この「劣等感」は、誰に対して抱く感情なんだろう。その背景には、何があるのだろう。一昨日、大学生の雑誌『静岡時代』を発行しているNPO法人静岡時代・副代表の服部由実さんが来社した際に、服部さんからそのようなお話を聞いて、ちょっと驚きました。(『静岡時代』については、こちらでも紹介しました)

その『静岡時代』が、来年10周年を迎える。おめでとう。企業が発行する一般誌でも10年続けることは容易ではない。それを、卒業・入学と、編集スタッフが常に入れ替わることが宿命の大学生たちが運営し続けている。これはすごいこと。

『静岡時代』の記事は、eしずおかブログの中の「シズオカガクセイ的新聞」にアーカイブされ、誰でも読むことができます。「最近の若者は…」と、思いがちなおとなにこそ、一読することをおすすめしたい。きっと若者を見る目が変わりますよ。

最近では、『静岡時代』が中心になって、静岡県政運営のためのシンクタンク「ふじのくにづくり学生研究会」を発足。県政に提言する学生団体は、全国初だそうです!大学生には劣等感をバネにして、地域を変える原動力となってほしい。これからの『静岡時代』の活躍が楽しみです。

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『womo』10月号を発行しました。
 静岡版:「おまち歩き in みてたエリア」
      (御幸町・伝馬町・鷹匠)特集。
 浜松版:「womoスイーツグランプリ2014」
     10/4(土)、5(日)開催の遠州バザール会場内
     にて今年も開催!
     くわしくはこちら

     




雑誌『Spectator(スペクテイター)』(29、30号)が、全編、後編の2回に分けて「ホール・アース・カタログ」を特集している。

2009年に『Whole Earth Catalog(以下「ホール・アース・カタログ」)』がウェブで公開された時もこのブログで取り上げましたが(こちら)、『ホール・アース・カタログ』は、わたしの中では伝説の雑誌。

いまでは「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」というジョブズのフレーズの出典先として有名なのかもしれないが、雑誌編集に関する書物の中や、環境、エコロジー、自然エネルギー、オーガニック、バックパッキング、ベジタリアニズム、パーソナルコンピュータ、ワークショップ、ノマディクス(遊牧生活)、Do it yourselfの精神…など、カウンターカルチャーの源流にさかのぼっていくと、必ずといっていいほど「ホール・アース・カタログ」にぶつかる。ただし、同書の邦訳書が未刊行ということもあり、その全容を知ることは難しかった。

『Spectator(スペクテイター)』の「ホール・アース・カタログ」特集では、同カタログの年表、カタログの使い方、扱っていた商品群一覧などに加えて、特に後編の現地取材による同誌創刊編集・発行人スチュアート・ブランド、元編集スタッフのロイド・カーン、ケヴィン・ケリー、ハワード・ラインゴールドの4人のインタビューが読み応えあり。

彼らが、今、どんな仕事をしていて、何に興味を持っているのか…はもちろんだが、彼らのいまの暮らしぶりを垣間みることができるのも興味深い。「ホール・アース・カタログ」のおさらいをするには、ぴったりの特集だ。現地取材・構成は、赤田祐一、青野利光。






    萩市浜崎、寺の塀越しに見上げる中秋の名月。 

「50過ぎのオッサンも、ゲストハウスなんかに泊まるんだ」。茨城県から萩市までバイクでやってきたという大学3年K君のその言葉に、隣で聞いていた宿の主人のTさんが、「もうすこし言い方があるんじゃないの。それに、うちはリタイアした人もよく利用してるよ」とあわててフォローしてくれた。

ぼく自身は、久しぶりに、大人に対する若者特有のあっけらかんとしたもの言いに接して、かえって気持ちいい。それよりも「オーナーの前で“ゲストハウスなんか…”はないだろう」と、Tさんの反応が気にしながら、「そうなんだよ。50過ぎのオッサンも、ときどきゲストハウスを利用したりするんだよ」とこたえる。

ここは、この春Tさんが萩市に開業したばかりのゲストハウス(写真上)。萩市の宿を決めないまま山陰旅行に出かけたので、山陰本線で移動中、ネットであわててここを探し当てたのだ。萩には2軒のゲストハウスがある。一軒は、古ビルをリノベーションし、カフェ・バーを併設したおしゃれな宿(同じデザイナーが手がけた東京・蔵前のゲストハウスを利用した時の話はこちら)。もう一軒が、Kさんが一人で切り盛りしている古民家をリフォームしたこの日の宿である。


大学3年のK君は、道路フェチ。バイクに乗っている時は、「ここの道路はよくできている、走りやすい、とか、ここはちょっと仕事が荒いな」などと気になるのだそうだ。現在の悩みは、就職活動。自分の手で道路を造りたくて、大学は土木課を選択。ところが入学後、実際に道路を造っているのはゼネコンの協力会社であること知り、先輩たちのようにゼネコンに就職すると直接道路づくりができないと、迷っている。

一方、この宿の主人Tさんは、香川県出身の38歳。この春、萩市にゲストハウスを開業するまでの道のりや、開業後の経営状況、集客の課題、外国人バックパッカーの国籍別特徴など、いろいろな話題で盛り上がる。ふすまを隔てた隣の部屋では、アメリカ育ちだけどアメリカ人嫌いの28歳の投資会社経営者が、チェックイン早々眠っている。この日の客は3人。全員男性、全員一人旅。話を聞いてみれば、主人のTさんもいまだ一人旅の途中らしい。

ここ数年、部屋をシェアして宿泊するゲストハウスが増えている。ホテルでも旅館でも民宿でもなく、こんな小さなところから、2020年の訪日外国人観光客2,000万人に向けての動きが始まっているのかもしれない。

     写真下は、前日に宿泊した石見銀山、他郷阿部家。文豪に似合いそうな落ち着いた部屋。




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本を見せるだけでランチメニューが500円!
「静岡・浜松ランチパスポート」は本日発売


・利用有効期間:3ヶ月(2014年9月19日~12月18日)
・静岡版:静岡市内71店舗掲載。
・県西部版:浜松市、磐田市、袋井市、掛川市の70店舗。
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この1週間、電車とバスを乗り継いで、山陰地方に出かけてきた。安来、松江、出雲、石見銀山、そして萩。Uターンして、厳島神社、広島平和記念公園。こんなに短期間に、これほど多くの観光地をまわるのは、海外旅行を除けば初めてかも知れない。

観光庁は、東京オリンピックの開催される2020年に、2,000万人の訪日外国人観光客を迎え入れる計画だ。2,000万人の目標を達成するためには、東京や大阪などの日本を代表する都市や、京都や北海道などの、すでに海外に認知された観光エリアだけでは、それだけのボリュームを吸収できない。つまり、地方への誘客が2,000万人受け入れの成功の鍵ということになるのだけど、果たして今の地方にその準備はできているのだろうか。

短期間に七カ所を回ってみて実感したのは、「観光地」とか「観光」とひとことに言っても、それぞれ、歴史も、雰囲気も、核となる見どころも、ボリュームも、スケールもまったく違うということ。それから、エリアのサイズと集客力は直結しない、ということもよくわかった。

今回でかけた中で一番小粒なのが島根県太田市の石見銀山。山間の本当に小さなエリアなんだけど、ここでは深堀する観光のおもしろさを体験できた。大久保間歩のツアーに参加できたことも貴重でしたが、宿泊した他郷阿部家で、ここを運営する群言堂の松場大吉会長と会食しながらお話を聞けたことも大きい。

群言堂という会社について一言で語るのは難しいので、こちらの映像をみていただければと思いますが、復古創新という考え方のもとで、石見銀山を起点に商品開発、情報発信している。最近では、今回お世話になった築200年を超える古民家の宿泊施設を手がけたり、地酒などの新商品開発にも積極的に取り組んでいる。「うちは東京や大阪など、都会で利益を上げて、地元に投資しているんです」という松場会長の言葉からは自負も感じられた。実際に、人口400人というこの地域で、約50人の雇用を創出しているそうだ。


宿泊した翌日には、近くにある本社(写真/中)も見学させていただいたのだが、新築の社屋の外壁を錆びたトタンなどの古材で囲い、石見銀山の風景にとけ込ませている。商品も建物も「石見銀山の生活にふさわしいものであること」というひとつのモノサシがすべての基準になっていて、そこが群言堂のブレない「らしさ」につながっている。

一方、明治維新を牽引した人材を数多く輩出した萩市は、戦禍に遭うこともなく、いまでも歴史的な町並みが残っている。観光地としてのポテンシャルは高い。萩市内循環バスの運転手さんによると「いまでも小学校で、松陰先生の言葉を暗唱していますよ」とのこと。町並みだけでなく、現在の暮らしの中にも街の歴史が脈々とつながっている。とはいえ、人口は減り、空き家も(本当に)多く、観光客も減少している現実があり、「萩は陸の孤島ですから…」という諦めムードの声が聞かれたのも事実。そんな中での朗報は、来年のNHK大河ドラマ(「花燃ゆ」の主人公が吉田松陰の妹)で萩市が舞台になること。2020年のことはわからないけど、2015年はきっと多くの観光客で賑わうのだろうな。

観光地として充実している印象を受けたのは水の都・松江市。松江城や武家屋敷、小泉八雲記念館、美術館など、見どころが多い上に、興味別観光コースがうまく組まれている。それらをつなぐ周遊バスや遊覧船も便利で、満足度の高い一日を過ごすことができた。とはいえ、結局一番印象に残っているのは、宍道湖七珍料理の店「川京」で、おかみさんや娘さんに松江の食について教えてもらいながら「鰻のたたき」や「おたすけしじみ」「亀の手」を食べた夜なんだけどね。

初めての山陰旅行は、思いのほか楽しいものだった。地方には、まだまだ多くの観光資源が眠っていることにも気づいた。2020年まであと6年しかない…ともいえるけど、ここは「あと6年もある」ととらえたいもの。外国人も日本人もファンにしてしまう地方がたくさん生まれることこそが、「地方創世」なんじゃないだろうか。









海野 尚史 HISASHI UNNO

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