1978年にアラスカに移り住み、約20年にわたり極北での撮影を重ねた写真家・星野道夫(1952-1996)の「没後20年 特別展 星野道夫の旅」展が、7月14日から「IZU PHOTO MUSEUM」で始まりました。会場入り口には、クレッパーという名の青いドイツ製のフォールディング・カヤックと、アラスカの秋のツンドラに佇む一頭のカリブーが。この小さなカヤックで南東アラスカの海や入り江を旅しながら、ザトウクジラやムース、カリブー、古いインディアンの村などを撮影した星野道夫の軌跡を追体験できる、新鮮な内容でした。

初日のトークイベント「極北から託されたもの~星野道夫の写真と言葉に現れるその世界」では、星野道夫を最も近くから見ていた奥様の星野直子氏と担当編集者で小説家の松家仁之氏が登壇。カリブーやホッキョクグマなどの被写体との距離の取り方(望遠レンズだけに頼らず、被写体の野生動物と互いの存在を認識しながら、許容されるもっとも近くまで時間をかけて間合いを詰めていく)や、アラスカでの撮影の様子、読者との手紙による交流など、ふたりが語るエピソードーつひとつが、“星野道夫らしい”と思わせるものでした。

「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。」『森と氷河と鯨』(世界文化社)

「私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終わりのない日々の選択である…。近代社会の中では見えにくいその約束を、最もストレートに受け止めなければならないのが狩猟民である。約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。そして、その悲しみの中から生まれたものが古代からの神話なのだろう。」『旅をする木』(文春文庫)


極北の自然や文明を写真を通じて伝えるだけでなく、自然と文明の関係や現代を生きるとは何か、についても心に響く言葉を残した星野道夫の仕事について、改めて考えさせられました。ブローニーのフィルムで展示されていた、氷上でグダッとくつろいでいるホッキョクグマに魅せられました。

「星野道夫の旅」~約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。




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「星野道夫の旅」~約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。




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