と触れながら、浜松市との比較をしているので、興味があればぜひ読んでみてください。

米国の官能都市はどこだろうと、想像した時に真っ先に頭に浮かぶのはポートランド市。写真は、ポートランド市で人気のドーナツ店「Blue Star Donuts」。髭とノーズリングがよく似合うスタッフと官能的なドーナツ。
静岡市の官能都市ランキング総合12位は意外ですか?


静岡市の官能都市ランキング総合12位は意外ですか?





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