日曜日、六本木アカデミーヒルズにでかけて、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長の話を聞いてきました。樋渡啓祐市長は、武雄市図書館の運営をTSUTAYAを運営するCCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)に任せたその人。「TSUTAYAと図書館」にも書きましたが、図書館運営のコスト削減と市民サービス向上の両立を実現するために、民間に、しかもTSUTAYAに委託したという新聞記事を読んだときから、直接ご本人の言葉で、どんな判断のもとで決定したのか(決定できたのか)聞いてみたいと思っていました。

樋渡啓祐市長によると、ある時テレビで代官山蔦屋書店(『世界で最も美しい書店』(エクスナレッジ)に日本で唯一選ばれた書店ですね)を紹介する番組で見ていた時に「自分の理想とする図書館はこれだ!」と直感した。こんな図書館があれば、ほかの誰でもなく自分自身が行ってみたいと思ったのだそうだ。そして、CCCの増田社長に直談判し、トップダウンで決める。そんな経緯を率直な言葉で語ってくれました。しかも、公募でなく随意契約。随意契約にしたのは、TSUTAYA以外には実現できない、という市長自身の判断によるもの。当然、周囲からは様々な声が…あった(いまもある)そうです。

仕事をすれば、ぶつかるもの。何にぶつかるか?…既得権益です

どこともぶつからない仕事は、仕事ではない。少なくとも、変化が求められる仕事としては、いかがなものか、と。わたし自身は、武雄市図書館以外に樋渡啓祐市長の取り組みはほとんど知りませんでしたが、図書館以外にも、赤字だった市立病院を民間に売却し黒字化させるなど、さまざまな改革を実現しているようです。その結果、武雄市は税収が増え、人口も増加。住みたい街として周辺市町の市民からも人気が高まりつつある。次は、幼稚園や保育園などの改革にも取り組んで、出産・育児から、教育、老後も安心して暮らせる街づくりを考えているようです。実現にあたって何が必要かは、市民目線と自分自身がいいと思えるか、の二軸で考えるとも。

武雄市図書館には、武雄市初となるスターバックスもテナントとして誘致。図書館内のお店の売上は、全国に約1,000店あるスターバックスの店舗中、平均して6位から8位の売上実績を推移しているそうです。誘致は、熱意だけではなく実績を作ることが大切。「地方だから…」という言い訳はもうきかない、という言葉も印象的でした。

武雄市図書館は年中無休。蔵書は10万冊から20万冊に増え、本の貸し出し以外に、本の販売やレンタルDVDのサービスも利用できる。樋渡啓祐市長にはこれらのサービスに加えて、古書の販売・買取サービスや、年配者向けには自分史の書き方講座の開催、自費出版本の制作・販売サービスなども実現して欲しいものである。どんなカタチであれ、本と親しむ場面が増えることは利用者にとっていいことだと思う。選択肢の限られる、というかこのままでは本との接点が先細ることが目に見えている地方においてはなおさら…。

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