所用があって熱海に出かけたついでに、旧日向別邸を見学してきました。写真では見えませんが、左手前に真鶴半島が、その先に三浦半島、房総半島と続き、正面に初島が浮かんでいます。右奥には大島がうっすらと見える。建築家・渡辺仁氏が設計した旧日向別邸のリビングに立つと、相模湾を一望するこの景色を独り占めしている気分になります。昭和初期に別荘地として売り出された熱海の一番の魅力は、この素晴らしい風景だったのでしょうね。
 写真の芝生の庭園の地下には、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトが手掛けた日本に現存する唯一の建築、通称「熱海の家」が隠れています。白壁の階段を地下室に向かうと、正面に真竹の華頭風の格子が現れ、入口左手にホワイエが、そして右側に、手前から社交室、洋風客間、十二畳和室が配置されています。
 三つの空間は微妙な角度で接続されていて、立つ位置によって次の間の空間が水平に変化します。一方、洋風客間と和室にある階段から見る眼前に広がる太平洋は、階段の高さによって水平線の位置が垂直に変化して風景が一変。「熱海の家」の中を移動していると、自分も建物も周囲の山や自然に溶け込んでいる感覚になり、そこにこの建築の魅力を感じました。モノとして主張する建築ではなく、環境と調和することで価値が生まれる建築。『反オブジェクト―建築を溶かし、砕く』 (ちくま学芸文庫) の中で隈研吾氏が語っている、建築は「オブジェクトではなく関係性」とは、そういう理解でよいのでしょうか。
 わたしたちの身近な建築の関係性ということでは、環境としての街に対する反オブジェクト的住宅とはどんな建築なんだろうかと、興味が広がります。そういえば、隈研吾氏が参加しているといわれる新国立競技場A案「木と森のスタジアム」が、JSCに推薦されたとか。神宮の森と調和する巨大な反オブジェクト的建築として、その姿を目にしてみたいですね。
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