「君のリポートは正しいのだろう。良くできていると言ってもいい。ただし、私が欲しかったのは、データを並べて当然のように導き出されるリポートや結論ではない。『にもかかわらず、やる』『やらなければ、将来はない。そのために、なにをするのか』ということを、死ぬほど、考え抜いた報告が欲しかったのだ。その新規事業をやめるべきだという君のリポートは、一般論として正しいのだろうが、『にもかかわらずやる』という意志を経営者が持った時に、『どうするのか』といったところまで、考え抜かれていないのだよ」
IIJの鈴木幸一氏が連載している日経新聞のコラム(2月14日付)に、今から40年ほど前に、京都のある経営者から「情報通信分野に進出したいのだがいかがか」という宿題を出された時のことを書いていました。そして、鈴木氏の報告を受けた経営者の言葉を今でも思い出されることがあると、先の言葉を紹介していました。
後に、鈴木氏ご自身がIIJを設立し、インターネットの商用サービスを始めようとした時、親しくしていた多くの経営者がいろいろな現実的な理由をあげて「だから、ともかく、やめておきなさい」と相手にされなかったのだそうです。それでも、確信をもって始めてしまったこと、そして、ふと「にもかかわらず、やるのだ」と、京都の創業者の方に叱責された時のことを思い出したと振り返っていました。
鈴木氏の思い出に「そうなんだよ」とうなずく方は多いのではないかと思います。そしてそのような人は、「にもかかわらず、やるのだ」と周囲の意見を押しのけて始めた事業が、必ずしもうまくいくわけではないことや、現実には、成功するものはほんの一握りでしかないこと、しかも結果としてうまくいった事業も幸運が重なったから、としか振り返ることができないことも、痛いほどわかっている。それでも「にもかかわらず、やるのだ」と決断し、一歩を踏み出さない限り、新しい事業を生み出すことはできない。重要なことは、決断すること。経験やデータなどは過去のものでしかないのに、過去に捕まり、身動きできなくなってしまう。
既存のモノやサービスに対する需要は、いつか必ず飽和してしまう。どんなモノやサービスも、生産量は時間とともに増加し、やがて成長率は鈍化して、ゼロ成長となり、収束していく。そして、ある種のモノやサービスは、イノベーションによる「創造的破壊」により淘汰され、消えていく。そのようなことは頭では理解していても、それが自社の主力商品(手慣れた仕事のやり方も)となると、創造的に破壊していくことは耐え難く、問題を先送りしてしまう。わかってはいるのだけれど。
・しずおかオンライン1Dayインターンシップ【開催レポート】
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