「あなたは30代に寝てないから…」

最近、ますます物が覚えられなくて、と、ぼそっと
こぼしたときの奥さんの返事。そして

「脳のヒダがつるっとしちゃったんじゃないの」(笑)

笑いごとではありませんが、確かに寝た記憶のない30代。中期経営計画の資料を見ながら、久しぶりに創業(フィールドノート社)当時から振り返ってみたのですが、ぼくの30代といえば、32歳で起業してから40代に突入するまでの創業期とピタリとかさなる。

毎週末は取材にあて、平日の昼に広告営業、
夕方帰ってから先週末取材分の原稿書きと、翌週の取材リストや資料づくり…

会社としての体もなしていない、ただただ、がむしゃらな時代。
寝る暇もなかった、前のめりの
(もう二度と繰り返せない、そして社員にも同じ思いをさせたくはない)
時代でした。

そのようなことは創業者の宿命でありますから、誰のせいでもありません。

ぼくの記憶力が、悲しいほどに弱っていても、
もちろん、それはぼく自身が引き受ける問題であります。

中期経営計画発表会の朝、当時の資料を横目にそんなことを考えつつ
ラジオを聞きながら朝食を食べていると

ボブ・ディランの「ドント・シンク・トゥワイス・イッツ・オール・ライト」
が流れてきました。

  「腰をおろして考えこんだってどうにもなりゃしない
    しょうがなかったことなんだ
                :
   くよくよしてもはじまらない、これでいいんだ…」
             (作詞:ボブ・ディラン 訳:片桐ユズル)
  と歌うボブ・ディラン。

アルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に入っているこの曲は、
当時、頭の中をいつも流れていた曲、
自分を鼓舞するときのテーマソング。

滅多に振り返ることのない当時の資料に目をとおしているときに
そのころの自分のテーマソングがかかるなんて…

ラジオの曲が終わった後、CD棚から久しぶりに取り出して
『ドント・シンク・トゥワイス・イッツ・オール・ライト』
を最初から聞き直す。

昨日は、それから中期経営計画発表会へと向かったのでありました。

※こう書くと、大変さばかりが印象づけられますね。
創業期は、その時にだけ経験できる素晴らしいこともたくさんありました。
いいわけみたいですが…(笑)

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