韓国南東部の大邱(テグ)駅で今朝、ソウル行き急行列車と韓国高速鉄道(KTX)列車の追突事故があった。この夏、韓国高速鉄道(KTX)に乗って釜山から大邱駅を通過してソウルへと出かけたばかりで、自然と新聞記事に目が向いてしまう。そして、その旅行中、九州新幹線で相席となったアメリカ人のルーディー(ルーディーのことはこちら)のひと言を思い出した。

新幹線って早いよな。アメリカには、こんな早い列車はないよ。 
 ところで、こんなに早いのに、なぜシートベルトがないんだ!?


たしかに、新幹線にはシートベルトがない。というか、そんなこと考えたこともなかった。
普通は飛行機に乗っちゃうからね。安いし…」と言っていたルーディーは
きっと新幹線と飛行機を比較していたんだと思う。

「新幹線は開業以来50年間、事故がないんだ。とても安全なんだ。
だから(なくても)大丈夫さ」(新潟県中越地震の際、上越新幹線での列車脱線事故を除けば)
などと、テキトーに答えてしまったが、
韓国高速鉄道(KTX)(こちらにもシートベルトはなかった)の事故のニュースを読んで、
事故が起きてから安全対策しても遅いよな、あの説明は適切ではなかったなあと反省した。

   朝8時前、釜山港に入港するフェリーから釜山市を眺める。

話は変わるが、釜山には下関19時発のフェリーに乗り、翌朝8時に下船した。フェリーでの
一泊は2等船室の6人部屋。二人の韓国人の若者とわたしの3人が相部屋となった。

一人は、今年4月から日本の大学に留学しているキム・テユ君、18歳。
初めての夏休み、初めての帰省で、実家のある大邱市に帰るところ。

「一人暮らしは楽しい?」と聞いてみると「料理、掃除、洗濯…、それだけで大変です」と
一人暮らし初心者らしい正統的な返事。実家に帰るのは楽しみ?という質問には
母さんのキムチを、早く食べたい」と、絵に描いたように素直な言葉が…、
オムニに聞かせてあげたい。

もう一人の韓国人は、林相秀(リン・サン・スー)さん、33歳。北九州観光の帰り。
「夏休みですか」と、あたりまえのことを聞いてみる。
そう、夏休みです。ずっと休み、わたし年中休み…」と苦笑い。

実は失業中なのだという。よくよく聞いてみると、本人は元映画製作会社のディレクター。
現在は会社を辞め、月曜から金曜日までは映画のシナリオを執筆し、
週末はアルバイトという生活なのだそうだ。

自分が書いているシナリオが採用される保証はどこにもないし、
 このままこんな生活していて大丈夫だろうか。
 今回の旅行も、お金のないぼくをお母さんとお姉さんが連れてきてくれたんです…

と、消え入りそうな声で話してくれた。

「韓国の映画界は、活気がありますよね。話題作も多い。チャンスも多いのでは」
とフォローにもならない言葉が口からでる。
ぼくは日本の映画が好きなんです。書きたいのは“Nobody Knows”みたいな作品
“Nobody Knows”って日本題は何だったかと、ぼくとキム君とで顔を見合わせ、
是枝裕和監督の『誰も知らない』だったと思い出す。

林さんが手にしていた本は、お姉さんから借りてきたという韓国で翻訳されたばかりの村上春樹の新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。林さんに、村上春樹と村上龍のどちらが好きかと聞かれ「若い頃は龍だったけど、いまは春樹かな」と応えると、「ぼくも同じ」と林さん。理由までは聞かなかった。
一方のキム君が読んでいたのは、漫画『金田一少年の事件簿』。
日本びいきの二人のおかげで、退屈することなくフェリーで一泊過ごすことができた。




先日渋谷で開催された「ブロガーサミット2013」に参加してきました。主催は、アジャイルメディア・ネットワーク株式会社。主催者の報告によれば、当日の事前参加希望者数は1100名超で、実際に来場したのは約7割。

同サミットに参加した方のレポートの中に「ブロガーはオワコンか」というコメントを発見しましたが、たしかに「ブロガー」という言葉は旬を過ぎた感じは否めません。一方で、レガシー・メディアの歴史を振り返れば、メディアは分裂を繰り返しながら成長するもの。会場に集まったブロガーさんを見ながら、「オワコン」の次期に突入したということは、メディアの一カテゴリーとしてブログが定着し、これから分裂次期に突入すると考えることが自然に感じました。

LINE(株)の執行役員でライブドア・ブログを担当してきた佐々木大輔氏の「2007年から2009年以降、ブログは終わったとずっと言われ続けてきたけど、ブログのユーザーやアクセスはその次期が一番伸びた。今もひたすら伸びている」という発言からも、ブログというメディアが今も成長していることが伺われます。ブログの役割や目的、とりあつかう情報の中身、見た目の姿はさまざま。ビジネス活用という視点では、コンテンツの質とコミュニケーションスキルの重要性について具体的に触れたAppBank(株)創業者・宮下泰明氏の話が興味深いものでした。

6時間半という長丁場のイベントの進行中、壇上と会場や会場の外とはTwitterのハッシュタグを利用したやりとりもありました。そういえば、Twitterも登場当初は「ミニブログ」「マイクロブログ」と呼ばれていたことが懐かしい。


「ブロガーサミット2013」のパネルディスカッションには、そうそうたる顔ぶれが登場しました。参考までに登壇者リストを紹介します。

・パネルディスカッション1:「ブログ~この10年~」
  清田 いちる氏  小鳥ピヨピヨ ギズモード・ジャパン初代編集長(現長老)
  岡田 有花氏  フリーライター/IT戦士
Otsune氏  Otsune ネットウォッチャー
  佐々木 大輔氏  アルカンタラの熱い夏 LINE株式会社、執行役員

・パネルディスカッション2:「個人ブログからブログメディアへ」
  新野 淳一氏 Publickey ITジャーナリスト/Publickeyブロガー
  村井 智建氏&宮下 泰明氏 AppBank APPBANK株式会社
  伊藤 春香氏  「はあちゅう主義。」 美容クーポンサイト「キレナビ」編集長
  堀 正岳氏  Lifehacking.jp ブロガー・研究者

・パネルディスカッション3:「ブログサービスの近未来」
 貝塚 健氏 ヤフー株式会社 企画本部 サービスマネージャー
 寺崎 宏氏 NTTレゾナント株式会社 メディア事業部 ソーシャルサービス部門 主査
 関 信浩氏 シックス・アパート株式会社 代表取締役CEO
 吉田 健吾氏 株式会社paperboy&co. 常務取締役/ 株式会社ブクログ 代表取締役社長

・パネルディスカッション4:「ビデオブロガーの今」
  ジェット☆ダイスケ氏 ガジェット☆ダイスケドットコム ビデオブロガー
  アリケイタ氏 ビロガー アリのチャンネル ビデオブロガー
  佐々木あさひ氏  YouTube sasakiasahi メイクアップパフォーマー
  タムカイ氏 ブログ「タムカイズム」企画運営 / 「ブロネク!」広報担当(自称)

・パネルディスカッション5:「ブログライフバランス」
  メレ山メレ子氏  メレンゲが腐るほど恋したい ブロガー/「メレンゲが腐るほど恋したい」運営
  岡田 康宏氏  サポティスタ サポティスタ主宰
  野間 恒毅氏 ワンダードライビング主宰/ワンダーツー(株)代表取締役
  津田 大介氏  津田大介公式サイト ジャーナリスト/メディア・アクティビスト
 
・パネルディスカッション6:「ブログを書くということ」     
 コグレ マサト氏  [N]ネタフル ブロガー/浦和レッズサポーター
 いしたにまさき氏 [mi]みたいもん! ブロガー/ライター/内閣IT広報アドバイザー
 松村 太郎氏  tarosite.net ジャーナリスト/キャスタリア株式会社 取締役 
 粟飯原 理咲氏 アイランド株式会社 代表取締役社長



(前回:アメリカ人・ルーディーの場合 その1

ソウルに向かう途中、九州新幹線「さくら」で隣り合わせたアメリカ人ルーディー。彼が日本滞在中にどのように観光情報を入手していたのか、が今回のテーマです。

美人の“おばさん”と二人で東京、京都、神戸、大阪を観光して、これから広島に向かうというルーディーに、2週間の日本滞在中の行動について、あれこれ質問してみました。何を食べたのか、現地情報をどのように調べたのか、日本のどこが楽しかったか…。顔の見えない訪日客100万人ではなく、顔の見える一人の声です。

わたしのつたない英語と、ルーディーの覚えたての日本語、それとロディア上での筆談。それらを駆使しつつ、今回われわれの意思疎通に最も活躍した武器は、ルーディーの持っていたスマートフォンでした。ちなみにスマートフォンはサムスンの「ギャラクシー」、画面の少し大きなタイプ。

わたしの口から飛び出す単語の羅列から、ルーディーはわたしの質問内容を想像力豊かに考え抜き、その回答をスマートフォンの翻訳アプリに英語で打ち込んでいく。おっきな背中を丸めながら、左右の太い人差し指を使って、なかなかのスピードで入力する。入力し終わると「GO」をタップし、現れた日本語を読み上げるか、読めない日本語はわたしにみせてくれる。脈絡のない答えが現れたときは、ふたりで「ウ~ン」と考え込みながら、すこしずつ文脈がつながるように「イエス」「ノー」を繰り返しながら会話を進めていいく。その繰り返しである。なかなか根気のいる作業でしたが、ルーディーとはそんな会話ともつかない会話を楽しむことができた。

「ところでルーディ、そのスマートフォンは、どこにつながっているんだ?」
と聞いてみる。
「これさ」といってバッグの中から取り出したのは、レンタルのポケットWi-Fi。
ポケットWi-Fiにはしっかりと「Rental」という文字がシールで貼られている。
スマートフォンとレンタルのポケットWi-Fiのセットで、日本滞在中は
いつもネットにアクセスしながら行動している。
出国前に借りたのか、日本で借りたのかを聞き忘れてしまったことが残念。
ガイドブックは持ち合わせていないか、持っていてもスーツケースに入れっぱなしらしい。

「京都、神戸、大阪…、行き先の観光情報はこいつ(スマートフォン)で調べて計画を立てるんだ」
というルーディーに、どんなサイトを見て観光情報を探しているのか聞いてみたところ
彼らが今回一番利用しているサイトとして
「ジャパン・ガイド・コム」(http://www.japan-guide.com/)を教えてくれた。

「でも、レストランと土産物店だけは、足で歩いて自分たちの目で選んでいるよ。
 僕らの感は、外れることも多いけどね(笑)。
 ジャパン・ガイド・コムにはレストランやショップは紹介されていないし」
といいながら、「でも、それも楽しいんだ」と話すルーディ。

これまで回ったところでは、どこがよかった?という質問には
ルーディーがもっていたデジカメの写真を見せてくれながら

「これはゴショね、それからキンカクジ、ギンカクジ…、
 キンカクジは全部ゴールドなのか」
そんなことはないよ、金箔という薄い金を貼っているんだと
教えてあげると「そりゃそうだよな」と安心した様子。 
それから突然デジカメの中に、ドラッグストアの店先に立つ象の“サトちゃん”や
コンビニの棚やら、日常風景の写真が。
「こ、こ、これは、“おばさん”が撮ったやつだよ」
と恥ずかしそうに言い訳するルーディー。

「それから神戸。海がきれいだった。テキサスには海がないからね。
 昨日の大阪も楽しかったよ。ミナミ、ツウテンカク、ヤタイがいっぱい…etc、
 それからナイトライフだね(笑)」

美人の“おばさん”と楽しむナイトライフってどんなものか、興味がひかれる。
さらに聞いてみたところ、
「スシ、タコヤキ、ヤキニク、オコノミヤキ…それからイザカヤ(笑)。
 ぼくはカイテンスシ、“おばさん”はオコノミヤキが気に入ったんだ。
 イザカヤは楽しいね」
彼らのナイトライフとはグルメ、しかも庶民的、B級的なグルメでした。

「神戸牛は食べなかったよ。(親指と人差し指を5㎝ほど開いて)
 こんな(ちっちゃい)サイズなのにベリー・エクスペンシブ!
 テキサスでは毎日、(日本語で)ニク、ニク、ニク、ニク…
 アンド、ぼくたち(日本語で)ビンボー」

日本で大変だったことは?
「熱い!」
というから、テキサスだって熱いだろと聞いてみた。

「確かに外は暑いよ。でもテキサスでは、人間は外を歩かないからね。
 人間は、車の中か、家の中か、ビルの中にいるんだ、
 そしてエアコンをガンガンかけてる」

九州新幹線「さくら」の中でスマートフォンを使っての会話。
そのスマートフォンで情報収集したり、翻訳機能を使ったりしながら
ルーディーと“おばさん”は、2週間の日本滞在を楽しんでいました。

旅行者向けのポケットWi-Fiのレンタルサービスの需要が
現在どの程度あるのかわかりませんが、
これから訪日する外国人旅行者にとって一番喜ばれるサービスは、
日本のどの町でもネットに簡単にアクセスできるWi-Fiスポットではないかと
実感した体験でした。


22日の朝日新聞によると、7月に観光や仕事などで日本を訪れた外国人は100万人を突破、過去最多だったそうです。8月ではあるが、今回ソウルに向かう道中、新大阪駅から乗った九州新幹線「さくら」で隣り合わせたアメリカ人ルーディーも、観光で日本にやってきた訪日外国人の一人である。

車両の前方から歩いてきた、ゆうに100キロは越す巨体、頭髪もあごひげも金髪の大男が、
ぼくの隣の席にどっかと座った。

「やぁ、どこからきたの?」
と、一応は聞いてはみたものの、答えは明らかである。
テキサス・レンジャーズのTシャツに、頭にはカウボーイでおなじみの
テンガロンハットだからね。

「アメリカだよ。アメリカのテキサスさ」
その格好を見れば誰だってわかるよ、まちがってもニューヨーカーとは思わないさ、
とはもちろん言わない。

「そうか。テキサスから来たんだ!一人で?」
と、聞いてみる。
一人旅でないことは、綺麗な金髪女性と一緒に乗り込んできたところを
見ていたから知っていたのだけど、二人はなぜか座席が前後に別れてしまったのだ。
「いや、ぼくの“おばさん”(驚くことに彼は“おばさん”と日本語で発音した)と二人だよ」
と、ひとつ後ろの席に座っている金髪女性を紹介してくれた。

“おばさん”にしては若いしすごく美人だね。本当はどうなんだ!
とつっこみたいところだったが、
面倒な会話は避けたかったのでひかえることにした。

ルーディの本名は、ロドルフ・ホセ・モラリス・ジュニア。
じいちゃんとばあちゃんはプエルトリコからの移民なのだそうだ。
さっき“おばさん”っていったけど、日本語を知ってるの、と聞いてみると
1年前から勉強している、という。

「じいちゃんとばあちゃんとは、小さな頃からスペイン語で話していたんだ。
 それに、スペイン語と日本語は発音がすごく近いんだ。
 あ〜・い〜・う〜・え〜・お〜、か〜・き〜・く〜・け〜・こ〜」
と、五十音訓を上手に諳んじてくれた。確かに外国人にしてはきれいな発音だった。

何をやっているのか、さらにと聞いてみたところ
こうみえて(100キロは越す巨体、頭髪もあごひげも金髪の大男は年齢よりも上に見える)
ルーディーは、ダラスの大学で観光学を学ぶ大学生だった。

将来は何をしたいのか、と聞いてみると
「ホテルマンさ。俺は旅行が大好きだから」と答える。
旅行が好きならホテルマンになっちゃダメだろ、旅行に行けないぜ。きっと…。
と思ったが、目をキラキラさせながら答えるルーディーを見ていると
日本の大学生と変わらない初々しさが感じられて、
ホテルマンになるのも悪くないと思えてくる。

「そう、ホテルマンになるんだ。
 できればサンフランシスコあたりのホテルがいいな」
そんな答えを聞きながら、ルーディーっていいやつだな、と思えてきた。

日本では、東京、京都、神戸、大阪を観光してきて、これから広島に向かう途中だという。

昼時でお腹がすいてきたし、ルーディーとの会話は長くなりそうだったので、
新大阪駅で買った鯖寿司を、無理矢理にルーディーとルーディーの若いおばさんにもお裾分けした。こうすれば、ぼくも堂々とお昼を食べることができるしね。
鯖寿司は口に合うかどうかわからなかったが、ふたりともおいしそうに食べてくれた。
おばさんなどは身を乗り出して、親指を立てて“グッ”とリアクションしてくれた。
アメリカ人の、こんなサービス精神はうれしい。

…今回は、彼ら訪日外国人たちが日本滞在中に、どのように現地で観光情報を収集しているのかを書きたかったのだが、前ふりが長くなってしまった。
ということで、本題はあらためて…


青山二郎を読んでから、ホンモノの朝鮮白磁を見たいと思っていた。
 (・いまなぜ青山二郎なのかとか青山二郎の話とか) 
骨董も焼物も門外漢であるから、ホンモノもニセモノもまったく見分けがつかないのだが、どうせ見るならホンモノから見ておきたい。では、朝鮮白磁のホンモノはどこにあるのか…。素人に思い浮かぶのはソウルの国立中央博物館だった。ということで、夏休みの数日を利用してソウルに行くことにした。

ソウルも韓国も初めてである。もちろんソウルには静岡空港から飛行機…というのが便利だが、以前からソウルは電車で行くのにちょうどいい距離だなぁ、車窓から韓国の地方の風景をのんびり眺めてみたいものだなぁ、一度は行かなくちゃ、と思っていたのだ。さっそく調べていたところ「日韓共同きっぷ」という、今回の目的にぴったりの切符の存在を教えていただいた。

「日韓共同きっぷ」はJR旅客各社と韓国鉄道公社で販売されている特別企画乗車券。wikiペディアによれば、1988年のソウルオリンピックの開催の際に、航空券の手配ができなくなった旅行者にむけて販売が開始されたのだそうだ。いまだに販売されていることに驚いたが、それは利用者が多いからかと思いきや、2009年の日本国内の利用者は1572人だったとか…。

まぁ、なにはともあれ「日韓共同きっぷ」を手に入れて電車でソウルに出発したのだ。




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日曜日、六本木アカデミーヒルズにでかけて、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長の話を聞いてきました。樋渡啓祐市長は、武雄市図書館の運営をTSUTAYAを運営するCCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)に任せたその人。「TSUTAYAと図書館」にも書きましたが、図書館運営のコスト削減と市民サービス向上の両立を実現するために、民間に、しかもTSUTAYAに委託したという新聞記事を読んだときから、直接ご本人の言葉で、どんな判断のもとで決定したのか(決定できたのか)聞いてみたいと思っていました。

樋渡啓祐市長によると、ある時テレビで代官山蔦屋書店(『世界で最も美しい書店』(エクスナレッジ)に日本で唯一選ばれた書店ですね)を紹介する番組で見ていた時に「自分の理想とする図書館はこれだ!」と直感した。こんな図書館があれば、ほかの誰でもなく自分自身が行ってみたいと思ったのだそうだ。そして、CCCの増田社長に直談判し、トップダウンで決める。そんな経緯を率直な言葉で語ってくれました。しかも、公募でなく随意契約。随意契約にしたのは、TSUTAYA以外には実現できない、という市長自身の判断によるもの。当然、周囲からは様々な声が…あった(いまもある)そうです。

仕事をすれば、ぶつかるもの。何にぶつかるか?…既得権益です

どこともぶつからない仕事は、仕事ではない。少なくとも、変化が求められる仕事としては、いかがなものか、と。わたし自身は、武雄市図書館以外に樋渡啓祐市長の取り組みはほとんど知りませんでしたが、図書館以外にも、赤字だった市立病院を民間に売却し黒字化させるなど、さまざまな改革を実現しているようです。その結果、武雄市は税収が増え、人口も増加。住みたい街として周辺市町の市民からも人気が高まりつつある。次は、幼稚園や保育園などの改革にも取り組んで、出産・育児から、教育、老後も安心して暮らせる街づくりを考えているようです。実現にあたって何が必要かは、市民目線と自分自身がいいと思えるか、の二軸で考えるとも。

武雄市図書館には、武雄市初となるスターバックスもテナントとして誘致。図書館内のお店の売上は、全国に約1,000店あるスターバックスの店舗中、平均して6位から8位の売上実績を推移しているそうです。誘致は、熱意だけではなく実績を作ることが大切。「地方だから…」という言い訳はもうきかない、という言葉も印象的でした。

武雄市図書館は年中無休。蔵書は10万冊から20万冊に増え、本の貸し出し以外に、本の販売やレンタルDVDのサービスも利用できる。樋渡啓祐市長にはこれらのサービスに加えて、古書の販売・買取サービスや、年配者向けには自分史の書き方講座の開催、自費出版本の制作・販売サービスなども実現して欲しいものである。どんなカタチであれ、本と親しむ場面が増えることは利用者にとっていいことだと思う。選択肢の限られる、というかこのままでは本との接点が先細ることが目に見えている地方においてはなおさら…。



2012年7月に楽天が電子書籍端末「コボ」を発売して1年。10月にアマゾン「キンドルストア」がオープンし、3月にはアップルも電子書籍販売をスタートしている。電子書籍が日本でも本格的に離陸して1年が経過したということで、この夏は電子書籍に関する記事を目にする機会が増えた。スマートフォンやタブレット端末の普及も電子書籍の期待を高めている。

個人的には、先週から腰痛に苦しめられたおかげで、AmazonのKindleペーパーホワイトを利用するきっかけができた。ベッドに横になって読むことしかできない腰痛持ちにとって、片手で持てるうえに、ページめくりまで指1本でできる電子書籍端末は、なかなか使い勝手がよい。もうひとつの発見は、部屋の明かりを消していてもライト内蔵のおかげではっきりと読めること。暗い中で本を読むことは、心理的に若干抵抗があるものの、e-inkの文字も見やすく機能的にはなんら問題ない。


写真は、Kindleストアからダウンロードした夏目漱石の「私の個人主義」。青空文庫版で0円というのもうれしい。最近の記事では、電子書籍ストアについては、町の書店に比べて品揃えが物足りない、という声が多いらしい。たしかにKindleストアの棚もランキング中心で、棚を眺める楽しさは、いまのところまったく感じられないが、青空文庫の本を簡単にダウンロードできて読めるというだけでもありがたい。来週は数日でかける予定があるが、今回はKindleペーパーホワイト1つもって出かけてみようと思う。

追伸
Kindleストアの青空文庫をいろいろと探しまわり、夏目漱石や北大路魯山人、寺田寅彦、幸田露伴など十数冊の本をダウンロードさせていただいた。一仕事終えて夕刊を開いてみると「青空文庫の世話人 富田倫生さん死去」(8月17日朝日新聞夕刊)という記事が目に飛び込んできた。ご本人のことはほとんど知りませんが、富田さんも世の中を変えた一人だと思います。ご冥福をお祈りします。



先週、腰痛をおして富士山に登ってきた後、週末に「womo」ラックの前で魔女に一撃をくらい、さらに今週は足の付け根から太もも前面まで激しく痛みはじめ、普通に歩くことはおろか、まっすぐ立つことすらできなくなってしまいました。仕方なしに、横になって(いても痛む)本を読むことしかできない。

ということで、仕事関係以外で今週読んだ本をざっと…。『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(中島らも、PHP出版)、『雨天炎天ーギリシャ・トルコ辺境紀行』(村上春樹、新潮社)、『国のない男』(カート・ヴィネガット、NHK出版)、『人間臨終図鑑3』(山田風太郎、徳間文庫)、『藤森照信の原・現代住宅再見』(藤森照信、TOTO出版)。

『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』のあとがきで中島らもは、この本は九牛の一毛にも足りない本かもしれないけど、もし何か意味があるとすれば、いまでは(1989年当時)もう嗅ぐことのできない60–70年代のフレイバーがあるかもしれない。それはいつの日か再びタナトス(死の神)に見込まれた自分に、生への欲求を与えてくれる「魔法のフレイバー」かもしれない、と書いている。中島作品は、ひとつひとつのエピソードも楽しませてくれるが、作品全体から、ぼく自身も、たしかに生への欲求を増幅すフレイバーを毎回感じる。今回はこのフレイバーが、強烈な腰の痛みさえも忘れさせてくれる効果もあることを発見。

村上春樹の『雨天炎天』では、個人的にいつかゆっくりでかけてみたいと思っているギリシャとトルコの旅を、寝転びながら体験。紀行文やエッセイでのユーモアを交えた村上春樹の軽い文体が不思議とリアリティを感じられていい。腰にも負担が軽い。それに、ギリシャもトルコも奥が深い。

『国のない男』は、アメリカを代表する?作家カート・ヴィネガットの遺作。本書の中で「唯一わたしがやりたかったことは、人々に笑いという救いを与えることだけだ。ユーモアには人の心を楽にする力がある。アスピリンのようなものだ…」とある。まったく同感である…が、アメリカ人のユーモアは、正直なところぼくにはよくわからない。そこが問題。

山田風太郎の『人間臨終図鑑』は、文句なしに面白い。15歳で死んだ八百屋お七から、121歳の泉重千代まで、古今東西923人の著名人の「最後の時」ばかりを集めた本。「自分と同じ年齢であの人は死んだのか」と読み始めたが、いつの間にか一人ひとりの「死に際」に引き込まれてしまう。ぼくの年齢で亡くなった人は、源頼朝、武田信玄、シェイクスピア、ナポレオン、阪東妻三郎。それから向田邦子がいる。

『藤森照信の原・現代住宅再見』は、建築家・建築史家の藤森照信教授が昭和以降のモダニズム住宅を紹介する藤森流建築・鑑定本。氏の独自の視点を、写真と平面図を見ながら追っていく作業は飽きない。

魔女の一撃のおかげで、久しぶりに楽しい読書ができた一週間でした。



魔女の一撃

日曜日の夕方、御幸町図書館からの帰り道。ペガサート1階にある『womo』ラックが空になっていたので補充しようと、一番下の平積みの『womo』をひとつかみした瞬間、腰に強烈な電気が走った!魔・魔・魔女の一撃である!急性腰痛症、通称ギックリ腰。

呼び方は何にしろ、経験者にしかわからないこの痛み。なってしまったからには、潔くギブアップするしかないことも、ご存知の通り。そして、痛みがすこしでも軽く感じられるなら、どんな格好だってしてしまうことも。人通りのある『womo』ラックの前で片膝をつき、反省猿二郎君のようにうずくまることだってへっちゃら(通行に迷惑をかけてすみませんでした)。はずかしげもなくそんなポーズを決められるほど、魔女の一撃は強烈ですよね。

二郎君の姿勢がいかに落ち着くとはいえ、15分もやっているとさすがに飽きてくる。
それに、いつまでもペガサートの入口で反省しているわけにもいかない。たまたま通りがかった静鉄バスの運転手さんに、「す、す、す・み・ま・せ・ん、ギックリ腰になってしまって…」と声をかける。「セノバ横の静鉄タクシー乗り場に行きたいところですが、いまのぼくにはあまりに遠く感じられて…、バスでなくてすみません」。そこまで言うと、すべてを察してくれた運転手さんが、「よくわかりますよ、それは大変ですねぇ。ここでタクシーを拾いましょう」とわたしのバッグを持ってタクシーを拾ってくれた。ありがとうございました。

タクシーの運転手さんにも事情を話すと「よくわかりますよ、運転手にとって腰痛は職業病みたいなものですから。腰に負担がかからないようにゆっくり走ります」と、やさしい言葉をかけていただいた。こんな時のやさしいひとことは、とてもうれしい。途中でコンビニに寄り道して運転手さんに買い物をしていただいたり、玄関まで荷物を運んでいただいたり…とても親切にしていただいた。タクシーから降りる際にも「温湿布がいいですよ。今日はお風呂でゆっくり温まって2~3日は安静にしてることです。お大事に」という言葉とともに「そうそう、ルルカカードはお持ちですか。ポイントおつけしますよ」と。やさしいだけでなく、仕事も忘れないところにも感心してしまいました。ちょっと尾美としのりさん似の運転手さん、本当にありがとうございました。

実は今回のギックリ腰には予兆があった。ここ数年、夏休みに入る頃になると、きまって腰痛に悩まされてきた。この夏も腰痛が始まり、悩んだ末、市内出身のシャーマン三輪さんに病院を紹介していただいたばかり。いまのようなネット時代でも、市内の病院のなかから「ここだ」という病院を見つけることができないことが不思議でならない。



夏休み。図書館の帰り道、例の頬杖をつきながら首を傾げている夏目漱石を見るたび、何を考えているのだろう、どんな時に撮影した写真なんだろうと考えてしまいます。6月に東京芸術大学美術館で見てきた「夏目漱石の美術世界」展が、8月25日(日)まで静岡県立美術館で開催されています。そのときのことは、こちらで「『漱石山房』夏目漱石の家」。

ターナーやミレイに代表されるイギリス絵画や、若冲や応挙などの江戸絵画などを、漱石の目を通して再発見できるのが「夏目漱石の美術世界」展のおもしろさですが、それよりも気になるのは、それらの絵画を想像しながら作品を書いた漱石の頭の中。あの漱石も、過去や同時代、国内外のいろいろな作品から影響を受けていたんだなぁ、という当たり前のことがリアルに感じられました。
橋口五葉の描いた『吾輩は猫である』の装丁は、いいですよ。


・「夏目漱石の美術世界」展 静岡県立美術館
 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/japanese/exhibition/kikaku/2013/02.php

 
「夏目漱石の美術世界」展記念
・映画『それから』ミニレクチャー付き上映会
 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/japanese/information/2013/soseki_01.php




しずおか“おまち”で 夏まつり2013」が、今日から始まりました。
開催期間は、8月10(土)〜18(日)。期間中は、富士山クイズラリーや夕涼みコンサート、夜店市や富士山関連イベントなどが開催されます。「しずおか“おまち”で 夏まつり2013」を盛り上げるのは、静岡の"おまち"を愛する人々で組織する「I Loveしずおか協議会」。

しずおかオンラインも夏の“おまち”を一緒に盛り上げたいと考え、
「富士山クイズラリー」にスマホで参加できる「お店回遊アプリ“まちぽ」(アンドロイド版)をリリースしました。なんと、スマホから応募すると当選確率がなんと2倍!!

  ・お店回遊アプリ“まちぽ”
   https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.esz.machipo



「富士山クイズラリー」には、スマートフォンアプリ「まちぽ」(無料/Androidのみ)または、クイズラリー用紙(無料)で参加できます。詳しくは、コチラから! 
        ↓ ↓
   http://womo.jp/campaign/event1308/w/0



富士山頂で御来光を待つ登山者たち。

静岡県によると7月の静岡側の富士山登山者は6万5360人、前年同月と比べて約4割増えたそうです。入山料(1000円)の支払期間中も登山者数は減少することもなく、周辺の観光施設、宿泊施設ともに利用客は大幅に増加。登山口毎の登山者数は、富士宮口3万3477人、須走口約2万人、御殿場口約1万1000人。構成資産の富士山本宮浅間大社は観光客が約2割増、静岡市と伊豆市を結ぶ駿河湾フェリーの乗客は約5割増加。登山者や観光客数の推移から、世界遺産効果は予想以上に大きいことがわかります。

そういうわたしも今週、富士山に登ってきました。富士登山は30年振りだったのですが、これも間違いなく世界遺産登録効果。話題の入山料も払って今年限りといわれている富士山バッチをもらうつもりでいたのですが、こちらは実現できず。というのも、支払う場所にまったく気づかなかったのだ。


今回の富士登山で利用した九号五勺の胸突山荘。山小屋のスタッフの方に聞いたところでは、宿泊者は昨年よりも少ないそうだ。登山者は4割も増えたのに、山小屋の利用者が減っているというのはどういうことなのか。この日の山小屋の宿泊者も定員の1/3程度でした。

下の写真は、これまで1400回以上も富士山に登っている、ミスター富士山こと實川欣伸さん。實川欣伸さんには、今回の登山中に3回も遭遇した。初日、登り始めの午前11時過ぎに1回目下山中の實川さんと出会い、午後、この日2回目を登る實川さんに追い抜かれ、二日目の朝7時すぎには1回目を登る實川さんとまたまたすれ違う。實川欣伸さんは、月のうち20日は富士山に1日2回登り、1ヶ月で40回、それを5ヶ月続けて年間200回登頂の5年連続達成をめざしている。その實川さんには7月にインタビューして、富士山のいろいろな魅力を語っていただいた。その内容は8月の「インタビューノート」にアップしますので、関心のある方はお楽しみに。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・インタビューノート「ミスター富士山:實川欣伸さん」第1回


 

『ジモトリップ富士山』(発行:しずおかオンライン)
富士山麓で地元旅!





海野 尚史 HISASHI UNNO

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