横組、横書き本が売れる時代に…書棚を整理しているとこんな雑誌が出てきた。1990年6月19日発行の「トーキョー・ウォーカージパング」。

その後「ぴあ」に代わって新しいタウン情報誌として部数を伸ばしていった、あの「東京ウォーカー」(角川書店/現在は角川クロスメディア)の創刊13号である。 

タイトルに“トーキョー”だけでなくあえて“ジパング”と入れた真意は知らないが、バブルの絶頂期の創刊だけに
編集部には「われわれは、世界に誇る“トーキョー”という都市のナビゲーターを目指すんだ」という意識もはたらいていたのかな。

現在と大きく違うのはタイトルだけでなく……▼誌面は、すべて横書き、左開き、なんですね。
創刊当時の「トーキョー・ウォーカー」は部数がそれほど伸びず、ほどなくして、紙面構成だけでなく、レイアウトを横組から縦組に、ページを左開きから右開きに変え、部数も伸ばして行く。

横組、横書き本が売れる時代に…
↑巻頭特集は、2度目の来日を果たしたボビー・ブラウンの横浜公演。「ブラックの本場はヨコハマ」が成立していた懐かしい時代、ボビーのはいているパンツのカタチもスゴイ!…

「東京ウォーカー」でさえも「横組は売れない」という出版界のジンクス?通りの展開であったわけですが、ここにきてそんなジンクスも過去のものとなろうとしているようです。

木曜日にケーター小説を手がけている出版プロデューサの伊東寿朗氏の話を聞く機会があったのですが、ヒットを飛ばしているケータイ小説の定義のひとつに“出版された場合、横書きが鉄則”と話していた。

その前日の日経MJでは、「縦書きはダサイ!?太宰・漱石横書きで読む」という見出しで、ケータイ世代だけでなく、パソコンが浸透するにつれて上の世代でも横書き本が浸透し始めている、と最近の出版界の流行として紹介していた。

「縦書きでは読めないけれど横書きなら読める、という反響が驚くほどあった」というゴマブックスの横書き文芸書の編集者のコメントからは、「横組は売れない」という出版界のジンクスの終焉を感じさせるに充分な勢いが伝わってきました。

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