第3回目となる「リノベーションまちづくり@静岡」(第2回目はこちら)にでかけてきました。講師は、JR北海道の岩見沢複合駅舎を設計した建築士・西村浩氏。テーマは「発明の時代へようこそ!21世紀の新しいまちづくり」。
 2009年にグッドデザイン賞を受賞したことで知られる岩見沢複合駅舎は、レンガとガラスでできたモダンな建築。現代的でありながら、ぬくもりも感じられるデザインが特徴的。写真でご覧になられた方も多いのではないかと思います。なかには「らぶりっく!いわみざわ」という市民参加による岩見沢レンガプロジェクトを思い出す方もいるかもしれません。
 岩見沢複合駅舎のコンセプトは、“デザインがまちを変える”。西村浩氏の話では、ハードとしての駅舎はあくまできっかけで、市民参加プロジェクトによる市民と駅舎の関係づくりや、市民が駅舎に、散歩やお茶にでかけしたり、駅舎からの岩見沢のまちの眺めをデッザンしたくなる…、日常の暮らしのなかで市民がふらりと駅舎に足を向けてしまう、そんな“でかけたくなる動機づくり”を意識したそうです。“モノ”ではなく“コト”のデザイン、といえるかもしれません。
 もうひとつ、西村浩氏が関わっている佐賀県の「わいわい!コンテナ」プロジェクトでは、市街地に点在する空き地や駐車場を原っぱに変えることで、街中に賑わいをつくりだす実験の様子を紹介。こちらのコンセプトは「空き地が増えれば、まちが賑わう!」。“空き地”と“賑わい”という、一見相反してみえるものをプラスに転換する、その発想がユニークだと思いました。
 これまでのイベント主体のまちづくり、にぎわい創出も必要ですが、それらが一過性の、限定的な効果で終わりがちなことを、わたしたちは経験的に知っています。岩見沢複合駅舎や「わいわい!コンテナ」プロジェクトは、従来のやりかた、過去の価値で未来の価値を考えるのではなく、「未来のことは、未来の価値で考える(発明する)」ことで、“まちにでかける動機をつくる”ことが、持続可能な街につながることを教えてくれます。
 商店街の一角、半径300から500メートルほどの狭小エリアから、自分たちの手で街を変えていこうという「リノベーションまちづくり」をきっかけに、全国各地で「まちに出かけたくなる動機」が次々に発明されています。西村浩氏も参加している、静岡市清水区のウォーターフロントや清水駅周辺の中心市街地に、どのような価値で、どのような未来がつくられるのか、とても楽しみです。

まちにでかける動機をつくる。




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