旅行ガイドの出版やウェブメディアなどで、創業以来、静岡県内の観光情報を扱ってきましたが、実は「観光」を「産業」として意識したのは最近のことでした。きっかけは、2008年のリーマンショック。世界の観光ビジネス市場の統計数値を調べている中で、多くの業界が低迷しているのにたいして観光市場は減少していないだけでなく、アメリカ同時多発テロやリーマンショックの年でさえも世界全体の観光旅行者数が増加し続けていることを知り、とても驚きました。海外旅行に出かける余裕はない、とか、しばらくは飛行機には乗れない…という空気感があったにもかかわらず、数字をみてみれば世界の観光人口は安定して右肩上がり。時間はかかりましたが、産業として「観光」をとらえるきっかけになりました。
今は、東京オリンピックというわかりやすい目標ができたことに加えて、昨今の円安も追い風になり、2020年までに訪日外国人観光客を2000万人にするという目標も実現しそうな勢いです。この状況が続けば、日本は順風満帆に観光立国に脱却できそうに思われますが、この6月に出版された、京都在住で、元ゴールドマン・サックスアナリストのデービッド・アトキンソンさんによる『
新・観光立国論』によると、わたしたちは「観光」について、まだまだ理解できていないようです。日本人が観光ビジネスで大切だと考えていることや観光施策が実はずれていることを、さまざまなデータを使いながら説明していくのですが、著者は元経済アナリストだけあって、その指摘は納得できるものばかりです。
冒頭で、世界中の国が指標としているGDPがいかに人口の影響を受けやすいかを説明し、「短期移民」(=短期間だけ日本に滞在し、消費活動をしてくれる観光客)を増やすことを提言。人口減少を補うほどのGDPを押し上げるために、生産性の向上や女性活用だけでは実現が難しく、成長産業としての観光産業の重要性が示されています。
著者によると「観光立国」の条件は、「気候」「自然」「文化」「食事」の4つ。そして、「観光資源」として何を発信するのか、外国人観光客(=お客さま)のニーズとビジネスの視点、「観光立国」実現に不可欠なマーケティングと観光ロジスティクス、コンテンツなど、「観光」を「産業」として分析してわかりやすく整理されています。
平成25年に全国第2位の人口減少県となったわたしたち静岡県民にとっては、日本が「観光立国」になるだけでなく、静岡県が強い「観光立県」(「観光立国」の4条件を満たしている!)になってほしいものです。そのためには何にとりくまなければならないのか…そんなことを考えさせられました。
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