わたしがおつきあいさせていただいている方の中で、最高齢がWさん。70代半ばかな。元書籍販売会社の役員だった方で、いまでも大変な読書家。そのWさんが主宰している集まりが昨晩あり、そこで電子書籍についてお話しさせていただいた。

この集まりには、わたしも年に2回ほど参加させていただいている。昨年は宇宙科学研究所(ISAS)勤務で、小惑星探査機「はやぶさ」の広報を担当していた方の「はやぶさの帰還は、どれほど快挙か」という熱のこもった話がおもしろかった。

で、今日は「電子書籍」のお話。「はやぶさ」にはかなわないけど、身近な話題として興味をもって聞いていただけたと思う。参加者は9名、平均年齢は70歳を超えている(たぶん)。わたし的には「電子書籍は、年配の方にどう受け止められているか」を、直接知ることのできるまたとない機会だった。

話を始める前に、これまでに電子書籍といわれるものを見た(「読んだ」ではなくてね)ことがあるか聞いてみたところ、一人をのぞいてみなさん未体験。携帯を持っていない方もお一人いた。「やっぱり読書は紙の本がいい」「いまさら新しい機械の操作を覚えるというのもね〜」と、やんわりと否定的な声が多数。

そんな中で、一人だけ「小冊子をスキャンしてPDFにして、iPhoneに入れて持ち歩いています」という方が。つまり「自炊」。この方(女性)は、アマゾンの有料会員にもなっているそうで、アマゾンでの購入体験がいかに簡単で、早く、送料無料で便利か、アピールしてくれた(ブランディングの成功例ですね)。やっぱり、世代でひとくくりにとらえてはいけない、いけない。

で、持参したiPadとiPhoneを使って、実際の電子書籍、電子書店、 電子本棚を見ていただいた。反応がよかったのは、文字の拡大や文字の読み上げなどの、実際的な機能。そして、みなさんが想像していた以上に「操作が簡単」ということ。途中からは「これなら、自分にも使えそう」という声に変わっていった。

後半は「電子書籍端末に何冊の本が入るのか」という質問に続いて、「我が家の蔵書をどう処分するか」という話題が一番盛り上がった。

みなさんたいへんな読書家とみえて、家の中の蔵書の行く末について悩まれていた様子。電子書籍端末に蔵書を保管できれば、 どうしてもモノとして残しておきたい本以外は、すぐにでもデータ化したい…とのこと。ここで盛り上がるのは、まったくの想定外であり、今日一番の発見かな。

それにしてもWさんの「昨年新古書店のBOOK ○○○に、軽トラック2台分の本を買い取ってもらって5000円でした。岩波文庫も○○全集もそろっていたのに…」そして
「今は本の行き先がないんです」という一言に一同から大きなため息がもれた(気がした)。

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