タンザニア商人を研究対象とする文化人類学者の本『チョンキンマンションのボスは知っている:アングラ経済の人類学』(小川さやか著、春秋社)。「誰も信頼できないし、状況によっては誰でも信頼できる」という、原始的な交易条件のもとで機能するアナログなシステムに興味が惹かれました。他者の「事情」に踏み込まず、メンバー相互の厳密な互酬性や義務と責任も問うことなく広がっていくネットワーク内の人々が、互いにそれぞれの「ついで」にできることをする。「責任を帰す一貫した自己などない」という前提に立つことで、ある種の寛容さ(個々の行為の帰結を人物評価ー自己責任ーに結びつけて語らない)となるというのは発見でした。





自分の中にある自覚していない偏見や差別意識。どこにでもいるような普通の女性が、職場や家庭で当たり前のように背負わされる理不尽を描いた韓国のベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)。

物わかりのいいリベラルな人間にみえる主人公の夫や、主人公が通う精神科の専門医の言葉に垣間みえる偏見は、自分も彼らと同じくらい無神経なことをしていることに気づかせてくれます。日本の女性との共通点も感じられる主人公キム・ジヨンはさることながら、主人公の母親の韓国的なパワフルさ、バイタリティも印象に残りました。映画『82年生まれ、キム・ジヨン』は、10月9日(金)から静岡シネ・ギャラリーで上映されますね。

・静岡シネ・ギャラリー公式HP
 http://www.cine-gallery.jp/nextmovie_1.html#109





サイのマークが印象的な出版社晶文社の創業者の一人であり、編集者、ウィリアム・モリス研究者としても知られる小野二郎の活動を紹介する「ある編集者のユートピア」展に出かけてきました。会場の世田谷美術館は、2017年に開催された「花森安治の仕事 デザインする手、編集長の眼」展以来なので、2年ぶりです。

同展は、「ウィリアム・モリス」「晶文社」「高山建築学校」の3部構成で、各テーマに合わせた講演会も開催。そのうちのひとつ、晶文社の元編集者で取締役を務めた津野海太郎氏による「陽性の親和力の運動」の回を聞いてきました。

会場には、元同社の編集者だったらしき方をはじめ出版関係者も多く参加していたようで、質疑応答の際には、晶文社と作家とのつきあいや、同社の装丁を手がけているデザイナー・平野甲賀氏との出会いなどに関する質問も出て、興味深い話を聞くことができました。

往年の晶文社の社内事情については、津野海太郎氏の著書『おかしな時代』(本の雑誌社)にも書かれていますので、興味のある方はそちらをおすすめします。














「イエタテ夏号」東部版・中部版を発行しました。特集は、先輩施主さんに学ぶ「私の家づくり体験記」。

「家を建てる機会は、一生に一回」という方がほとんどだと思います。初めての大きな買い物になる家づくりは、工法、素材、間取り、動線、インテリアなどから、お金の工面、将来の家族構成の予想などなど、決めたり考えたりしなければならないことが山積。

家づくりには「正解」があるわけではありません。だからこそ、プロセスを知ることが大切になります。一つ一つのプロセスを理解しながら進めることで、納得のいく家づくりができるのではないかと思います。

そこで頼りになるのが、先輩施主さんによるアドバイス。実際に家を建てた先輩施主さんたちが体験した、家づくりの「きっかけ」「進め方」「その住宅会社を選んだ理由」「実際に住んでみての感想」 etc…。「イエタテ夏号」では、そんな先輩施主さんたちの家づくり体験談を特集しています。

・家づくりに迷った時は「イエタテ相談カウンター」にお気軽にご相談ください!










静岡市内を流れる興津川、安倍川、藁科川の上流に位置する山里を取材・紹介する冊子『はじめてのオクシズ』(静岡市中山間地振興課)。五月晴れの休日の、ちょっとしたお出かけにぴったりのスポットです。

弊社スタッフは幾度となく取材している地域ですが、毎回新しい発見があるようで、『はじめてのオクシズ』には、旬でディープなオクシズ情報が紹介されています。

鎌倉時代から続いているという奥藁科・大川地区の在来蕎麦は、一度は味わってみたいですね。









「商品を売るのではなく、ライフスタイルを売る」「モノからコトへの消費」「店をつくるのではなく、街をつくる」 etc…。この9月に発売された『セゾン 堤清二が見た未来』(鈴木哲也、日経BP社)では、平成時代に聞き慣れたスローガンのルーツが、セゾングループを作り上げた経営者で小説家でもある堤清二氏によるものであることが描かれています。

ほしいものが、ほしいわ。』(1988年、糸井重里)は、セゾングループの中核企業だった西武百貨店の広告ポスターで使われた広告コピー。昭和の終わりにつぶやかれた言葉ですが、平成が終わるいま、消費のカタチは、当時以上に大きく変わりつつあります。『セゾン 堤清二が見た未来』を読みながら、今の時代の消費の現場を見て、堤清二氏ならどんな言葉で表現するだろうかと、考えてしまいました。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

静岡県の IT業界研究イベント【SOL-TECH for Students】第2回を開催します!
【SOL-TECH for Students】は、IT業界やシステムエンジニアに興味のある大学生、高校生、専門学校生に向けて、静岡県内で活躍するIT業界のシステムエンジニアや担当者が、実際の仕事の現場や面白さ・やりがい、などを直接伝えるためのイベントです。

・日時:2018年11月30日(金) 18:30~20:30
・会場:静岡市産学交流センター 演習室1
・参加費:無料/私服参加
・参加企業:順不同 / 敬称略
      〇株式会社オープンスマイル
      〇株式会社ハンズ
      〇株式会社しずおかオンライン  ほか
・主催:株式会社しずおかオンライン

【詳細および申し込みはコチラから】
 https://www.esz.co.jp/blog/2735.html



人材採用の場面などで、ここ数年「コミュ力」(コミュニケーション能力)が社会人の必須スキル?のように語られることが増えました。裏を返せば、人との会話や意思疎通を円滑におこなうことが難しい世の中になったということでしょうか。志向や背景も多様な人たちと上手に会話し、次々と生まれる新しいメディア上で最適なさじ加減で情報発信することは簡単ではありませんし、ましてや、相手の本心をつかむことはとても難しい。

誰もが嘘をついている』(セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著、光文社)は、元グーグルのデータサイエンティストである著者が、検索データを解析しながら、私たちの欲望と嘘についてまとめた一冊。SNSなどでは「よく思われたい」という気持ちが勝って、基本、適度に“盛って”、ツィートし、写真をアップする。アンケートなどは忖度を働かせた上に見栄も加わって、本心では答えない。それら「言動」に比べて、「行動」(匿名の検索窓に打ち込むワード)は正直という。

「男女の性的な悩みや願望」「一般的にいわれる米国の人種差別傾向が強い地域と実際に人々が人種差別的内容を検索する地域」「名門校にギリギリで合格した人と落ちた人のその後の人生に与える影響」「借金を返す人と返さない人の言葉の違い」「暴力映画が封切られたら犯罪は増えるのか減るのか」「多くの人が広告を見るほどその製品は売れるのか」…。さまざまな事例を取り上げ、検索データをもとに、私たちの本心や欲望が統計学的に検証されていきます。

これまで根拠もなく「そんなものかな」と信じてきた「通説」や「直感」「常識」などが「思い込み」にすぎないことを白日のもとに。まさに、検索は口ほどに物をいう。男女は相手にどのような言葉で話しかけているときに「興味がある」のか、という分析も興味深いものでした。手にすることのできるようになった大量のデータを、どのように可視化し、そこから何を読み取るのか。そこが重要になりそうです。

写真は、アイデアがビジネスに成長していく過程をシンプルに整理したシアトル歴史産業博物館(MOHAI)の展示。取り上げられているのは、スターバックス、マイクロソフト、アマゾン、Glassblowing Studio、アウトドア用品のREIなどの地元企業。ジャンルもサービスも様々な企業の、成功の要素と成長のプロセスを比較できて、シンプルだけど本気になって見てしまいました。情報をどのように整理して表現すれば、人は興味を持って見ようとするのか。データビジュアライゼーションに取り組んでいる知人のOさんの言葉を借りれば、まさに「情報のダッシュボード化の価値が高まっている」と思います。






建築家・山本理顕氏の本というと難解なイメージがありますが、本書『脱住宅ー「小さな経済圏」を設計する』(山本 理顕・仲 俊治、平凡社)は、自身が手がけた集合住宅の事例を写真を使いながら、彼が考えてきたことを解説していることもあり、比較的わかりやすい内容でした。

戦後登場した「核家族」という家族形態とサラリーマン世帯の増加などに対応するために、主に都市住人向けに供給された公営住宅・公団住宅。それらが全国に広めた「一住宅=一家族」という居住システムは、1951年の公営住宅法の施工から半世紀以上を経過し、そろそろ限界にきているのではないか。社会環境、家族の形(単身・高齢者世帯の増加ほか)、働き方の多様化など、私たちを取り巻く社会全体が変革期を迎え、「一住宅=一家族」に変わる居住システムの必要性と提案が本書のテーマ。

プライバシーを重視して、家族の再生産を前提とした「一住宅=一家族」。閉じられた空間の中での「私生活」…という幸福の場の受け皿として機能してきた住宅に変わるものとして、住宅と街の境界線を曖昧にした(用途を複合させた)中間領域を持ち、住宅をコミュニティに開き、仕事や小さな商売(小さな経済)空間を共存させた、街とゆるやかにつながる住居。
 
紹介されているのは、「東雲キャナルコート一街区」(東京都江東区)などの大規模集合住宅のほか、 「食堂付きアパート」(東京都目黒区)、「五本木の集合住宅」(東京都目黒区)などの小規模なもの(職住一体の3戸)まで、さまざま。仕事場にもできる住居や周辺住民にも開かれた食堂、シェアオフィスなどを内包した住居は、たんに交流の場というだけでなく、そこから生まれる小さな経済圏こそが、コミュニティの持続可能性において重要な役割を果たすという視点は現実味があります。「ソウル江南ハウジング」(韓国)の共有スペースの菜園化の事例には、豊かな暮らしのひとつの姿をみる思いがしました。

『脱住宅』では集合住宅を事例に「一住宅=一家族」に変わる居住のカタチを取り上げていますが、同様の課題は、一戸建て住宅においても(こそ)議論が必要かもしれません。構造の安定や劣化の軽減、耐震耐火、温熱環境、省エネなど、住宅性能の向上は必要不可欠として、それらにより、これまで以上に長期にわたって使われることを目標とした住宅は、その年月におこると想定される環境変化(家族の人数、年齢、働き方、趣味嗜好、デザインの好み、コミュニティとの関わりなど…)にも適応できる家であることを前提としておきたいもの。「一住宅=一家族」に変わる戸建住宅の新しいカタチについては、まだまだ議論が足りないように感じられます。

仕事場や小さな商売空間を共存させた住宅といえば、江戸時代の商家や農家を思い浮かべます。写真は、今年5月、秋田市に出かけた際に見学した旧金子家住宅。玄関脇の間が商売スペースとなっていて、ここで呉服や足袋などの卸業を創業。昭和50年ごろまで、ここで商いを営んでいたそうです。




・・・・・・・

・「イエタテ相談カウンター」住まいのカタチも、お気軽にご相談ください!
 https://www.sumailab.net/counter/







お客さまの利便性向上を背景に、流通事業者に「運び方改革」を促すきっかけを作った企業を一社挙げるとすれば、アマゾンではないかと思います。「地球上で最も豊富な品揃え」「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」という二つの理念の実現に突き進むアマゾンジャパンで、2002年から2006年までサプライチェーン・マネジメントをしていた著者が、アマゾンの強みを解説する『なぜアマゾンは“今日中”に物が届くのか』(林部健二著、プチ・レトル)。

アマゾンに関する本は多々ありますが、本書は、内部からアマゾンの強さを、日本企業と比較しながら紹介しています。機密に触れる?ような細部は書かれていませんが、アマゾンという会社の骨格を俯瞰してわかりやすく整理しているので、かえって大切なポイントが明確になっています。

一例を挙げると、物流とテクノロジーへの投資によって日々改善されている購買管理、注文管理、在庫管理、倉庫運営の考え方。年2回の予算(目標数値)作成。そのほかにも、かなりの数のKPIを、すべて同じフォーマットで資料を作り、年対比、目標対比、直近の推移などの数字でレビューする週次の経営会議など、アマゾンを強くし続ける組織と仕組みなど。過去の商習慣ややり方、情緒的で感覚的な判断は排除して、ユーザーの利便性向上を第一に、徹底してロジカルに判断・決定する。

新サービスを始める前に、“どうなれば成功といえるのか”という基準を持って始める。当たり前のようですが、成功基準を明確にしないまま、新しいことを初めてしまい、チェックが曖昧になってしまった、撤退基準が不明確で、判断が遅れてしまった、、、という経験のある方は多いのではないでしょうか。

KPI管理では、システムの稼働状況から、どのくらい正しく表示できていたか、ショッピングのセッション数、注文数、コンバージョンレート、新規顧客の比率、価格、サードパーティー比率、コスト、不良資産率、在庫欠品率、配送ミスや不良品率、倉庫からの出荷にかかった時間、納期通りの出荷率、などなど、ビジネスの上流から下流までの状況を、すべて数字で、しかも、0.0X%のレベルで目標が立てられ、毎週経営会議でチェックしてる。

また、日々の業務の中で発生した「わからないこと」「困ったこと」を、社員が入力・更新して共有する社内wikiの「ナレッジベース」、「ナレッジベース」では解決できない時に発行する「課題管理票」。いずれも社員の誰もが発行でき、業務が日々改善されていく。

トヨタ式のカイゼン、アンドン方式も採用して、KPI管理とアクションプラン管理による、実効性のあるオペレーション改善を継続的に実行する組織と仕組み。それこそが、アマゾンという会社のもう一つの発明なのかもしれません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しずおかオンラインでは現在下記の職種で、スタッフ募集を行っています。
 ・企画営業職(正社員)
 ・イエタテカウンタースタッフ(正社員・アルバイト)
 ・システムエンジニア(正社員)
 ・インフラエンジニア(正社員)
 ・営業推進(アルバイト)

詳しくは、下記採用ページをご覧ください ↓↓







年明け早々にライターのKさんから薦められた本、『江副浩正』(日経BP社刊)を読了。493ページもある本ですが、希代の起業家の人生にぐいぐい引き込まれ、一気に読んでしまいました。

江副浩正氏といえば、リクルート社の創業者であり、「情報誌」を通じて企業と個人をマッチングさせるビジネスモデルを創り出した人物。情報産業に携わる人においては特別な存在だと思います。大学新聞の広告営業を通して、広告は情報であることを見抜き、広告主と読者の二人の顧客がいることを明示した上で、常に読者の側に立つという編集方針。そのことが、広告主である企業側に、健全な競争を促すことにつながっていく。

彼が創ったもう一つの代表的なものが、成長する企業の思想と仕組みを創ったこと。新しいサービスだけでなく、企業家精神を持った人材を育成する「人材輩出企業」としての側面。本書『江副浩正』からは、「情報誌」というビジネスモデルと「成長する企業の思想と仕組み」が、どのような状況の中で生み出されたのか、その様子が生々しく伝わってきます。

いくつかあげられる江副浩正のDNAの中でも、とくに輝いてみえるのが「個の尊重」(個人を尊重し、社内にはいっさいの肩書き、学歴、年齢、性別から自由であること)。個を尊重し、個人の力でサービスを生み出し、それを磨き続ける風土は、これからの企業において、ますます重要になるのではないでしょうか。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しずおかオンラインでは、中途社員採用説明会を開催します。
会場は、静岡市・浜松市・岡崎市の3箇所。 
予約専用フォーム、または、電話にてお申込みください。



日程・会場
【静岡市】静岡本社:静岡市葵区追手町3-11 静岡信用金庫追手町ビル2F
 ・1月31日(水)19:00~20:00 
 
【浜松市】浜松支社:浜松市中区中央3-1-33 フォーレ三和 Ⅱ 1F
 ・1月30日(火)19:00~20:00 

■お問合せ:しずおかオンライン管理課 小西優花

・採用ホームページはこちら★
http://www.esz.co.jp/recruit/index.html


・予約専用フォームはこちら★
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSehG-y-ezBOk2Ffxq44VjS90o7WVigbUwakwEAH8oc8DmJxdw/viewform?usp=sf_link







分福茶釜』に続く細野晴臣さんと鈴木惣一朗さんの対談集『とまっていた時計がまたうごきはじめた』(平凡社)。お正月のあいだ、ふたりの掛けあいをじっくり味わいながら読んでいました。対談集というとお堅いイメージがありますが、細野さんの言葉を借りれば「熊さんが聞いてご隠居が答える」という落語の図。もちろんご隠居役は細野さんで、熊さん役が鈴木さん。

「ご隠居が熊さんの質問に戸惑い、無理矢理答えるというのが面白いわけで、ご隠居が面白いわけではない」と細野さんはいいますが、やっぱり細野さんはおもしろいし、人として興味がつきません。細野晴臣さんと鈴木聡一朗さんは同じ干支で、年齢差は細野さんがひとまわり上。自分の一回り先にこのような先達がいる人はしあわせですね。

   写真は、正月2日、スーパームーンに照らされた駿河湾と、写真では見えませんが正面には富士山。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・しずおかオンラインでは、「エンジニア職」「企画営業職」「営業推進スタッフ」等を募集しています。詳しくは、採用サイトをご覧ください。
 






静岡県内の書店員さんと図書館員が選ぶ第6回「静岡書店大賞」の受賞作の発表会と授賞式に出席しました。今年の静岡書店大賞の小説部門大賞は、伊坂幸太郎氏の『 AX(アックス)』(KADOKAWA)、児童書新作部門の大賞はふくながじゅんぺい氏の『うわのそらいおん』(金の星社)、児童書名作部門大賞はわかやまけん氏の『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)、そして、映像化したい文庫部門大賞は小坂流加氏の『余命10年』…でした。

いずれも、県内の書店員さんや図書館員さんたちが、静岡県民にぜひ読んでほしい一冊として選んだ作品。これから県内書店の店頭で受賞作品が並び始めます。ぜひ、手にとって読んでいただきたいとおもいます。

しずおかオンラインでは、各種観光ガイドブックを編集発行する出版社でもありますが、同時に、静岡県内の書店に本を配本する書店流通事業も行なっています。地元の方に届けたい本や雑誌を作ったのだけれど、書店でも販売したい、という方は、お気軽にお問い合わせください。

しずおかオンラインお問い合わせ窓口
 ・ http://www.esz.co.jp/contact/







今年の春にオープンした鷹匠3丁目の古書店「枇杷舎」に、ようやく行くことができました。場所は、つつじ通り沿いのマンションの一室。土曜日の午後4時間だけの営業。

文芸、児童文学、絵本のほか、エッセイなどが中心の品揃え。レジの前には、熊本「橙書店」の発行する『アルテリ』のバックナンバーも。店主(女性)さんの話では、ご自分の蔵書と友人が持ち寄ってくれた本が中心だとか。

エッセイの棚から伊丹十三の『女たちよ!』(新潮文庫)を購入。本好きの知人の部屋を訪問したような雰囲気の古書店「枇杷舎」。これからどのような書店になっていくのか楽しみです。モールガラスがはめ込まれた入口の引き戸(ドア代わり)が、味わいがあっていい雰囲気。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  しずおかオンラインは社員を募集しています。

  ・しずおかオンライン:採用サイト↓
   http://www.esz.co.jp/recruit/index.html




ヒップな生活革命』の著者でもある佐久間裕美子さんの新刊『ピンヒールははかない』(幻冬舎)。NY、シングル、自分の人生を真剣に生きている女性たちの話。

「自由が許されるのは、自分を食わせていけることが前提」「欲しいものがあれば、欲しいと意思表示しなければ、あちらからはやってこない」と前段でおさえた上で、ひと筋縄ではいかない社会の中で頑張っている女性の姿を紹介しています。彼女たちの生き方に触れると、ダイバーシティは自明のこと、性差やワークスタイルも、各人の属性でしかないことに気づかされます。

「女性の君が、自分がどういう人生を送りたいのかをわかっていて、自分の人生の主導権を握れる。そのために勇気の必要な決断をすることができる。素晴らしいことだと思う」「大切なことは自分の道を見つけることなんだ」。これは、恋人と別れることを決めた女性に、彼女の父親がかけた言葉。

NYに暮らす著者は、日本に帰国した折に「幸せだって思われたい」という女性誌のコピーを目にして、「自分の心と付き合っていくだけでも大変なのに、その幸せが他人に紐づいているなんて、なんて恐ろしいことだろう」と思う。そうか、私たちは、他者からの承認が得られないと、自分の選択が正しいのか自信が持てないのか。

本書によれば、「シングリズム」とは「独身主義」ということではなく、独身者が社会から受ける差別を意味するのだそうです。シングル=不幸、パートナーがいる=幸せ、のような風潮はアメリカ以上に日本で強い。「私たちの周りにはたくさんの呪いがある」といった(みくりの伯母)百合の台詞が思い出されます。佐久間裕美子さんからのメッセージは「 You have to stand up for yourself. 」(自分のために戦える人になれ)。百合からは、逃げるが…?


NYセントラルパークで見かけた、公園内で挙式するカップル。参加者は総勢9名。佐久間さんによれば、公園の管理事務所に集会届けと25ドルを支払えば結婚式をあげることができることのだそうです。









このところ「働くこと」についての議論がにぎやかです。内容は、働く目的や働き方、職場や制度などさまざまですが、そのような場面では、うまくは言葉にできませんが、「働くこと」の総体から何か大切なものが欠落した感覚になることがあります。

先日、三木清の『人生論ノート』を読みながら、こんな言葉に出会いました。「成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何かであるかを理解し得なくなった。自分の不幸を不成功として考える人間こそ、誠に憐れむべきである」、そして「幸福は質的なもの、成功は量的なもの」。

三木清のこの言葉に出会い、気づいたのは、自分が感じていた欠落感は「はたらくこと」で得られる幸福感についてかな、と。わたし自身は「はたらく」ことはその両面、成功(お金や地位)という計量可能な側面と、幸福の実現(誰かに必要とされている実感、自分の居場所があるという安心感、自己実現など)という質的な側面、の両面を実現可能にできるもの、と(幸いなことに)考えています。簡単ではありませんが、やりがいがあり、豊かな行為。ですから、成功(損得で測りやすい事柄)という側面と同様に、幸福の実現という視点からの議論もしてみたい。

「私の書いた本がたくさん売れて印税がたくさん入っただろうと、うらやましがられることがある。それは「成功」といえるけど、それで私という人間が変わるわけではないし、えらくなったわけでも、幸福になったわけでもない。うらやましがられるのは、成功についてでしょう。
 私の幸福は何かと言えば、例えば、プラトンの『ティマオス/クリティアス』を苦労しながら古代ギリシャ語から翻訳をする仕事をすること、これが私にとっての幸福なこと。でも、誰も羨ましいとは思わないでしょう」(岸見一郎「人生論ノート」を読む」白澤社)


三木清は「幸福は各人においてオリジナルなものである」とも言っています。成功について語るのと同じように、それぞれのオリジナルな幸福についても語ることができたら、何かが変わるような気がします。


【フリーマガジン『womo』静岡版8月号、浜松版8・9月号発行】太陽がきもちいいアクティブな夏体験





人口減少対策として移住者を増やすことは、全国の自治体に共通する課題。手始めに、人口が集中する首都圏や関西の大都市、近隣中核都市に暮らす若い世代をターゲットにしたPR活動が行われます。自然を含む環境面でのアピールは基本として、子育て世代には出産・育児の支援や医療制度の充実、空き家などの斡旋や補助金、就労支援など、どちらかといえば、転居にあたり最初に直面する不安や課題解消に向けた施策や制度の充実をうたっているものが多いようです。

リチャード・フロリダ著「クリエイティブ都市論」によれば、人生で意味を持つものは「何を」「だれと」行うかに加えて「どこに」住むか、が重要。街にはそこに住む人々によって生み出される「性格」があり、住む街を選択するときは、自分が街に対して求めるものと、その街の性格があっているか見極めることが大切だと。

そういわれてみれば、なるほど、と思います。その一方で、いま自分が住んでいる街について、そこは自分が幸せに暮らし続けられる場所か、真剣に考えたことのある人は存外少ないのではないでしょうか。多くの場合は、自分が生まれ育った(家族のいる)街だから、進学をきっかけにした人間(友人や恋人その他)関係が維持できる場所だから、仕事があり経済的に安定した収入や社会的な評価が約束(?)されているから、などが考えられます。

本書で紹介されている「居住地と幸福に関する調査」によれば、住む場所の満足度に影響を与える要素を集約すると以下の通り。「治安と経済的安定」、「基本的サービス(教育、医療、住宅の入手のしやすさ、公共交通機関)」、「リーダーシップ(官民のリーダーシップの資質と実行力、地元住民の地域への参加の可能性)」、「開放性(子供のいる家庭、マイノリティ、高齢者などに対する寛容性と受容性)、そして、美的感覚(美観、快適性、文化的環境)」。そして、上位を占めた要素が「美的感覚」と「基本的サービス」だったとか。街も見た目が大切、そして住み心地。

もちろん、だれもが街やコミュニティに同じものを求めているわけではありませんし、人生の各ステージで同じものを求めるわけでもありません。その都度、自分のライフスタイルや価値観にとって大切なものは何かを知り、「どこに」住むかを選択することになります。

移住者を迎え入れる側の自治体としては、移住者が将来にわたって住み続けてくれることを期待しているはず。そのためには、人が住む場所の選択についてどう考えているのか、を理解したうえで、どんな人にとって暮らしやすい(幸福を感じられる)街を作っていくのか、というビジョンを描き、継続的にその実現に向けて取り組むことが、(時間はかかりますが)両者の満足度を高めることにつながるのではないでしょうか。

インターネットにつながればどこにいても仕事はできる、物理的な距離は消滅した、という声も聞かれますが、現代そしてこれからの経済成長の原動力となるクリエイティビティと生産性に満ちた人々が集まる場所でこそ、イノベーションが生まれ、産業は成長する。ひいては地域(場)の生産性と競争力を高めることになる。そんな視点も押さえておく必要がありそうです。

・「静岡市の官能都市ランキング総合12位は意外ですか?」
 http://unno.eshizuoka.jp/e1776006.html







先日、静岡県立大学(小鹿キャンパス)で開催された「観光情報学会 第14回全国大会 in SHIZUOKA」(主催:観光情報学会/とうかい観光情報学研究会、共催:静岡県立大学、後援:静岡県)についてこのブログに書きましたが、同学会の取り組みを学ぶ時に便利な一冊が『観光情報学入門』(編者:観光情報学会、近代科学社)。

宿泊地、交通手段、観光地などの情報に、いまそこにいる観光客の動的情報も含めた情報と技術の切り口から、観光の楽しみ、利便性を最大化するためにできることを体系的に俯瞰できる内容です。2年前の発行ですので、本書で取り上げられている事例の中には、すでに古さを感じてしまうものもありますが、情報と技術の関係性や流れを知っておくことで、これから先の動向に敏感になれるのではないかと思います。観光誘客や観光資源の活用に取り組む方にはおすすめです。

『観光情報学入門』(編者:観光情報学会、近代科学社)目次
 ・位置情報サービスと観光
 ・拡張現実(AR)が観光にもたらすインパクト
 ・デジタルアーカイブと観光
 ・観光情報とデザイン
 ・ユーザ参加による情報構築と価値共創
 ・観光情報パーソナライゼーション
 ・ゲーミフィケーションと観光
 ・観光情報が拓く観光サービスのデザイン
 ・観光地イメージとサービス・マーケティング
 ・観光情報システムが目指す未来
 ・観光情報学に関するトピックス





こちらは(↓)Wi-Fi活用を基軸にしたインバウンド対応実用型サイト「Open wifi 」






「一人ぼっちでも大丈夫? 友達ゼロの人の結末」。これは、明治大学・諸富祥彦教授の「日経ウーマン・オンライン」(6月17日)のコラム・タイトル。ずいぶんストレートなタイトルだなぁ、そう思いながらクリックしたのは、自分もどこかに「そちら側?」という感覚があるからかもしれません。 SNS全盛、「絆」第一の時代に、ともだちが少ないと、どうなってしまうというのか。怖いものみたさで確かめてみようかと…。

恐るおそる読みはじめてみたところ、諸富祥彦教授の伝えたかったことは「一人の時間を過ごせる力、言いかえれば孤独力は、現代を生きるための必須能力」「孤独力を持った人は、人生を充実させる上でアドバンテージを持っている」ということ。“一人ぼっち“を肯定する内容でした。

とはいえ、「嫌い」と「寂しさ」を選択するとき、私たちの多くは「嫌い」を選んでしまいがち。「不満」と「不安」では「不満」を選択して、自分の成長の機会を逃してしまう。一人で歩くときの不安よりも、自分の本性に目をつむり、周囲にとってよき人になってしまう。なかなか難しい。

こちらは、人生の終盤に充実した独居生活を送っている先輩たち(編集者・都築響一氏の著書『独居老人スタイル』筑摩書房)。漫画家、スナックのママ、流し、映画館のお掃除婦、居酒屋主人などなど。ひとり暮らしの毎日を楽しみながら元気に暮らしている先輩たちに、「こんな結末ならありかも」と勇気づけられます。



しずおかオンラインでは、2019卒向け夏インターンシップを開催します! 詳しくはこちらから 
            ↓ ↓




 





※玉川きこり社社長、原田さやかさんのインタビューノート
 第2回「玉川のおばあちゃんのおもてなし。」が公開となりました。
http://interview.eshizuoka.jp/e1778544.html
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここ数年、高学歴で大企業でも活躍できるキャリアを持ちながら、社会貢献を目的とした事業に取り組む非営利業界や企業に転職したり、新たに起業するする女性たちを紹介する記事を目にする機会が増えているように思います。

従来の行政サービスと市場経済の枠組みでは対応しきれない社会問題に取り組むことで得られる「やりがい」だけで、社会貢献の道に飛び込めるものなのか、継続できているのか、「やりがい」以外のモチベーションがあるとすれば何か…。そのあたりを知りたいと思っていたところ、『N女の研究』(中村安希著、フィルムアート社)という本で、そのような女性たちを取材していました。

非営利業界で長く実績を上げている人もいますが、一度は飛び込んでみたものの民間企業に戻った人もいて、やはりきれいごとでは続けられない、厳しい現実があるようです。
それでも、自分のやりたいことと現実のギャップに悩み、結婚や出産、子育てといったライフステージに直面するたびに難しい選択をし、乗り越えてきた女性たちはたくましい。

若年無業者の就労を支援するNPO法人で働くKさんの「自分も、自分たちの子どもたちも、逃げきれない世代」、「若者がかわいそうだから、ではなく、納税者を増やしていかないと私たちの世代やその次の世代にまで負担がのしかかるからやっている」という言葉が心に響きました。

目の前で起きている社会の課題を、先送りにできない問題として認識し、「誰か」の問題ではなく「自分」の問題としてとらえる彼女たちのような女性がいることに希望を感じます。


4月も後半になり、就職活動も佳境になってきました。しずおかオンラインでも、これから学生さんと面談する機会が増えます。少し前には「社会貢献したい」「地域に恩返しできる仕事を希望」という学生が多かったように思いますが、最近は、若い人の安定化志向が強くなっているようです。

弊社のような社員数十人の小さな会社の説明会でも、「入社したら何をやらせてもらえるのか」という問いの前に、各種制度や労働環境、福利厚生などについての質問が増えているように思います。安心して働くことができるということはとても大切です。不安な点はどしどし聞いてください。

その上で、自分が何を実現したいのか、社会とどのように関わっていきたいのか、なども熱く語ってもらえるとうれしいです。

写真は、玉川の地域課題に取り組む「玉川きこり社」社長の原田さやかさん。




「都市から地方へ」国を挙げて移住促進を推し進めていることは、多くの方が認識していることと思います。とはいえ、転勤や結婚などを除いて、生活の場を変えることはとってもハードルが高い。

現実の移住はさておき「どんな街なら住んでみたいと思うか」について想像してみることは誰にでもできるし、「これからも住み続ける(であろう)街にどうなってほしいか」を具体的にイメージしてみることは悪くない。自分が魅かれる街と、他者が暮らしてみたい街の比較も興味深いしね。人口減を課題として抱えている地方都市の行政担当者にとっても気になるところではないか。

本当に住んで幸せな街:全国「官能都市」ランキング』(島原万丈+HOME’S総研、光文社新書)は、HOMO’S総研が2015年9月に発表した『 Sensuous City 官能都市:センシュアス・シティ・ランキング』と題されたレポートを一般向けに書き直した一冊。

この調査の興味深いところは、都市の魅力度を測る指標として官能(センシュアス)度を掲げているところ。「共同体に帰属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」「機会がある」「食文化が豊か」「街を感じる」「自然を感じる」「歩ける」などを指標として、都市の中で体験できる「他者との関係性」や「五感で感じる身体性」を可視化している。

アンケートでは、自分の暮らしている地域で、過去1年間に体験した行為の頻度を調査。例えば「地域のボランティアやチャリティに参加した」「買い物の途中で店の人や他の人と会話を楽しんだ」「カフェやバーで一人だけの時間を楽しんだ」「路上でキスした」「刺激的で面白い人が集まるイベントに参加した」「地元でとれる食材を使った料理を食べた」などなど。

従来の都市ランキングでは、起業のしやすさや商店街の充実、育児支援施設や介護施設の数や制度の充実、公共料金の価格など、施設や制度に重きを置きがち。「官能都市」ランキングでは、その街で暮らしている人の生活体験に着目している点で、リアルな暮らしがイメージしやすい。ところで、あなたは次に住むとしたら、どんな街を選びますか?

静岡市の官能都市度では、ロマンス度をもっと高めたいところ。本文中では「静岡市が総合12位と上位なのは意外かもしれない」と触れながら、浜松市との比較をしているので、興味があればぜひ読んでみてください。

米国の官能都市はどこだろうと、想像した時に真っ先に頭に浮かぶのはポートランド市。写真は、ポートランド市で人気のドーナツ店「Blue Star Donuts」。髭とノーズリングがよく似合うスタッフと官能的なドーナツ。









海野 尚史 HISASHI UNNO

アーカイブ