人口減少対策として移住者を増やすことは、全国の自治体に共通する課題。手始めに、人口が集中する首都圏や関西の大都市、近隣中核都市に暮らす若い世代をターゲットにしたPR活動が行われます。自然を含む環境面でのアピールは基本として、子育て世代には出産・育児の支援や医療制度の充実、空き家などの斡旋や補助金、就労支援など、どちらかといえば、転居にあたり最初に直面する不安や課題解消に向けた施策や制度の充実をうたっているものが多いようです。

リチャード・フロリダ著「クリエイティブ都市論」によれば、人生で意味を持つものは「何を」「だれと」行うかに加えて「どこに」住むか、が重要。街にはそこに住む人々によって生み出される「性格」があり、住む街を選択するときは、自分が街に対して求めるものと、その街の性格があっているか見極めることが大切だと。

そういわれてみれば、なるほど、と思います。その一方で、いま自分が住んでいる街について、そこは自分が幸せに暮らし続けられる場所か、真剣に考えたことのある人は存外少ないのではないでしょうか。多くの場合は、自分が生まれ育った(家族のいる)街だから、進学をきっかけにした人間(友人や恋人その他)関係が維持できる場所だから、仕事があり経済的に安定した収入や社会的な評価が約束(?)されているから、などが考えられます。

本書で紹介されている「居住地と幸福に関する調査」によれば、住む場所の満足度に影響を与える要素を集約すると以下の通り。「治安と経済的安定」、「基本的サービス(教育、医療、住宅の入手のしやすさ、公共交通機関)」、「リーダーシップ(官民のリーダーシップの資質と実行力、地元住民の地域への参加の可能性)」、「開放性(子供のいる家庭、マイノリティ、高齢者などに対する寛容性と受容性)、そして、美的感覚(美観、快適性、文化的環境)」。そして、上位を占めた要素が「美的感覚」と「基本的サービス」だったとか。街も見た目が大切、そして住み心地。

もちろん、だれもが街やコミュニティに同じものを求めているわけではありませんし、人生の各ステージで同じものを求めるわけでもありません。その都度、自分のライフスタイルや価値観にとって大切なものは何かを知り、「どこに」住むかを選択することになります。

移住者を迎え入れる側の自治体としては、移住者が将来にわたって住み続けてくれることを期待しているはず。そのためには、人が住む場所の選択についてどう考えているのか、を理解したうえで、どんな人にとって暮らしやすい(幸福を感じられる)街を作っていくのか、というビジョンを描き、継続的にその実現に向けて取り組むことが、(時間はかかりますが)両者の満足度を高めることにつながるのではないでしょうか。

インターネットにつながればどこにいても仕事はできる、物理的な距離は消滅した、という声も聞かれますが、現代そしてこれからの経済成長の原動力となるクリエイティビティと生産性に満ちた人々が集まる場所でこそ、イノベーションが生まれ、産業は成長する。ひいては地域(場)の生産性と競争力を高めることになる。そんな視点も押さえておく必要がありそうです。

・「静岡市の官能都市ランキング総合12位は意外ですか?」
 http://unno.eshizuoka.jp/e1776006.html







「大谷(静岡市駿河区)に素晴らしい蔵が残ってますよ。あそこは必見です!」と建築士の知人に教えていただき、さっそく出かけてきました。明治時代に建てられた蔵は綺麗に手入れされ、一年前に自家野菜と地元野菜を使った惣菜とギャラリーの店「KURA」としてオープン。訪ねた日は女性客でほぼ満席でした。最近の古カフェ人気?を実感。わたしは、”虹の輪ベーカリー”の天然酵母パンを購入。

この日は運のいいことにオーナーのOさんもいらして、蔵の二階や母屋も見学させていただきました。蔵の二階には、大正から昭和初期にかけての手工芸品や生活雑器など、まさに民藝の数々が…。それらのほとんどをOさんご自身が蒐集したのだそうです。Oさんの蒐集品の一部は、今年はじめにフェルケール博物館(清水区)で「大正ロマンと女性の手仕事-大正~昭和のくらしとデザイン」展で展示されましたので、そちらでご覧になった方もいるかもしれません。

身近な近現代や個人の活動にも目を向けてみると、地域には、まだまだ発掘されていない歴史や文化が眠っていそうです。明治時代の蔵とその二階に眠っていた古い工芸品を見ながらそんな思いがしました。

(※「KURA」は、8月はお休みです)




まちぽスタンプアプリで「泡ラリー」がスタートしました!






欧米を中心に定着しつつある旅のスタイル「ガストロノミー・ツーリズム」。旅先で新たな要素や体験を求める旅行者に、地域の「食」文化を切り口にして観光を楽しんでもらおうというもの。そういえば、映画「ボンジュール・アン」や「イタリアは呼んでいる」なども、まさにガストロノミー・ツーリズムですね。

「食」を目的とする旅行者の消費額が一般的に高いことや、地元の食文化は新たなインフラを作らなくても地域の魅力を伝えることができること。そして、多くの人は一日に3回の食事は欠かしませんから、体験の機会が多く、敷居は低い。最近人気が高まっているご当地クラフトビールやウィスキーなども、ガストロノミー・ツーリズムにぴったりだと思います。

先日出かけた「インバウンドジャパン2017」の会場では、ガストロノミーツーリズムに「温泉」を加えて、地域の食、景観、自然を体感する「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」が提唱されていました。「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」の方にお話をお聞きしたところ、いまのところ、伊豆や箱根ではイベントなどの計画はないとのこと。梅ヶ島温泉のある静岡市(ガイアフロー静岡蒸留所の一般公開も控えています)や、寸又峡温泉のある川根本町などでも「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」は相性がいいと思います。大きな投資は必要ありませんし、地域の関係者がまとまれば実現可能ではないでしょうか。

写真は、ちょうど10年前の夏に一週間過ごしたイタリア・トスカーナ地方の農家民泊の宿。ブドウ畑の真ん中の1400年代に建てられた農家をリノベーションして、両親と娘さんの親子三人で経営していました。お母さんが作るトスカーナ料理とお父さんが造っている自家製ワインは、今でもしっかり記憶に残っています。食の体験は、人を惹きつける大きなパワーがありますね。







【お知らせ】 「womo8月号」は本日発行です。
巻頭特集は「アクティブな夏体験」。ツリークライミング、パラセーリング、ラフティングなど、夏だからこそ体験してみたいスポットを紹介しています。

そのほか、静岡版は「オクシズトリップ」、浜松版は「コストコ情報&宮竹エリアお出かけ情報」など注目の情報満載です。ぜひ、 「womo8月号」をご覧ください。

womoネット、編集部ブログまたはFacebookはこちら ↓↓

・womo編集部ブログ http://womonet.eshizuoka.jp/e1813073.html
・womo公式Facebook https://www.facebook.com/womonet/







7月23日(日)にグランシップで開催された「静岡クラフトビール&ウイスキーフェア2017」(主催:ガイアフロー静岡蒸溜所)に出かけてきました。東は岩手県一関市の「いわて蔵ビール」から、西は大阪府箕面市の「箕面ビール」、兵庫県明石市の「江井ヶ嶋酒造」など、ビールブース12社、ウイスキーブース6社が出店。地元からは「ベアードビール」(伊豆市)、「反射炉ビア」「伊豆の国ビール」(伊豆の国市)、「御殿場高原ビール」(御殿場市)、「サムライサーファービール」(沼津市)、そして「AOI BEER」、「ガイアフロー静岡蒸溜所」(静岡市)が参加。

熱気に包まれた会場で人混みをかき分けて、各地の個性的なビール・ウィスキーを試飲していると、イギルス・スコットランド発の「ブリュードッグ」、アメリカ・ニューヨークの「ブルックリン・ブルワリー社」など、海外から始まったクラフトビールやマイクロブリュワリーの盛り上がりが、着実に日本(の地方)にも浸透しつつあることを実感できます。(そういえばポートランドで昨年お世話になったビール醸造家も「ベアードビール」を知っていました。)日本のクラフトビールがこれからどのような広がりをみせるのか、期待が感じられるイベントでした。

写真は、「反射炉ビア」の試飲セット。スタウト、ピルスナー、ヴァイツェンなど、4種類のビールの味を楽しめます。



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 しずおかオンラインでは、8月~9月にかけて、
 2019年卒業予定の学生さんに向けたインターンシップを開催します。


・広告、出版業界、メディアづくりに興味がある方
・街づくりに興味がある方
・静岡を盛り上げたい方是非、ご参加ください!

▼詳細はこちらをご覧ください ↓↓
 https://job.rikunabi.com/2019/company/r673130090/internship/

▼エントリーはこちら ↓↓
 https://job.rikunabi.com/2019/company/r673130090/preentry/U001/

▼過去に開催したインターンシップレポートも参考に!
 https://www.esz.co.jp/blog/

※内容は担当社員により変更になる場合があります
※応募締切は7/31(月)です!




先日、磐田市で落語会情報誌『東海落語往来』を発行している金澤実幸さんにお話を聞く機会をいただきました(この時のお話は「次回のインタビューノート」で紹介します)。その時に「落語会はみなさんの身近な場所で頻繁に開かれているんですよ」と、静岡県内の落語会事情について教えていただいたのですが、その数日後、平成の長屋実行委員会のHさんとKさんから、六代目春風亭柳朝師匠(静岡市出身)を招いて「納涼 施餓鬼寄席」を開くので聞きにきませんか、と声をかけていただきました。すばらしいタイミング!?

「納涼 施餓鬼寄席」が開かれたのは7月15日の旧盆。会場は、日本の民家を現代に甦らせたような趣のある住居「あくび庵」。10畳ほどの板の間と縁側に並べられた座布団がこの日の客席でした。演目は幽霊の登場する長屋噺「不動坊」と人情噺の「井戸の茶碗」。縁側に座り、風鈴の音をBGMに聞く落語は、風情があって贅沢なひとときでした。




こちらは、ウェブサイト「womoネット」でアクセスの高かったコラムTOP5(↓)。





先日、静岡県立大学(小鹿キャンパス)で開催された「観光情報学会 第14回全国大会 in SHIZUOKA」(主催:観光情報学会/とうかい観光情報学研究会、共催:静岡県立大学、後援:静岡県)についてこのブログに書きましたが、同学会の取り組みを学ぶ時に便利な一冊が『観光情報学入門』(編者:観光情報学会、近代科学社)。

宿泊地、交通手段、観光地などの情報に、いまそこにいる観光客の動的情報も含めた情報と技術の切り口から、観光の楽しみ、利便性を最大化するためにできることを体系的に俯瞰できる内容です。2年前の発行ですので、本書で取り上げられている事例の中には、すでに古さを感じてしまうものもありますが、情報と技術の関係性や流れを知っておくことで、これから先の動向に敏感になれるのではないかと思います。観光誘客や観光資源の活用に取り組む方にはおすすめです。

『観光情報学入門』(編者:観光情報学会、近代科学社)目次
 ・位置情報サービスと観光
 ・拡張現実(AR)が観光にもたらすインパクト
 ・デジタルアーカイブと観光
 ・観光情報とデザイン
 ・ユーザ参加による情報構築と価値共創
 ・観光情報パーソナライゼーション
 ・ゲーミフィケーションと観光
 ・観光情報が拓く観光サービスのデザイン
 ・観光地イメージとサービス・マーケティング
 ・観光情報システムが目指す未来
 ・観光情報学に関するトピックス





こちらは(↓)Wi-Fi活用を基軸にしたインバウンド対応実用型サイト「Open wifi 」






登場人物に笑ったり、時には「ばかだなぁ」とつっこみを入れたりしながら、語りの世界に安らぎを感じたり、自分もそこに住んでみたいと思わせてくれるところが落語の魅力。そこで起きていることは決して笑えることばかりではないのですが、それを受け止める登場人物たちは、楽観的でお人好し、そして、とことん自分に都合よく解釈するところに魅かれます。

その、事実に対する(根拠のない)前向きな解釈力が、こちらの笑いを誘うのですが、そんな力を少しでも身につけることができれば、わたしたちの日常は、もう少したのしくなり、身近にしあわせを実感できるのかもしれません。落語の世界の登場人物たちの粗忽さ加減(がポイント)もうらやましい。

イケメンな若手噺家さんの活躍もあって、最近は若い落語ファンが増えているそうです。だからといって、地方で演芸専門の情報誌を発行するのは別の話。今から7~8年ほど前に初めて手にして以来、ずっと気になっていた情報誌が『静岡落語往来』。2015年に誌名が『東海落語往来』に変わって、現在は、静岡・愛知県を中心にした落語会情報を紙媒体とwebで発信しています。編集発行しているのは磐田市在住の金澤実幸さん。

先日、ようやく金澤実幸さんにお会いすることができ、『東海落語往来』誕生の経緯や、静岡県内の落語会のお話などを伺いました。次回のインタビューノートでは金澤実幸さんにお聞きした、落語の魅力や楽しみ方について紹介する予定です。落語ファン、落語会に興味がある、という方はぜひチェックしてください。

・「インタビューノート」 https://interviewnote.jp/




【お知らせ】
「誰もがセンセイ、誰もがセイト。」をコンセプトに、みんなで、地球のこと、みんなの未来のことを考える地域の学校。「アース(明日)カレッジ2017」は、7月15・16日に開催されます。
『まちぽスタンプ』のスタンプラリーも開催します!

 ・https://womo.jp/column/detail/25520/

 期間:7月15日 土曜日~16日 日曜日
 時間:10:30~17:15(開場10:00)
 場所:アイセル21(静岡市葵生涯学習センター)
 住所:静岡市葵区東草深町3-18










熊本地震からの復興途上で大雨に見舞われた熊本県をはじめ、台風や大雨による被害が伝えられている九州地方。これ以上被害が広がらないことを願うばかりです。

一方「1944年(昭和19年)の東南海地震以降は全県規模の災害はなく、県内住民の大部分は大きな災害を経験していないことになります」(静岡県HP「静岡県市町村災害史」より)と静岡県のホームページに書かれているように、わたしたち静岡県民はここ数十年、幸運にも全県単位での大きな災害にあうことなく過ごすことができてきました。

そのような幸運を実感しながらも、近い将来、東南海地震の発生が予測されている私たちが、いまできることとして、ささやかな取り組みですが「熊本地震復興応援くまモンうちわ」に協賛しました。費用の一部は熊本県へ寄付されます。「熊本地震復興応援くまモンうちわ」は、「アースカレッジ」(静岡市)、「七夕祭り」(焼津市)、「夜店市」(静岡市)などのイベント会場で配布します。見かけましたら、ぜひ受け取ってください。そして、ご家庭での防災・減災準備のきっかけにしていただければうれしいです。

・ジブン防災静岡 https://machipo.jp/bousai/










2017年の前半が終わりました。今年上半期に観た映画を振り返ってみると、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「光」「たかが世界の終わり」「家族の肖像」「ホームレス ニューヨークと寝た男」「ナイスガイズ!」「皆さま、ごきげんよう」…。

中年(老年)男を主人公にした映画が多いのは、自分自身がそういう年齢だからというシンプルな理由から、だと思っています。ネット上の評判やレコメンドを積極的に参考にすることは少ないのでそう思うのですが、自分の意図しないところで、すでにそのような情報に取り囲まれているんだよ、と言われれば、そうかもしれません。自分の決定のどこまでが自分の意思によるものなのか…。見えない技術の進歩とともに、自分の輪郭が曖昧になっていくようです。

家族を失った男、視力を失いつつあるカメラマン、間近に死を迎えている劇作家、モデル兼カメラマンでありながらビルの屋上に暮らすホームレス、隠遁生活を送る大学教授…。中年男性の多くが似たような体験を持っていると考えられているためか、それとも物語として映画になりやすいためかはわかりませんが、主人公たちに共通しているのは、人生で大切な何かを欠落している、または、世間では当たり前のこと、大切なことといわれているものに目を背けて生きてきたこと。

人は自分の見たいものだけを見ようと努力しますが、ある時期を迎えると、そんな自分にコミットできなくなっている自分に気づきます。当たり前の大切なことを素直に受け入れられるようになるには、思いのほか時間がかかるもの。でも、そんな時に “歳をとるのも悪くない” と思う。そこから一歩踏み出すためには、自分に対する自分の態度を変えることが必要ですが、それはまた別の話。

「家族ができたと思えばよかった」と、いままでの自分の態度を悔やむ「家族の肖像」の老教授のつぶやく場面、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のエンディング、主人公のリーと甥のパトリックが、拾ったボールでキャッチボールしながら、これからのことを話す後ろ姿、それらの映像を思い出しながら、そんなことを考えました。

そのほか上半期に観た映画。「マイルス・デイヴィス 空白の5年間」「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」「メットガラ ドレスをまとった美術館」「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」。

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お知らせです。
しずおかオンラインでは、「2019卒向け夏インターンシップ」を開催します。「womo」や「イエタテ」などの自社メディア、アプリ・WEBサイト・イベントなどの運営を通して、地域の生活者と一緒に地域の魅力づくりに取り組んでいる現場を体験していただけます。

詳しくは、こちらをご覧下さい ↓↓
【詳細】
https://job.rikunabi.com/2019/company/r673130090/internship/
【エントリーはこちら!】
https://job.rikunabi.com/2019/company/r673130090/preentry/U001/







観光論、観光研究、ツーリズム研究など、経済学、経営学、社会学、地理学視点からの観光学はこれまでもありましたが、最近の観光現場では不可欠になっている通信技術やAI、SNSなど、情報や情報技術の分野から観光を研究する観光情報学の分野は、まだ始まったばかりです。7月1日と2日の二日間、静岡県立大学(小鹿キャンパス)で「観光情報学会 第14回全国大会 in SHIZUOKA」(主催:観光情報学会/とうかい観光情報学研究会、共催:静岡県立大学、後援:静岡県)が開催され、公開シンポジウムに参加してきました。

大きなテーマは「ポスト・インバウンドに向けて 次世代の観光情報学を考える」。公立はこだて未来大学教授・副理事長・松原仁氏による基調講演「人工知能と観光情報学」と、パネルディスカッションでは「ビッグデータとAIが拓く観光情報学の未来」について議論されました。

「スマートフォン」「SNS」「VR」「PV(パブリックビューイング)、「ビッグデータ」などの登場で旅行現場がどう変わっている(今後変わる可能性がある)のか、に加えて、ナビタイムジャパンの経路検索エンジン・ナビゲーションサイトで可視化される旅行者の行動変化や、熱海活性化事業に参加しているJTB中部の取り組みなど、興味深い事例が紹介されました。

五感を操る「VR」技術が進むと、自宅にいながら海外旅行や温泉も楽しめるようになる。そうなった時の旅行の楽しみとは何か、などを考えることも楽しいものですが、いま直面しているのは「ビッグデータで集めた情報をどう使えば、人は旅行でしあわせになるのか」という問いのようでした。

「最小のリソースで、旅の楽しみ(満足度)を最大化する」ことが情報技術の役割。行き先・予算・日程・嗜好を踏まえたハズレのない情報を、旅行前、旅行中に適切なタイミングでさりげなく提供する仕組みは、私たちの想定よりも早く実現できそうです。それらが実現した時に、旅行の楽しみの一つである、旅先での思いがけない出会いや体験、楽しいハプニングを、どう組み込むのか。そんな場面でわたしたちはどんな反応を示すのか。そのあたりも観光情報学では検討されるのかもしれません。研究が始まったばかりの「観光情報学」研究の現場の熱さが伝わってくるシンポジウムでした。




基調講演で登壇した公立はこだて未来大学教授・副理事長・松原仁氏



海野 尚史 HISASHI UNNO

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