編集者はこんなにも面白い。アートディレクターの藤本やすしが手がけた『雑誌をデザインする人と現場とセンスの秘密』(ピエブックス)に触発されて、

編集者の菅付雅信が現役編集者の姿を写真とインタビューでまとめた本が『東京の編集 The edit of Tokyo』(著:菅付雅信、発行:ピエブックス)。

副題は「編集者はこんなにも面白い。」となっています。……▼グラフィック・デザイナーやアート・ディレクターに関する本は多々ありますが、編集者の本となると案外と少ない。

すでに引退した伝説の編集者たちについての本はあっても、現役で活躍している編集者の本となると…。

『東京の編集 The edit of Tokyo』では、報道系や文芸専門の編集者、すでに引退した編集者などは除いて、カルチャー&ライフスタイルの雑誌を手がけてきた現役編集者11名を取材しています。
 
女性編集者では、『オリーブ』独自の世界観を創り上げた編集長であり、ファッションや化粧、健康、食、セックス、占いなど特集を7〜8パターンで繰り返しながら、そこに毎号プラスαの仕掛けをのせることで『アンアン』を「無敵の『アンアン』」に育てていった淀川美代子氏、

個性的な編集者としては『ブルータス』で「黄金のアフリカ」特集を手がけ、現在はトド・プレスの代表で『ソトコト』の初代編集長小黒一三氏など、それぞれ自分の編集感を率直に語っていてとても貴重なインタビューになっています。
はっきりいって、内容が濃く読み物としてもおもしろい。

『アンアン』での「セックスできれいになる」や「男性スターのヌード」、「GINZA』の「東京はパワフルだ」など、彼女が手がけた企画は時代を切り開く勢いと、企画に負けない強いタイトルが印象的な淀川美代子氏。

「自分は近くの波じゃなくて、遠くの波が見える人」
「エコは勉強するものじゃなくて、ファッションや音楽のように趣味の世界」
「『ソトコト』は褒められると思ってやってるんじゃなくて、商売になると思ってやってる」
そして、「自分は編集者というよりプロデューサー」という発言は
小黒氏の雑誌編集にたいするスタンスをよく表しています。

「黄金のアフリカ」特集のアフリカ取材の際に「会社の経費でアフリカで像を買ってきた編集者小黒」として、後に語りぐさになりましたが、そのあたりの裏話にもふれています。

「カラッポな自分が世界とコネクトして行くのに編集というやり方があるのをウォーホルから、編集のセンスは(ゴダール)映画のカットバックから学んだ」という後藤繁雄氏。

「絶対に“トレンド”って書かないで欲しい、わたしたちは“トレンド”以上のことをやりたいんだから」と語るのは田口淑子氏。

雑誌や本などの紙媒体の編集に限らず、ウェブサイトなどの編集や
企業PR誌に携わっている方にも参考になる一冊です。

これを読むと、編集者がいかに濃い〜人種の集まりか、
そして各人各様で独立独歩か、再確認できます。(笑)

登場する11人の編集者が考える「編集とは?」・・・

見城 徹「編集は恍惚」
淀川美代子「編集は時代との戦い」
後藤繁雄「編集はイノベイティブ」
小黒一三「編集は嘘をつくこと」
田口淑子「編集は俯瞰で見ること」
関川 誠「編集はパッケージ」
岡本 仁「編集は広めること」
秋山道男「編集は発明」
赤井茂樹「編集は他力」
森永博志「編集は感覚の拡大」
川勝正幸「編集は才能との出会い」
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