先月取材を受けた大学生が作る情報誌『静岡時代Vol.20』編集長の柴さんが、会社に見本誌を届けてくれました。『静岡時代』は、静岡県内の大学生のスタッフが自主発行している、静岡の街と大学生をつなぐ情報誌。eしずおかブログのニュース枠でも彼らの記事を読むことができます。

毎回編集会議に持ち寄った特集企画案の中から、採用されたスタッフが自ら編集長になって、自分の興味あるテーマについて取材、記事にしているそうです。…で今回、柴編集長がとりあげた特集テーマは、働くということ。キャッチコピーは、「仕事なんかしたくない」。柴さんの気持ちをストレートに表現している(笑)この特集でのインタビューを、柴さんの了解をいただいて全文掲載(一部加筆修正)させていただきました。

柴さんからのオファーは「今一生懸命働いている社長さんの若かった頃のホンネを聞きたい」というもの。実はわたしも、就職なんてしたくなかった学生の一人ですよ…というお話がこちら ↓ です。

インタビューを文字に起こしていただくと、自分の話していることがいかに論旨が曖昧か、突きつけられている気がしますね(汗)。

[以下、『静岡時代Vol.20』インタビュー転載(記事は柴亜理子さん)]・・・・・

「仕事なんかしたくない」
仕事に対する不安がどうしても拭えない。
この不安、どうしたら解消できるのだろう。
この街で働く社長さんに相談してみよう。
今は社長さんでも、この頃は不安だったのかな。


海野:柴さんのホンネは「できれば仕事なんてしたくない」ということですね。もし、一生仕事をしなくてもかまわないよ…といわれたら、柴さんは何をして過ごせると幸せですか?

柴 :仕事にはどうしても営利な問題が出てきてしまって、会社としての利益や効率を優先させなければいけないというところに、すごく矛盾を感じているので。そういうの関係なしに、ほんとに相手に尽くせるような、例えばボランティアとかをしていけるのだったら、そうしていきたいです。でもやはりそれだけでは生活もできないですし、仕事もしていかないといけのかなぁって。

海野:収益を上げることをどう捉えるか、そのあたりに柴さんが気にする何かがありそうですね?利益を上げる、儲ける…ことは罪悪感をともなう行為なのか。儲けるって何だろう?何が柴さんにそういう気持ち(後ろめたさ?)を起こさせるのだろう。

大学生の頃の僕もみなさんと同じように、就職活動はしたくなかった(実際に熱心ではなかった)。でも、世の中に早く出たい、という気持ちは強かった。「早く社会に出て、働きたい」と思っていました。

でもそれは、「世の中のためになりたい」とか、「人の役に立ちたい」っていう立派な気持ちからではありません。単に「自分の人生なんだから楽しみたい。自分が面白いと思えることができれば、それでいい」くらいの気持ち。

大学時代、友達と遊んだり、サークルやったりするのは、それはそれで楽しかったけど、その時の楽しさに、いつも何か満たされないものを感じていました。

実体がないのに盛り上がってるだけの、はかなさみたいな。心の中で、本当の楽しさって、もっと本気にならないと得られないんじゃないかって、いつも思ってたんですよね。それを一番実現しやすいのは、世の中に出て、自分が関わった何かの仕事に対して、その対価がお金なのか、「頑張ったね」って言葉なのかわからないけど、認めてもらうこと。
    
血縁関係とか友達とか、そういった人間関係の中ではなくて、全く1人で、全然縁のない世界に飛び込んでいって、自分が何かをやる。それに対して、何らかの評価をされる。そこに、今まで経験したことのない面白さがあるんじゃないのかなって。漠然と、そんな気がしていました。
    
会社の規模だとか、ネームバリューには全く興味がなくて、自分が飛び込む世界として、自分のやりたい世界が、そこにありそうかどうか。そんな“匂い”を感じられる場所かどうかが、僕が仕事を選ぶ際の判断基準でした。

そういう意味では、就職は、何かを達成するためのプロセスでしかなくて、目的でもないし、ましてやゴールでもないと思うんです。

柴:正直、海野さんは今、自分のやりたいことを達成できていますか?

海野:一部は達成できてるかな、と思います。でも、今になってわかるのですが、自分がやりたいことって、案外本人はわからなかったりするんですよ(笑)。自分がやりたいと思っていることと、本当にやりたいことは、必ずしも一致しない。それは経験上あります。

「そう思いたい」から、自分で自分自身に無意識のうちに思いこませてることって、あるような気がするね。それに、よく会社のスタッフとも話をするんだけど、「やっぱり好きなことをやりたい」っていうスタッフに、「じゃあ好きなことを、やりなよ。応援するよ…で、何が好きなの、やりたいの?」って正面から聞くと、意外と答えられなかったりする。自分が好きだって思ってることが、本当に好きなことかもわかんなかったり。それは僕自信も経験がありますし、同じような人はいると思う。

その一方で、生活を楽しんでいるように見える人は、いろいろチャレンジしていますよね。今日のこの瞬間、自分がそれを好きか嫌いか…も大事かもしれないけど、それよりも、半年後1年後の自分が、それを好きになっていたいかどうか、を判断基準にして、今日何をするかの選択をしているような人のほうが輝いて見える。

今はその魅力はわからないけど、1年やり続けてみたら、すごく好きになってるかもしれない、ってことが世の中にはあると思う。食べ物とかでもあるじゃない。小さい頃にずっと苦手で嫌いだと思ってた物でも、食べ続けているとある瞬間に「あ、こんなに美味しかったんだ」って思うこと(笑)。

柴:仕事はしなきゃいけないって気持ちはありますし、仕事は楽しそうだなって気持ちも、もちろんあるんですよ。でも、何か縛られてしまうっていう気持ちと、自分が働いて、それからどうなっていくかが鮮明には浮かんでこなくて想像が出来ないというか、その見えない感じが凄く怖いです。

海野:不安があるってことですね。

柴:そうですね。

海野:でも、それはみんなあるんじゃないですか。社会人も同じ。就職してからも、この会社で、この仕事で、これからもずっとやっていけるだろうか、とか、別の部署への異動や転勤の辞令が出たらどうしよう…とか、女性であれば、結婚してからもこの職場でいままでのように働き続けられるだろうか…とか。社会人になっても不安はあるよね。というか、不安は一生つきまとうものと考えて、上手に付き合っていく方法をみつけるしかない。

会社や仕事が、自分に合いそうかどうか悩んでいても不安はなくならない。とりあえず食べてみる。早く食べてみれば、早くその味がわかる。不安を感じる期間が短くてすむじゃない?…で、実際に経験してみて、自分には合わないって思った時は、しばらく寝かせておく。すると、忘れた頃にもう1回、チャレンジしてみたくなることもある。きっとね。

僕は、仕事は心から楽しいものだと思っています。働くことがおもしろいかどうかは、仕事の内容だけじゃなくて、結果として、誰と出会えたかとか、何ができたかとか、何が満たされたか、そして、誰かが喜んでくれたか、ってことが重要であって、そこで自分なりの手応えを感じられれば、楽しいもの。人は、自分が考えている以上に、案外何でもやれる力を持っていると思います。

それに、働くことは遊びよりも、全然多くのものが自分に返ってくる。お金だけじゃなくてね。それ以上のものが得られるのが仕事だと思います。

柴:不安なのは私達がまだ学生だからってことじゃなくて、社会人になっても不安なものは不安なままなんですね。海野さんは、働いていて何か、身になったものが返ってきたなってことはありますか?

海野:まぁ、いろいろありますが、一番大きな報酬は「誰かが自分を必要としてくれている」っていう感覚かな。例えば、結果として収入が上がるとか、役職が上がるとか、権限が上がる。または自分の企画が通る、採用される、そういうことも大事だとは思いますが、それはやっぱり部分であって、それ以上に、自分の仕事を通じて、誰かが感謝してくれたり評価してくれること、他者に自分自身が承認されることが、自分に返ってくる一番大きなものだと思います。それがないと、誰も厳しい仕事をずっとやり続けられない。

先日も編集のスタッフと話をして、彼女がこういうこと言ってたんですよね。「私は、家族よりも友達よりも、仕事の中で、自分が評価される時が一番嬉しい。それができてるから頑張れるんです」30代の女性なんだけどね。働き続ける中で、そういう感覚を、みんな実感として気づいていくのではないでしょうか。

世の中は、自分でやってみないとわからないってことが圧倒的に多いと思います。自分の知らないことだらけ。自分の知ってること、または自分が知ってるつもりのことの方がほんの一部。自分が知ってるつもりだったことも、実はもっと多面的であったり。

先程は「自分が面白いと思えることをやりたい」と話しましたが、実は自分のやりたいことってなかなか見つかるものじゃない。自分がやりたいものがカタチとしてすでにある、というよりは、自分の目の前にあることの中に、やりたいものを探していく、気付いていくって言うのかなぁ。既にそれは目の前に存在しているのに、ただ自分が気づいてないだけ、ってこともあるんじゃないでしょうか。

柴:私は今まで、怖いなって思うことは避けて生きてきてしまったので、やっぱり仕事をしたくないってのも、どっか逃れたいって気持ちがあったんです。でも、それはやっぱりやってみないと、わからないのかなって、お聞きして思って、そうなると、なんかやだなって思ってるより早くやりたいなって思った方が自分自身も、楽なのかなって思いました。

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