「ほぼ日」と上場

いつか東京糸井重里事務所が上場したら、一口株主になって株主総会に参加したい…」とブログに書いたのは、いまから2年前。上場を目指す動機を語る糸井重里氏のインタビュー(『ハーバード・ビジネス・レビュー』(3月号))からは、いよいよカウントダウンの準備が整ってきたことが伺われます。

 「ほぼ日」は自由そうに見えて、不自由さも持ち合わせていて、物事を考えるサイズも、無意識のうちに小さな器に治めようとしてしまう。とてつもなく大きなことをやって世界に進出する野望があるわけではないが、(ある時から「この組織は、このままでは収まらないだろうな」と思えるほどの成長を実感しているにもかかわらず)、いまのままの小さなサイズで満足してしまっては、夢がない…などなど、いろいろな理由があるようです。糸井重里氏の言葉は、やさしいふりしてむずかしいですが、取締役CFO篠田真貴子氏が、つねに糸井氏の考えをわかりやすく伝えています。このおふたりは、とてもいい組み合わせなんだと思います。

「僕たちの組織はやることの“サイズ”が小さい」と語る東京糸井重里事務所の2015年3月期(第37期)の業績はというと、売上31億8,500万円、純利益3億400万円、利益率は約9.5%。中小企業としては、超優等生の部類に入るのではないでしょうか。売上構成は、人気の「ほぼ日手帳」は約50万部の販売実績ということなので、平均単価4,000円として約20億円。その他物販、イベント諸々で10億円といったところでしょうか。すでに十分大きなビジネスに思えてしまうのは、こちらのサイズの小ささ、ですね。

 先日、アルファベット社の新事業の業績が発表されました。収益の柱は、インターネット事業と広告ビジネス。新事業の医療・健康、自動運転車、ロボット、省エネ住宅などの分野は軒並み赤字でしたが、将来への成長期待は高いものでした。一方、糸井重里氏は、上場で集める資金を使って、何に投資しようと考えているのでしょう?その時の株主との関係は?いろいろ想像してしまいます。

 上場の実現に向けて入社した取締役CFO篠田真貴子氏は、上場にくわえてもうひとつ、「糸井重里事務所という会社を、糸井重里という人間がいなくなった後にどのように存続させるか」という大きなテーマを与えられているのだそうです。糸井重里後の糸井重里事務所の継続的な成長をどのように描くのか、それらをどのような組織で実現しようと考えているのか…。まだまだ興味は尽きません。
 
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