先日開催された静岡県観光協会創立70周年記念式典で講演されたデービッド・アトキンソン氏の予測では、日本の観光潜在能力は5,600万人(世界第4位、政府はその7掛けの4000万人に目標設定)。英国のEU離脱による円高で、短期的には訪日観光客への影響は免れないと思いますが、中長期的にはデービッド・アトキンソン氏の予測が当たって欲しいものです。
英国人のデービッド・アトキンソン氏は、創業380年の、国宝や重要文化財などの修復事業を専門とする小西美術工藝社の代表に就任したことで話題になりましたが、今ではそれ以上に、ベストセラー「新・観光立国論」(東洋経済新報社)の著者として知られ、日本のインバウンド観光事業推進の旗ふり役として活躍中。もともとソロモンブラザーズ証券やゴールドマン.サックス証券で金融アナリストとして活躍していただけあって、先日の講演でも、数字を根拠にした日本の観光力の分析、稼ぐ観光に関する提言にはリアリティがありました。
そのデービッド・アトキンソン氏によれば、観光立国を満たす4条件は「自然」「気候」「文化」「食事」。さらに、四季や環境(雪、ビーチリゾートほか)などの多様性が加われば、一年を通じて多くの観光客を引きつける可能性が高くなる。外国人観光客数が年間3700万人の氏の母国、英国に対して、フランスが倍以上の年間8300万人もの観光客を引きつけているのも、上記4条件+四季や環境の多様性の違いだとか。そして、日本はそれらの条件を満たす潜在力を持った数少ない国の一つであると説明していました。
2014年の世界の観光客数は11億3300万人。観光産業は、世界のGDPの9%、輸出額の6%、サービス産業輸出額の30%、そして、雇用の11人に一人がなんらかのカタチで関わる大きな産業であり、成長産業でもあります。2000万人の観光客が毎年来て、日本に1週間滞在すれば、年間で40万人の人口が増えたことと同じほどの国内消費額になるという試算もあるほど。
デービッド・アトキンソン氏の話に一貫していたのは、取り組むべきは「稼ぐ観光」。地方が「観光」を産業として成長発展させるためにも、足元の観光動向を計数で把握することが最初の一歩。行政も観光協会も把握していない、地域内の観光者の動向や観光消費の実態を、できるだけ正確につかむことが、いま必要なことだと思います。
しずおかオンラインでは、地元行政と連携して運営している、静岡県中部地区(静岡市、焼津市、藤枝市、島田市)の無料Wi-Fiポータルサイト「
しずぱす」や、東部地域(伊豆・三島)の「
いずぱす」などを利用して、それらの可能性を探ってみたいと考えています。