教養(リベラルアーツ)と合意形成

今から約10年前、静岡市の静岡県男女共同参画センター「あざれあ」で開かれた「東海電子自治体戦略会議2005」の基調講演で登壇したのが、TRONプロジェクトのリーダーで東京大学教授・坂村健氏だった。テーマは、「人間社会を高度に支援するユビキタスコンピューティング」。

この時の坂村健先生のお話で、いまでも強く印象に残っているのが「技術はこれからも進歩するが、そこで得た技術でどんな社会を作ろうとするのか。それを判断する時に重要なのが教養である。3年先、5年先のことを決める時に、教養など役に立たないと思うかもしれないが、30年先、50年先のことを決めるとき、そして、その新しい技術が社会にどんな影響を与えるのか予測がつかない時の判断に、教養は不可欠である」(うろ覚えだが、こんな主旨だったと思う)というお話。それから、理系偏重の社会や大学教育のことも心配されていた。

それから10年。坂村先生の声がようやく世の中に届いたのか、今年に入って教養(リベラルアーツ)が見直されているようである。最近でも『Think!東洋経済』が「なぜ世界のエリート達は、リベラルアーツを学ぶのか?」という特集を、『日経ビジネスアソシエ10月号』では、ズバリ「仕事と人生に差がつく教養入門」という特集を組んでいる。

背景にどんな変化がおきているのかはわたしの知るところではないけど、企業においては、「事業環境の変化が早く、予測も難しい中で、ブレない意思決定をするためには、自分なりの価値体系が大きな助けとなる」ということだろう。また、「多様な人材・文化を理解し、社内に受け入れ、そこから新たな価値を創造していく上でも、教養がものをいう」ということももっともである。

実際、わたしたちのような中小企業においては、30年先、50年先どころか、1年、2年先の予測さえ難しい。ましてや新規事業など、利益計画は作るものの、ささやかな外部環境の変化で計画そのものが簡単に吹き飛んでしまう。

そのような日々の業務の中で、過去の成功体験を捨て、やり方を変え、新しいことに踏み出すには、社内の合意をとることに大きなエネルギーを要する。そして、合意形成がうまくいくかどうかは、関係者がどんな価値観の持ち主であり、思考性を持っているか、が重要なのだと思うが、それがまた難しいのが中小企業の苦しいところなのではないだろうか。


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