世田谷文学館にて。『平凡パンチ』『アンアン』『BRUTAS』から『血と薔薇』『いりふねでふね』などの雑誌のアート・ディレクションや書籍の装丁、絵本作家など、幅広い創作活動を繰り広げた堀内誠一氏の作品展を見てきました。

堀内誠一といえばエディトリアルデザインの分野で素晴らしい仕事を数多く残していますが、旅先のイラストとエッセイの作品が個人的にとても好きですね。本企画展を見ながら再確認しました……▼『週刊平凡』で連載した「ウィークリー・ファッション」と、初期『アンアン』でのページをスライドで上映しています。

モデルを使い、ロケを行った企画が多いのですが、それらのページに共通しているのは、1枚1枚の写真の完成度の高さはもちろんのこと、それらを組写真にすることで、新しい物語を生み出していること、モデルのユニークな表情とその組み合わせ、写真に添えられたウィットに富んだコピーなどで、メルヘンのような世界に仕上げている点。

今見ても読者の気持ちを惹きつける力があります。単にクリエイティブでおもしろいことをやっていたというのではなく、ファッションページを見る読者自身が同じ世界を体験したくなる、結果としてモデルの衣装や取り上げているブランドのPRにしっかりとつながっています。

想像できないほどの仕事の量と高い質の仕事をしていたわけですが、堀内氏の活躍していた時期にはDTPなどはなく、すべて手仕事の時代。会場にはペンを使って雑誌『BRUTAS』のロゴを制作するの過程を展示したコーナーもありました。

「雑誌が売れないのは、ネットやケータイなどのせいではなく、雑誌がおもしろくないから」という声も聞きます。

DTPが登場し、写真加工も用意になり、デザインの世界も随分と便利になりましたが、それらは想像力を広げるのではなく、結果としてデザイナーにおいては無意識のうちに制約となって働いていることも多いのではないでしょうか。

本当に大切なことは、創り手の発想であり、想像力。それをカタチにする技術。
堀内誠一氏の手仕事による作品を見ながら、そんなことを感じました。

消費の質と中身が変化し、ネットやモバイルメディアなど複数のメディアに常時つながることのできる環境になりました。雑誌も環境変化に対応して、新しい発想で情報を表現する必要がありそうです。

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