静岡経済研究所の発行する「
SERI」(2017年6月号)で、「
人口減少時代の“まちなか”再生」について特集していました。今年4月の新聞記事で、静岡市の人口はいよいよ70万人(推計69万9421人、2017年4月1日現在)を割ったことを知った方も多いことと思います。全国20の政令指定都市で最も人口が少ない静岡市。厳しい現実を冷静に受け止めて、希望の持てる未来を描き、行動を起こすためには、それが、誰のためでもなく、私たち一人ひとりの問題であることを自覚することが起点になるのだと思います。
「SERI」6月号の特集では、コンパクトシティ化を軸にした中心市街地の再生について先行事例を紹介しています。コンパクトシティとは、街が郊外へ拡大することやスプロール化を抑え、商業や行政サービスなどの機能を中心部に集約することで、インフラ整備・維持管理コストを抑えながら効率的な生活と行政を目指す街づくりのこと。それらを実現するためには、街の機能を中心市街地に回帰させる必要があり、ハード整備がともなうので、時間も費用もかかります。実際には、市街地近隣の農地の転用・宅地造成が進んで、さらに市街地の空き家が増え、スプロール化が進んでいるように見受けられます。
賑わいを取り戻している先行事例のポイントは、「ストックを活かす」「よそ者(若者)を巻き込む」「個性あるまちづくりを進める」の3つ。「個性あるまちづくりを進める」とはソフトの強化、「よそ者(若者)を巻き込む」とはプレイヤーを変えること、「ストックを活かす」とは価値変化、町の再編集ということ。時間もお金もかかるハード整備ではなく、ソフトに軸足を置いている点が、小さくても着実に変化を生み出している要因のようです。それから、行政ではなく民間がけん引役になっている点も、従来の助成金ありきのまちづくりには見られない動き。税収が減る時代に入り、民間の役割はますます重要になります。
写真は、京都・祇園の近く、建仁寺から徒歩数分ほどのところにある「
あじき路地」。大正時代に建てられた築100年ほどの町家長屋をリノベーションして、全国から集まった若い作家さんたちが、アクセサリー店や照明の店、帽子店、三味線工房、ドライフラワー店、焼き菓子やパン屋など、ものづくりをしながら暮らしています。安食弘子さんという大家さんが個人で始めた取り組みが、今では京都の人気スポットに!静岡市でも老舗染物屋の3代目、望月誠一朗さんの「
パサージュ鷹匠」などの事例も生まれています。まちづくりの一番の原動力は、個人の志と熱意、そして行動力なのかもしれません。