アメリカの写真家ソール・ライターの回顧展を見に、Bunkamura ザ・ミュージアムに出かけてきました。週末に、渋谷の街を歩くのは久しぶり。静岡にもどって今の会社を創業する前の数年間、道玄坂上にあった編集プロダクションに勤めていた時期があります。喧騒と雑踏にまぎれながら歩いていると、毎日この街を歩いていた頃の渋谷を思い出します。

当時も渋谷の街は賑わっていましたが、変わったと感じるのは外国人観光客の数。今ではスクランブル交差点を見下ろすビルにスターバックスがあり、窓際の特等席は、交差点を行き交う群衆を興味深げにスマートフォンで撮影する観光客でいつも賑わっています。信号待ちが憂鬱になるこの場所が、これほどの人気観光スポットになるとは、当時だれが想像できたでしょう。私たちの日常の中には、未だ発見されていない可能性がまだまだ転がっているものですね。

ソール・ライターの回顧展は素晴らしいものでした。モノクロ作品もカラー作品もどちらも期待を裏切らないものばかり。個人的には、雪が降っている日の作品に魅かれました。

ソール・ライターの作品は、どこか特別な場所で撮影されたものではなく、日常の中に現れる美しい、しかし多くの人が見過ごしている瞬間が切り取られています。会場で流されていた映像の中で「写真は発見、絵画は創造」とインタビューに答えていましたが、その意味がよくわかります。それから、「いちばん良いものが、いつも見えているとは限らない」という言葉も印象に残りました。

ソール・ライター 《足跡: Footprints 》 1950年頃 ©ソール・ライター財団
いちばん良いものが、いつも見えているとは限らない。

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